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常に理想を高く掲げて、清廉潔白を売り物にする文在寅大統領に大きな汚点が付いた。文氏が当選した大統領選で不正な情報操作が行なわれ、文候補の支持率を押上げるべくインターネット上での世論操作を支援したという事件だ。

 

文大統領の腹心とされる金慶洙(キム・ギョンス)慶尚南道知事は、文大統領が当選した2017年の大統領選挙に関する世論操作事件で2年の実刑判決を受けた。金被告が国会議員だった2016年から、不正プログラムを使ったインターネット上の世論工作を元党員に指示し、17年5月の大統領選で文氏に有利になる操作を行ったなどとして、昨年8月に在宅起訴された。地裁は、元党員らの世論工作を金被告が認識し、さらには継続的に承認していたと判断したもの。

 

この事件は、発覚後の警察の捜査がずさんであったことも問題になっていた。大統領側の圧力か、警察の忖度かは不明だが、この事件をうやむやのうちに葬り去る動きが鮮明であった。韓国司法が、時の権力に対していかに迎合しているかを示す典型例である。昭和初期の日本の警察に見られたような事件である。およそ司法における政治への厳正中立という立場を逸脱したものだった。

 

さらに驚くべきことは、この事件の裁判官批判をしていることだ。日本であれば、「真摯に受け止め、国民に謝罪する」というコメントが出るのだが、全くそういう気配がない。

 

与党「共に民主党」は30日、金慶洙氏の一審判決後に次のような批判を発表した。それは、裁判を担当したソン・チャンホ部長判事が、先に逮捕された梁承泰(ヤン・スンテ)元大法院長(最高裁長官に相当)の側近であり、今回の判決がその報復であると言い放ったことだ。

梁承泰氏は、朴槿惠政権時に元徴用工裁判の判決を遅らせた疑いで、文政権が告発し逮捕させた異例の事件だ。日本で言えば、最高裁長官が政府の要望を受入れて判決時期を遅らせたと疑いで、次期政権が逮捕させたという類いの話だ。

 

今回の事件の裁判官は元大法院長の側近だから、その報復で金知事へ有罪判決を下したと非難している。こういう理屈は、司法の独立性を著しく損ねるもので、それこそ名誉毀損で訴えるべきものであろう。この事件の裁判官は、朴槿惠氏に有罪判決を下した裁判官でもあった。与党の「共に民主党」は、当時の判決について「名裁判」と賞賛した。今回の判決については、掌返しの非難をしている。自らが不利益を被ったからだ。

『朝鮮日報』(1月31日付)は、「ドルイドキング、文大統領側近知事の実刑判決に韓国与党『裁判官弾劾推進』」と題する記事を掲載した。

 

「共に民主党の洪翼杓 (ホン・イクピョ)首席報道官は同日の緊急最高委員会後、記者会見を開き、「司法介入勢力の報復裁判に対して非常に遺憾に思う。我が党は『司法介入勢力・積弊清算対策委員会』を構成するだろう」と語った。さらに、「梁承泰元大法院長の司法介入にかかわっている判事の人的清算が行われなければ司法改革は難しい。法的手続きである(裁判官)弾劾を含むさまざまな方策を考えたい」と述べた」

 

こういう言い方は良くないが、韓国で起っている問題は、すべて「我田引水」的な論調である。自分は正しい。間違っているのは相手だ。この論法は、儒教の朱子学による「道徳主義」に基づく。これでは、永遠に紛争は続く。自己反省のない道徳主義ほど始末が悪いものはないのだ。日韓関係のもつれも、この身勝手な「道徳主義」に基づく。