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北朝鮮の金正恩委員長は、中国の国家主席習近平氏と会談する際、必ずメモを取っている。生徒が先生に教えを請う形であり、首脳会談には似つかわしくない光景だ。中国のTVは、この場面を意図的に繰り返し流し、中国の優位性を誇示している。

 

金正恩氏は、今回も特別列車を利用して訪中した。その理由について、いろいろと取り沙汰されている。帰途、土産物を沢山積み込む必要上、特別列車を仕立てているというのだ。経済制裁中で、中国は北朝鮮への輸出が制約されている。ところが、列車に積めば税関を通すわけでもなく、遠慮なく北朝鮮へ「禁輸品」を持ち込めるという解釈である。

 


『朝鮮日報』(1月14日付)は、「習近平主席の言葉をメモする金正恩委員長」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のアン・ヨンヒョン論説委員である。

 

(1)「金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は先日、66年前の金日成主席と全く同じ服装で4回目の中国訪問を行った。しかし中国側の対応は当時と全く違っていた。中国の最高指導部とされる共産党政治局常務委員7人のうち、金正恩氏と食事をしたのは習近平・国家主席と王滬寧書記の2人だけだった。金正日(キム・ジョンイル)総書記の時も常務委員全員が会談や食事に同席していた。金正恩氏は中国を4回訪問したが、常務委員全員と食事をしたことはまだない。中国は北朝鮮との上下関係を明確にする儀典をすでにはじめているようだ」

 

中国は、金正恩氏を迎えるに当たり「臣下」という扱いをしている。格下扱いだ。金日成や金正日の時代は、中国最高指導部の常務委員全員が会食に出席した。正恩氏の場合、習近平国家主席と王滬寧書記の2人だけだという。北朝鮮は、中国の庇護を求めて行動しているのだからやむを得まい。

 

(2)「中国国営テレビ(CCTV)は今回の中朝首脳会談を報じる際、金正恩氏が習主席の言葉についてメモを取る様子を意図的に34回映し出した。中国の国家主席が地方の官吏を指導するような光景だ。金正恩氏は北朝鮮では神にも等しい立場にあるため、誰かの言葉をメモする様子など想像もできないだろう。CCTVは金正恩氏が習主席の歓迎に感謝の意を伝えたと報じたが、その歓迎と関心については『関懐(配慮や思いやり)』という言葉を使っていた。上の立場が下の立場に示す関心と配慮に感謝したという意味だ。金正恩氏をさりげなく『下の人間』と表現していたのだ」

 

今の北朝鮮は、中国をバックに米国と首脳会談をしようという苦肉の演出だ。中国には、米国への橋渡しを依頼し、経済封鎖の一部解除を実現すべく助力を依頼している。問題は、北朝鮮が本当に核放棄の意思があるのか。時間稼ぎの手段に使っているのか。そういう疑惑が付きまとっている。

 

実は、金正恩氏の発言や周囲の状況をAI(人工知能)で分析したところ、「北朝鮮は『核・経済並進路線』を放棄しておらず、2020年に核保有国になることを目指しているとの結果が出た」(『朝鮮日報』1月4日付)。この分析方法は、2016年に米国の大統領選挙でトランプ大統領の当選を予測したことでも知られるという。システムダイナミクスは複数の事象間の動態的な関係を把握し、それを視覚化する理論である。

 

外交交渉で、AIが登場したのは珍しい。ついでに、日韓対立の結末をこのAIによる分析では、どういう形になるかぜひ聞いて見たいものだ。

 

(3)「中国は韓国に対しても同じように扱っている。中国は国内でさほど職責が高くない人物を駐韓大使として送り、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が中国に派遣した特使は2回もテーブルの下座に座らせた。香港行政長官や地方官が習主席に報告をするのと同じような席の配置だ。これに対して同じ頃に中国を訪問した日本、ベトナム、ラオスの特使は習主席と対等に並んで座った。文大統領自身も訪中の際には露骨な形でぞんざいに扱われた。中国が韓国を飼い慣らそうとする意図が明らかだ」

 

中国は、北朝鮮のみならず韓国も「格下」扱いをしている。韓国は、中国へ卑屈になっているのと対照的に、日本へやりたい放題である。日本は、中国のように露骨な対応を韓国に対して行なわないことが、逆に韓国を増長させているのであろう。韓国には、「忖度」という相手の心を思いやる繊細さがないのだ。