a0003_ki_0012_m
   

環境対策は、実施が遅れるほどコスト増加に見舞われるものだ。中国は今、その渦中にある。中国の環境破壊は、人間生存の限界を超えていると言われている。最近の経済減速で、国民の暮らしが悪化している上に、大気汚染などが加わると、一層の政府批判を招くのは当然。そこで、遅ればせながらも環境規制に取り組んでいる。

 

中国が、環境規制の法律を作ったのは1989年と早かった。だが、法律を制定してもそれだけ。取締はないも等しいザル法であった。企業からの賄賂で取締を見逃してきたのである。いかにも賄賂の国、中国らしい経緯を経ている。最近の大気汚染は、人間の生命を脅かす事態となっている。政府も重い腰を上げざるを得なかった。

 

『日本経済新聞 電子版』(2月10日付)は、「中国の環境規制強化、日本企業、生産移転広がると題する記事を掲載した。

 

中国の環境規制強化に伴い、日本の素材や部品メーカーが生産拠点の移転や計画変更を余儀なくされている。三洋化成工業2019年中に中国の工場の一部生産をタイに移す。化成は蘇州市の工場の拡張を断念し、江蘇省に新設する。18年には汚染物などの排出量に応じた税制度も導入され、進出企業のコスト負担が増している。

 

中国政府は広域経済圏構想「一帯一路」のなかで、環境保護政策で世界をリードする戦略を示している。15年以降、排水・排ガスなどの規制を段階的に強化し、既に「規制水準や罰則は日本より厳しい」(化学メーカー幹部)という声もある。現地で環境保護の姿勢をとってきた日本企業も対応を迫られている。

 

(1)「三洋化成は江蘇省南通市の工場で手掛ける塗料用添加剤の生産をタイの既存工場に移す。これまで生産過程で大量に排出する廃液を現地業者が回収していた。しかし、環境規制の強化で回収価格が上がったり、業者が廃業したりして対応が難しくなった。旭化成は20年に江蘇省常熟市で自動車の軽量化に使う樹脂の新工場を稼働させる予定だ。蘇州市内の既存工場での生産での増産を検討してきたが、排ガス規制などが厳しくなり、拡張工事を断念した」

 

環境規制は当然、行うべきものである。だが、改革開放の40年間、環境問題を真面目に取り上げたのはここ2~3年のことだ。その間は、全くの野放しにしてきた。それが突然の取締である。企業にとっては大変な負担増である。環境保全コストは、対策が遅れれば遅れるほど急増する特質がある。しかも、原状回復は容易でな。これは、以前から分りきったことであった。中国政府はそれでも行なわず、インフラ投資に資金を回してきた。その咎めが、これからコスト増加として跳ね返る。自業自得と言うべきだ。低成長を余儀なくされる中国経済にとって、新たな負担増になる。

 

(2)「日本貿易振興機構(ジェトロ)が18年、中国に進出した日系企業を対象に環境規制についてアンケート調査したところ、回答企業の10%が「厳しすぎ・事業の継続が困難」と答え、6%が工場移転を「検討している」とした。中国では15年に環境関連の基本法である環境保護法を約25年ぶりに全面改正し、罰則強化を盛り込んだ。18年には環境保護税を施行し、汚染物の排出量や騒音の大きさに応じて企業に課税し始めた。中国環境保護省によると18年の全国での罰金総額は1528000万元(約2500億円)と17年に比べて3割増えた。現地企業への規制強化は、その取引相手である外資企業のコスト増にもつながっている」

 

日系企業が、環境規制が厳しすぎるというのは、中国政府が過去の遅れを取り戻す勢いで、一度に規制強化しているのであろう。これは、企業にとって短期的に大きな負担になる。日系企業のうち工場移転を検討していのが6%ほどあるという。中国政府は10年以上前から、着実に実施していれば、企業は一度に対策を迫られることもなく、楽に対応できたであろう。中国政府のやることに、計画性を感じることは少ない。こういう体たらくでも、計画経済の旗を降ろさないのはなぜか。共産党独裁のためだ。