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中国が、世界覇権計画の一環として取り組んできた「一帯一路」は、あちこちで綻びを生じている。もともと、中国の利益確保が第一目的で、相手国利益は二の次であった。相手国政権を賄賂で誘導する中国得意の戦略が、今ことごとく失敗している。選挙民の反発によって、中国と結託した政権が倒れているからだ。

 

いったんは成功したかに見えた「一帯一路」が、次々と瓦解している。大規模開発ではすでに、マレーシアが中止に成功した。今や、パキスタンがこれに次ぎ、石炭火力発電所(建設費600億ドル)の建設中止を決めた。

 

『大紀元』(1月16日付)は、「中パ経済回廊、パキスタン、6兆円の石炭発電プロジェクトを保留」と題する記事を掲載した。

 

(1)「財政難にあるパキスタンは、中国との国境付近の開発地域・中パ経済回廊で予定された600億ドル(約6兆円)規模の石炭発電プロジェクトの保留を決めた。供給電力が「すでに十分確保できる」ため、計画の見送りを中国側に伝えたという。現地英字メディア『ダウン』(14日付)が報じた」

 

中国融資を主とする開発計画の中パ経済回廊は、中国北西部の新疆ウイグル自治区カシュガルと、アラビア海に面するパキスタン南西部のグワダル港を結ぶ3000キロ地域一帯を指す。この中パ経済回廊で、最大の受益者は中国である。パキスタンに資金を負担させ、中国の業者が建設を請け負うという、「中国の、中国による、中国のための」一帯一路計画である。パキスタンが現在、その矛楯に気付いて反旗を翻している。

 

3000キロの幹線道路の整備のほか、ガスパイプライン、ダム、風力、石炭、太陽光の各種発電施設、港湾と空港、通信インフラなど数十の開発計画がある。パキスタンの財政では建設はとうてい無理である

 


(2)「保留となったのは、同国北部パンジャブ州で中国輸入の石炭により1320メガワットを生産するラヒム・ヤカーン石炭発電プロジェクトである。報道によると、イムラン・カーン現政権は、向こう数年間に供給できる発電容量は十分に確保できるため、この大型電力プロジェクトにはすでに関心がなく、保留することを中国側に伝達したという」

 

火力発電所の建設に600億ドル(約6兆円)もかかるという。今後、数年間の電力需要を賄える供給体制を確保したので、今回の発電プロジェクトが不要になったというもの。パキスタン財政にとって、600億ドルの負担は死活的なものだ。危ういところで、中国の食い物になるところだった。

 

(3)「政府筋は、『全く必要のないプロジェクトで、すでに悪化している電力部門の財政の負担になる』と語った。2018年8月に発足したカーン政権は現在、中パ経済回廊の関連プロジェクトを含む公共事業計画を大幅に見直している。記事は、政府関係者の話として、内閣は公共開発計画から『政治的な動機付けによる』400あまりのプロジェクトの削除を固く決意している、と報じた」

 

パキスタンの400余りのプロジェクトが、「政治的動機」の一帯一路計画であるという。中国政府の悪だくみが、新政権の手で暴露されている。中国が、血も涙もないやり方で財政困難国にさらなら負荷をかけて隷属化させる。これは、「新植民地主義」の表れである。中国は、こうやって周辺国の信頼を失ってゆくのだ。