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中国は、世界一の人口大国だが、足下は大きく揺らいでいる。18年の出生数が予想外にも200万人も減少しており、未発表だが合計特殊出生率(一人の女性が生涯生む子どもの数)は、1.0を割り込んでいるはずである。2015年に1.05となって以来、中国政府は余りの危機的状況に驚き、以後の発表を取り止めた経緯がある。ちなみに、日本は1.40台であり、これを1.8に引上げるべく学費無料化などの対策を行なっている。

 

出生率低下が、なぜ問題なのか。それは、潜在成長率低下をもたらし、将来の年金支払いが困難になる「国家危機」につながるからだ。すでに、中国では退役軍人の年金が低額で「待遇改善デモ」が頻発している。軍人という安全保障の守り手の年金さえ不十分な現状である。今後、さらなる出生率低下がもたらす危機に、「ゾッ」とせざるを得ない。

 

『人民網』(1月24日付)は、「中国の人口は依然安定して増加」と題する記事を掲載した。

 

(1)「国家統計局が23日に発表した情報によると、現在の出産適齢期女性の人数・構成・出生率に基づく推計では、今後一定期間、中国の年間出生数は減少を続けるものの、依然として死亡数を著しく上回るため、総人口は相対的に安定した増加期にあることを明らかにした。統計では、2018年の年間出生数は1523万人で、前年と比べて200万人減少した。普通出生率は10.94で、前年と比べて1.49ポイント下がった」

 

16年にすべての夫婦に2人目の出産を認めた。その効果は、16年の出生数が99年以来の高水準となる1786万人に達した。だが、その後の2年間は減少し、とりわけ昨年は1523万人へ減っている。中国が、誇れるものは「人口」であった。それが、「今後一定期間、中国の年間出生数は減少を続ける」と認めざるを得なくさせた。これは、持続的な「合計特殊出生率」低下を宣言したに等しいこと。

 

(2)「国家統計局によると、2018年の出生数が前年比200万人減少した理由として、出産適齢期女性数の持続的減少と出生率が前年と比べてやや低下したことの2点を挙げた。「子ども2人までの出産を全面的に認める政策」効果は201617年は大きく現れたが、18年には弱まった。第2子出産の動きが落ち着き、第2子出生率が下がり、出生率全体も前年を下回る結果となった。国家統計局によると、それでも中国の出産適齢期女性数は依然1億人近くもおり、その人数・構成・出生率に基づく推計では、今後一定期間、中国の年間出生数は減少を続けるものの、依然として死亡数を著しく上回るため、総人口は相対的に安定した増加期にあるとした」

 

中国統計局は、「出産適齢期女性数の持続的減少と出生率が前年と比べてやや低下したことの2点」を出生率低下要因として上げている。これは、重大問題である。出産適齢期の女性が減ること。その上に、出生率低下が重なるとなれば「ダブルパンチ」になる。中国経済が最盛期を過ぎ、急激な下り坂に入っている。これは誰にも明らかになった。

 

なぜ、こうした出生率低下になっているのか。なだらかな低下ならば、「自然現象」と言えるが、中国の場合は「急激過ぎる」点が、最大の懸念事項である。中国社会は、歴史上ずっと「圧政社会」が続いてきた。庶民は、これからの中国に「天変地異」が起ることを肌で察知しているのであろう。そういう危機感が、出産を控えさせている理由と見ざるを得ない。

 

『ブルームバーグ』(1月24日付)は、「中国少子化の危険信号、労働人口2億人減も」と題する記事を掲載した。

 

(3)「中国の少子化は、新しい話ではない。2018年の出生率は、1000人あたり11人を下回り、1949年の中華人民共和国建国以来最低の水準となった。年金制度改革が急務であることが、改めて浮き彫りとなった。中国国家統計局が21日発表した出生率データは、少子化問題の深刻さを裏付けている。16~59歳の労働(生産年齢)人口は、(総人口の)64%超に急減した。対照的に、65歳以上の人口は約12%に増加した。政府系シンクタンクの中国社会科学院は今月、中国の人口は2029年に14億4000万人でピークに達し、50年までに13億6000万人に減るとの予測を発表。これは、労働人口が2億人程度減少する可能性を意味している」

 

中国の生産年齢人口の範囲は、15~59歳である。国際標準は15~64歳であるので、中国は5歳低い。健康上の理由で、満65歳までの労働が不可能であるからだ。中国の生産年齢人口比率が、64%超にまで急減したのは驚きである。

 

日本の生産年齢人口比率は60.06%(2017年)である。中国が、前記の通り64%超になったのは、日本に例を求めれば、2010年の64.15%である。こうなると、中国は急速に日本のレベルへ落ちていることが分る。日本を笑っていると、大きな穴に飛び込んで再起不能の事態になるだろう。