中国の改革開放40年の今年、経済は総崩れになった。市場経済化を否定し、計画経済化を大胆に推進した習近平氏の敗北である。「餅は餅屋」の言葉通り、経済運営の舵は経済専門家に任せるべきであった。従来の慣例では首相がその任である。習氏は、それを強引に取り上げて、自らの権限に組み込んでしまった。最早、言い逃れはできない。現在の中国経済の惨状は、すべて習近平氏の責任に帰すのだ。

 

今年6月、習氏の側近はとんでもない発言をして物議を醸した。「最早、民営企業の時代でない。国有企業の時代である以上、民営企業は縮小すべきだ」と放言したのだ。この傲慢さが、11月の工業利益を前年比1.8%の減益に追い込んだ。特に国有企業が振るわず、民営企業の増益でも補えなかった。

 

11月の利益は微減だが今後、マイナス減益幅は拡大していく見通しである。最終消費財の自動車やパソコン、スマホなどが売上不振であるからだ。過剰生産による商品市況の下落が工業利益の足を引っ張っている。市場経済機構を重視すれば、これほどの過剰生産に落込まなかったであろう。肝心のブレーキ(市場機構)が、縮小されていたので機能しなかったのだ。習氏は、今になって初めて市場機構の有難味を知ったはずだが、どうだろうか。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月27日付)は、「11月の中国工業利益、約3年ぶり減少、消費低迷・素材価格下落が重荷」と題する記事を掲載した。

 

(1)「2018年11月の工業企業の利益は前年同月比1.8%減った。前年水準を下回るのは15年12月以来、2年11カ月ぶり。鉄鋼や化学など素材価格が下落し、国有企業の利益が減った。個人消費低迷で自動車やパソコン・携帯電話も振るわなかった。一定規模以上の製造業、鉱業、エネルギー企業の利益を集計したものだ。利益の伸びは184月の21.9%を直近のピークに7カ月連続で縮小している」

 

工業利益は、今年4月がピークですでに7ヶ月連続の減益であったが、前年同期比ではプラスを維持してきた。それが、11月になって同マイナスに落込んだ。需要先の耐久消費財が今後とも不振見通しであり、工業利益のマイナス幅が広がる。中国の産業部門で「健在」であるのは、ほとんど消え「不況一色」になった。

 

自動車は、典型的は過剰生産業種である。

 

「コンサルティング会社PwCによると、中国の工場では年間4300万台の製造が可能だが、今年の生産台数は2900万台を割り込む見通しだ。海外メーカーも国内メーカーもプレッシャーにさらされているが、減速の打撃が最も大きいのはタイミングを誤って増産体制を築いた企業である」『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月26日付)

 

自動車産業の操業度は、わずか67%である。これでは、採算に乗るはずがない。世界一の自動車市場を襲う本格的な不況到来である。そこへ、自動車関税率を15%に下げたので、国内メーカーにとっては死活問題になっている。

 

(2)「11月は国有企業の利益が落ちこむ一方、民間企業は利益が回復した。業種別では石油・ガス採掘、鉄鋼、化学、石油精製など幅広い業種で利益の伸びが鈍った。原因は素材価格の下落だ。中国政府は16年1月から鉄鋼や石炭の生産設備の廃棄に乗りだした。供給を強制的に減らして素材価格を引き上げ、国有企業の利益を急回復させた。19年は生産設備の過剰に再び焦点があたる可能性がある。11月は自動車やパソコン・携帯電話も振るわず、いずれも1~11月の累計利益が前年同期の水準を下回った。販売低迷で在庫が積み上がっており、米国との貿易戦争で輸出も下押し圧力が強いようだ」

 

川上である素材市況の下落は、川下企業のユーザーには増益要因として寄与した。だが、トータルで見た工業利益は、マイナスになっている。そこで、工業利益のテコ入れとして、素材価格引上げを狙って過剰設備の廃棄に乗り出す可能性も残されている。ただ、これまでは、民営企業中心の設備廃棄であった。今後は、国有企業の過剰設備に切り込まなければならない。それが、首尾良くできるかどうか。相当の抵抗があるに違いない。国有企業の過剰設備廃棄となれば、失業者の増加で政府は苦しい対応を迫られよう。

 

メルマガ15号 「貿易戦争で疲弊する中国、改革派が追い詰める習近平」が『マネーボイス』で紹介されました。

まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

https://www.mag2.com/p/money/612755
ここをクリックしてください。