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12月の生産者物価が、前年同月比0.9%上昇と、前月(2.7%上昇)に比べ大幅に鈍化した。物価の下落は需要の停滞を反映している。この鈍化状態は6カ月連続で、2016年後半以来の低水準を記録した。中国経済は確実に冷却化に向かっている。

 

米中貿易戦争で、中国がなすところなく米国の要求に屈しているのは、国内景気の悪化が足下を脅かしている結果だ。民族主義者の習近平氏が、ここまでトランプ氏に追い込まれながらも一矢も報いることができないのは、崖っ縁に追い込まれている証拠だ。日本が太平洋戦争で追い込まれ、米国から無条件降伏を迫られているところと似たような事情であろう。

 

『ブルームバーグ』(1月11日付)は、「中国企業のデフォルト懸念、ムーディーズ、リスク分析、13年ぶり高水準」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国企業のデフォルト(債務不履行)リスクが、13年ぶりの高水準となっている。ムーディーズ・アナリティクスの分析で分かった。想定されるデフォルト頻度を測る同社の指数によると、借り手企業の約25%で初期警告水準より高い状態だ。シニア調査アナリストのグレン・レビン氏はリポートで、『この比率はここ2年間、着実に上昇しており、今は2005年に見られた水準に近い』と指摘した」

 

世界的な格付け機関のムーディーズの分析によれば、デフォルト危機の初期状態よりも悪化している企業が、融資を受けている企業の約25%にも及んでいる。ちょうど2005年の水準に接近しているという。2005年のGDPは、二桁成長(11.3%)時代であったから、デフォルト危機に見舞われることはなかった。現在のGDP成長率は、ほぼその半分の6%台である。しかも、これから減速が見込まれる状況で、事態の楽観は許されない


(2)「レビン氏は、『比較的堅調な経済状況が続いているように見えるが、今は重大な局面に差し掛かっている。もし経済が一段と減速し、さらに悪化し、持続的な下降に入るようなら、企業のクレジットリスクが急上昇し始めるのを目の当たりにする可能性が高い』としている。同社が調査した61の産業グループで、クレジットリスクが最大だったのは建設と建材、公益部門の上下水道企業である。リポートは、『こうした産業は全て建設関連で、クレジットリスクの上昇はここ数年間における建設活動の落ち込みを映し出している』と説明。リスクが最も低いのは製薬とコンピューターソフトウエア、飲食品産業という」

 

ここで重視すべきは、生産者物価が減速状態にあることだ。理由は、過剰生産か需要減にあるが、貿易戦争による心理的圧迫も加わっている。対米輸出は、これ以上増えることが予想しにくく、生産活動は頭打ちとなろう。この状態をインフラ投資でカバーするとしても、財政的な余力が少なく、金融緩和に依存せざるを得ない局面だ。

 

クレジットリスクの高まっている業種は、「建設と建材、公益部門の上下水道企業」とされている。要するに、インフラ投資関連業種の「三羽ガラス」が苦境に立たされているのだ。中国政府は、GDP下支え役としてさらに、インフラ投資に依存する態勢である。だが、中央財政から資金を供給して工事を発注するのでなく、地方政府と国有企業による資金立替で、工事だけ進めさせているに違いない。この方式が、債務を膨らませて「クレジットリスク」を高めているのだ。この借金方式が、建設と建材、公益部門の上下水道企業」の経営悪化を招いている主因である。

 

建設と建材の業種は、インフラ投資のほかに、不動産バブルにともなう住宅建設も含まれている。先高感に惑わされて高値の住宅を購入した庶民は、多額の負債を抱えて身動きできない状態にある。これが、個人消費に頭打ち感を強めている理由である。結局、インフラ投資と不動産開発投資が行き詰まったに過ぎない。習近平経済が、破局を迎えているのだ。