中国の経常収支問題が、間もなく表面化する時期を迎える。この問題は、本欄で繰り返し指摘してきたものだ。昨年の経常収支黒字の激減が確定すれば、世界が一斉に取り上げるであろう。今年の経常赤字はもはや不可避となっている。

 
経常収支黒字の減少と歩調を合わせるように、ドル建て債務が急増している。現在は、1.9兆ドルのドル建て債務だが、外貨準備高3.1兆ドルの61%にもなっている。問題は、この返済期が迫っていることだ。外貨準備高を取り崩すか、元安相場を放置するのか。目が離せなくなっている。

 

『ブルームバーグ』(1月8日付)は、「危ういドル債務依存、中国と世界にリスク」と題するコラムを掲載した。

 

(1)「公式的には中国の対外債務は1兆9000億ドル(約205兆円)。経済規模13兆ドルの中国にとっては大きな額ではないが、この数字だけ見ていると、内在するリスクを著しく過小評価することになる。昨年9月時点の対外債務全体に占める短期債務の割合は62%だと公式統計は示す。つまり今年1兆2000億ドルの借り換えが必要となることを意味している。懸念すべきは債務の増加スピードだ。対外債務総額は過去1年で14%増え、2017年初めからは35%増加した。

 

債務には、短期債務と長期債務がある。1年以内に返済時期がくる短期債務は、中国の資金繰りに大きな影響を与える。中国は今年1兆2000億ドルの借り換えが必要だ。最も注意すべきは、対外債務総額の増加率が昨年35%にも上がっていることだ。経常収支の黒字が減っていることを反映している。中国は、このように対外的な資金繰りで窮迫している事実を知ることだ。

 

(2)「対外債務はもはや、1811月末に3兆ドルを若干超える程度だった外貨準備との比較で取るに足らない規模ではない。短期外債は9月末時点の準備高の39%相当と、16年3月の26%から急増した。実際はもっと危ういのかもしれない。大和証券キャピタル・マーケッツは18年8月のリポートで、中国の対外債務は3兆-3兆5000億ドルだと推計。つまり、公式統計に含まれない香港やニューヨーク、カリブ海諸島といった金融センターでの借り入れを考慮すれば、対外債務総額は最大1兆5000億ドル過少に見積もられている可能性もある」

 

中国政府が発表している対外債務は、前記の通り1.9兆ドルである。だが、「隠し債務」があちこちにあり、その総額は3兆~3兆5000億ドルもあるという試算が出てきた。中国経済の急減速という局面になると、これら「隠し債務」が表面化する可能性もある。その時のショックは、極めて大きなものになろう。

 

(3)「中国企業は、米中金利差と人民元値上がり見通しからドルでの借り入れを急いだが、短期利回りのスプレッドは縮小、元は昨年の大半で下落した。習近平国家主席肝いりの広域経済圏構想『一帯一路』を推進するためのドルでの借り入れなど、政策が対外債務の増加を加速させた。返済は今年と来年、ピークを迎える」

 

中国は昨年前半、企業に対してドル借入れを奨励していた。私は、この危険性を「勝又壽良の経済時評」(アメブロ)で危険極まりないと警告した。現実に、その危険性が迫っており、返済期が今年と来年にピークを迎えるという。こういう中国政府の後先を考えない、刹那的な政策判断が、中国経済を脆弱化させている。

 

(4)「中国の対外債務水準は低く、外貨準備高は巨額であり、金融リスクは封じ込められていると強気派はずっと主張してきたが、状況は変わってきている。17年初め以降、中国の対外債務は四半期ごとに平均700億ドルずつ増えている。こうした増加ペースが続けば、中国は外貨準備取り崩しか元安容認という受け入れ難い選択肢に向かわざるを得なくなり、いずれにせよリスクはさらに高まる。中国、そして世界は、こうした中国によるドル建て債務依存の拡大についてしっかりと考える必要がある。資金調達のいかなる停止も深刻かつ予期せぬ結果を招く恐れがある」

 

17年初め以降、毎四半期ごとに平均700億ドルの対外債務が増えていると指摘している。17年全体の対外債務は5000億ドル増加しているので、かなり隠し債務のあることを示唆している。この5000億ドル増加は、対外純資産の計算で判明した数字である。中国経済が、内外ともに行き詰まってきたことは明らかだ。

 

昨日、発行しましたメルマガ19号(有料)で詳細に取り上げました。

「追い詰められる被告席の中国、冷戦回避に躍起の理由は」