ベトナムは、米中貿易戦争の激化とともに、中国を脱出した製造業の移転先として注目が集まっている。低賃金も魅力だが、外資系企業の受入れにそつがないだけでなく、ベトナムの国際感覚が優れていることだ。

 

TPPの他に、すでに昨年6月、EUとほぼ全面的に関税を撤廃する貿易協定を締結した。EUと同様の協定を結んでいるのは、東南アジアではシンガポールだけである。ベトナムに工場移転すれば、TPPとEUと双方で自由貿易のメリットが受けられる。日本とEUとのEPA(経済連携協定)は、この2月に発効する。

 

ベトナムと日本は、深い信頼関係にある。TPP11のとりまとめでは日本の片腕となって支えてくれた。影の功労者である。日本に親近感を示す裏には、「反中国」で共通という意識も働いている。中国の横暴を日本に抑えて貰いたい。そういう願いもあるのだ。

 

『ブルームバーグ』(1月1日付)は、「米中戦争、勝者はベトナム、低コスト・貿易環境、製造業誘致で強み」と題する記事を掲載した。

 

(1)「世界の企業が米中貿易戦争を嫌気して中国からの生産拠点移転の検討を本格化する中、ベトナムが競合するアジア各国を抑え、企業誘致合戦で圧倒的な強みを見せている。『アジアの工場』として今年、注目を浴びそうだ。仏金融大手ナティクシスは(1)人口動態(2)賃金と電力コスト(3)ビジネス環境と物流のランキング(4)外国直接投資(FDI)総額に占める製造業の割合-に注目して製造拠点の調査を行い、アジアの7新興国の中でベトナムが首位となった」

 

ベトナムは、中国に代わって「世界の工場」を目指している。確かに、それを実現しそうないくつかの要因をもっている。

(1)人口動態

(2)賃金と電力コスト

(3)ビジネス環境と物流のランキング

(4)外国直接投資(FDI)総額に占める製造業の割合-

 

ベトナムは、中国のように技術窃取という「強制的な行為」はしないのだろう。外資系製造業が中国よりもベトナムを選択してくれるように、国内条件の整備に努めている。

 

(2)「ベトナムの魅力の一つは各種コストの低さだ。ベトナムの製造業労働者の1カ月の平均賃金は、216ドル(約2万3860円)で中国の半分以下。ガソリン価格関連サイト、グローバル・ペトロール・プライスによると、政府の補助により、昨年6月時点のベトナムの電気代は1キロワット時当たり7セントで、インドネシアの10セント、フィリピンの19セントに比べても安価だ」

 

ベトナムの賃金は、中国の半分以下。電気代は、1キロワット時当たり7セントで、割安である。政府の補助金で電気代コストを引下げている。前述の通り、人件費は安いこともあって、外資系企業にとっては魅力ある地域になっている。

 

(3)「ベトナムのフック首相は、靴からスマートフォンまであらゆるモノの製造輸出拠点としてのベトナムの知名度を上げるため、米中間の緊張の高まりを利用している。ベトナムの総貿易額はGDPの約2倍で、シンガポールを除くアジア諸国をしのぐ」

 

ベトナムは、中国経済圏からの離脱を目指している。過去、中国には戦争を仕掛けられており(1979年)、中国への不信感は根強いものがある。そこで、日米へ外交的にも接近している。日米との経済関係を強固にして、輸出基盤を固めるという狙いもある。靴からスマートフォンまであらゆるモノの製造業の輸出拠点化を目標にしている。

 

メルマガ15号 「貿易戦争で疲弊する中国、改革派が追い詰める習近平」が『マネーボイス』で紹介されました。

まぐまぐの『マネーボイス』で抜粋が紹介されています。どうぞお読みくださるようお願い申し上げます。

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