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ドイツ産業連盟は、中国へ吹き付ける米国「トランプ旋風」と合流して、EU企業の中国市場見直しを呼びかけ始めた。これまでの「中国詣で」を忘れたような風向きである。中国経済衰退の予兆を嗅ぎ取ったに違いない。

 

歴史が動くとは、こういう局面を言うのだろうか。2015年頃までのEUは、中国市場へ殺到していた。中国が、AIIB(アジアインフラ投資銀行)設立の際は、英国を先頭に雪崩を打つように参加を表明した。米国が、参加しないように釘を刺していたことも忘れて、「群がった」という表現がピッタリするほど。中国経済、永遠の発展を信じていたのだ。

 

独裁国家の計画経済は、いずれ破綻する。これは、旧共産圏経済で立証されたはずである。ドイツやEU企業は、喉元過ぎれば熱さを忘れるで、絶対的な「中国信仰」による成長神話に酔ってきたのだろう。それが、トランプ旋風の一吹きで眼前の雲が吹き飛び、中国の赤裸々な違法行為の数々が浮上し、認識を改めざるを得なくなったに違いない。

 

『ロイター』(1月11日付)は、「EUは中国に厳格対応を、企業は依存是正すべきードイツ産業連盟」と題する記事を掲載した。

 

(1)「ドイツの有力経済団体であるドイツ産業連盟(BDI)は、10日発表したリポートで、欧州連合(EU)に対中国政策の厳格化を求めるとともに、企業に対しては中国依存の是正を促した。欧州の政財界では、政府主導の経済モデルの中国に対する懸念が強まっている」

 

ドイツ産業連盟(BDI)は、日本で言えば日本経団連と同じ役割を果たしている。そのBDIが、中国の政府主導経済モデルに警告を発した意味は大きい。

 


(2)「BDIは、『パートナーとシステミックな競合相手中国の政府主導経済モデルにどのように対応するか』と題したリポートで、ドイツ企業は市場として中国を必要としていると強調するものの、中国の市場開放に対する消極的な姿勢に警鐘を鳴らし、ドイツと欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会に是正に向けた54の要求項目を提示したBDIのケンプ会長は、『中国はみずからの利益として国内市場をさらに開放し、以前から提唱している経済改革を適切に実施すべきだ』と述べた」

 

BDIの出したリポートのタイトルが、『パートナーとシステミックな競合相手中国の政府主導経済モデルにどのように対応するか』に注目していただきたい。ここに「システミック」という言葉がある。これは、「システミック・リスク」を意味しており、特定の金融機関や市場が機能不全になることを指している。中国経済が、そういう対象に分類されていることを暗示するものだ。従来の「中国経済の不敗神話」から見れば、様変りしている。

 

(3)「リポートは、EUに、域内市場のためのより強力な経済枠組みを構築し、企業を非市場経済国から自由経済システムにシフトさせるよう要求。またEUの補助金規則を厳格化し、EUで商品を生産しない企業は政府補助金の対象外にするよう求めた。EUはインフラや技術革新への投資を拡大すべきと主張した」

 

中国経済の例から分るように、非市場経済国の発展は制約がある。それ故、EU域内の市場強化をめざして、自由経済システムに完全転換させるように提言している。

 

(4)「ドイツと中国の二国間貿易額は2017年に過去最高の1870億ユーロとなり、EUの対中貿易のほぼ3割を占めた。リポートは、中国は依然重要な市場と強調したうえで『それでも、ドイツ企業は多様化した貿易関係を維持し投資決定をすることが賢明』とし、『ひとつの市場に過度に依存することは、つねに政治的、経済的リスクを伴う。そうしたリスクは最小限に抑えなければならない』と指摘した」

 

ドイツ・メルク首相の中国詣では有名である。日本訪問よりも中国を優先するという「ビジネス志向」を鮮明にしてきた。BDIの強い要請があったのだろう。そのBDIが、中国警戒論を打ち出したのだ。はっきりと中国経済の先行きに警戒すべき兆候を掴んだのだ。不動産バブルが崩壊する「地鳴り」を聞きつけたに相違ない。

 

「一つの籠に卵を入れるな」は、リスク分散の重要性を教える警句である。BDIは、EU企業に向けて脱中国市場を訴えている。後から振り返って、貴重な警告となろう。