米国は、中国封じ込めに向けて怒濤のごとき勢いで新法を成立させた。怒りを見せた時の米国の動きは素早い。中国が、米国覇権へ挑戦すると広言したときから、米議会は超党派で協力して、「アジア再保証推進法」を成立させ、12月31日にトランプ大統領の署名を得て発効した。

 

「アジア再保証推進法」は、台湾への防衛装備品の売却推進や南シナ海や東シナ海での航行や飛行の自由作戦の定期的な実行を明記している。中国が嫌がらせの行動を取れば、即、反応するという「敏感」な内容である。習近平氏が国家主席に就任後、南シナ海や尖閣諸島近海でもやりたい放題の振る舞いを見せてきたが、今後は慎重に振る舞うだろう。

 

習近平氏が、鄧小平の韜光養晦戦略を捨てて、米国と対決姿勢をとった裏には、党内序列5位の王滬寧氏の強い影響によるものと見られている。この王氏は、米国へ留学したが、真面目に米国の現実を学ばず、民主政治ゆえに議論する姿を「弱点」と捉えたのだ。それ故、習氏に対して、中国のような独裁政治が民主政治に優ると吹き込んだ。中国は、米国から覇権を奪えると進言したのだ。習氏は、それを頭から信じて「米国と断固闘う」とまで言ってしまい、今回の泥沼にはまり込んだ。習氏の自業自得である。

 

現実の米国は、王滬寧氏が想像した米国ではない。迅速に「中国けん制」に向かって動いている。習氏は、ただただ驚いているだけだろう。米中貿易戦争では2月一杯に結論を出さなければならい。こちらへ忙殺されている間に、米国は次々と中国包囲網を築いている。どうにも防ぎようがないのだ。

 

『日本経済新聞 電子版』(1月1日付)は、「米、中国けん制へ新法成立、台湾と軍事協力推進」と題する記事を掲載した。

 

(1)「トランプ米大統領は12月31日、アジア諸国との安全保障や経済面での包括的な協力強化を盛り込んだ『アジア再保証推進法』に署名し、法律が成立した。新法は議会の対中強硬派が主導し、18年4月に上院に提出された。12月上旬の上院での法案採決では野党・民主党を含む全ての議員が賛成した。中国の安保・経済面での台頭に対する米議会の危機感を象徴する法律といえる」

 

今回成立した「アジア再保証推進法」は、アジア地域から中国の政治的経済的な影響力を排除するという強い決意を示したものだ。「強い米国」をアジア諸国に示し同時に、揺るがない米国覇権を中国へ突付けているように見える。

 

(2)「新法は、中国の軍事面での影響力拡大をけん制した。中国が軍事拠点化を進める南シナ海のほか、東シナ海で航行や飛行の自由を維持する作戦を定期的に実施する。東南アジア諸国の海洋警備や軍事訓練などに今後5年間で最大15億ドル(約1650億円)を投じる。東南アジア諸国連合(ASEAN)が中国と共同で策定する南シナ海での紛争回避に向けた『行動規範』を通じ、ASEANによる海洋権益の維持を支援すると明記。ASEAN支援を明確にして、中国主導の規範づくりにクギを刺した」

 

南シナ海や東シナ海でも、米国は航行と飛行の自由を維持する作戦を定期的に行なうと鮮明にした。中国が、これを阻止するような振る舞いを見せれば「衝突」もあり得る。また、米国はASEAN側に立って支援する意思を明らかにした。

 

(3)「ルールに基づく経済秩序を目指す『インド太平洋戦略』の推進も盛り込んだ。人権尊重や国際的な法規範の重視を改めて打ち出し、広域経済圏構想『一帯一路』を進める中国に対抗する姿勢を示した。知的財産保護についても、中国の産業スパイやサイバー攻撃を念頭に『罰則を含む法律執行の強化が最優先事項だ』と指摘した。米政府は180日以内にインド太平洋地域での中国による知的財産権の窃取の現状や摘発状況を議会に報告する。サイバー分野でもアジア諸国と連携を深める」

 

米国は、「インド太平洋戦略」も鮮明に打ち出した。中国の「一帯一路」戦略に対抗する。米国は、中国のような「債務国漬け」をしないと約束しており、中国の劣勢は覆いがたい。中国の産業スパイやサイバー攻撃を念頭に対抗すると明記した。

 

米国は現在、中国に対して「5項目」の要求を突付け、文書化を狙っている。この中にはサイバー攻撃禁止や技術窃取の禁止も入っている。米国はアジア諸国に対して、中国から前記のような被害を受けないように法的措置を取るとしている。

 

中国は、すでに米国から敵と完全に位置づけられている。中国にとって、アジアは近隣国である。米国は、アジアから中国の「赤化工作」を排除するという強い姿勢に変った。この裏には、経済的に「中国弱し」という確証を掴んでいるにちがいない。

 

(4)「台湾との協力を強める。脅威がさらに高まりかねない中国に対抗するため、防衛装備品の定期的な売却を進める。米政府高官の台湾訪問の推進も盛り込んだ。米国では18年3月に高官交流の推進を明記した台湾旅行法が成立している。インドについても『防衛装備品の売却や技術協力を最も親しい同盟国と同じ水準に引き上げる』と強調した」

 

台湾へ防衛装備品の定期的な売却もすることになった。中国の急激な軍備費拡大に対抗するには、台湾軍の装備を引上げて自力で対抗させることが最も有効と判断した。技術協力も行なうという。こうなると、「中国一国論」は、事実上風穴を開けられたに等しい。米国の台湾防衛への強い決意と見られる。

 

中国が、米中貿易戦争で失ったものは実に多い。米国が、アジア全体の安保戦略へ関与し、中国を排除するからだ。中国は、自らの実力の限界も弁えず、世界覇権論に酔っていた。その虚を米国にまんまと衝かれた形である。党内序列5位の王滬寧氏の節穴が招いた「国難」である。

 

メルマガ15号 「貿易戦争で疲弊する中国、改革派が追い詰める習近平」が『マネーボイス』で紹介されました。

まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

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