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トランプ大統領は7日、中国との通商協議の期限である3月1日までに習近平国家主席と会談する計画はないことを確認した。トランプ氏の側近は、争点である知的財産権の問題で両国の間に依然隔たりがある現段階で会談に応じれば、早期の合意に対する根拠のない期待が高まる恐れがあることに懸念を示したという。『ロイター』が伝えた。

 

 米中貿易戦争の焦点は、知的財産権問題であることが確認された。中国による技術窃取、産業スパイ、技術の強制移転の禁止問題がまだ合意されていないことを示している。中国のハト派=経済改革派は、米国要求について理解する姿勢を取っている。こうした意見がこれまで表面化しなかったが、かなりの支持を得ていることを伺わせている。その理由を紹介したい。

 

在日中国人エコノミストの関志雄氏は、「なぜ米国が中国に貿易戦争を仕掛けたか」(2018年10月19日 独立行政法人 経済産業研究所)の中で、ハト派の立場を次のように紹介している。

 


ハト派は、中国が現在の実力では、貿易戦争において、米国に勝てないと判断しており、米国の要求を受け入れることをテコに、改革開放を加速させるべきだと主張している。上海財経大学の余智教授の見解が代表的である(余智「中国は貿易戦争の拡大を防ぐべき」『聯合早報』、2018726日)。

 

(1)「貿易戦争による中国経済へのインパクトは、米国経済へのインパクトより遥かに大きい。なぜならば、中国の米国への輸出依存度は、米国による中国への輸出依存度より高いからである。その上、米国はより多くの中国製品を対象に関税率を上げ、それによって得られた関税の一部を、損失を被った企業に補償金として支払うことができる。また、中国企業は、米国企業より収益率が低く、貿易戦争のインパクトに耐える力が弱い。中国政府は、米中間における摩擦の原因となる問題の解決に努め、貿易戦争の拡大を防ぐために最善を尽くすべきである。中国政府系のメディアは、貿易戦争の全責任を米国に押し付け、中国側がすでに貿易戦争の回避に最大の努力をしたと主張する一方、米国側が貪欲的に調子に乗ったことこそ貿易戦争勃発の根本原因だと批判しているが、このような姿勢はあまりにも感情的で、冷静・客観的ではない」

 

ハト派は、冷静に中国の経済力を分析している。あとのパラグラフで取り上げられているが、中国の補助金政策は国内的にも腐敗を招く要因として糾弾されていることが分る。もし、このハト派の主張が中国側の多数意見になれば、米中貿易戦争は合意がなるのではないか。一瞬、そんな感じすら受けるほど、物わかりの良い姿勢である。

 

(2)「実際、中国が努力する余地はまだまだある。まず、米国側が指摘しているように、中国政府による輸出と戦略的産業への支援(直接・間接的な各種補助金の交付)は、米中貿易不均衡の原因である。その上、各種の補助金に頼った対外貿易と産業発展戦略は、輸出価格の低下による交易条件の悪化、補助金を受けている業界と企業の効率低下、不正会計、生産過剰、ダンピング、賄賂など多くの問題を招いている特に太陽光発電、新エネルギー車、ロボット産業では大きな問題になっている。また、対外経済貿易戦略と産業発展戦略は、決して一国の「内政」問題ではなく、その策定と実施に当たり、WTOの「補助金及び相殺措置に関する協定」などの国際ルールとの整合性や、他国へのマイナス影響についても考慮しなければならない」

 

補助金政策が、太陽光発電、新エネルギー車、ロボット産業では大きな問題になっているという。この補助金がWTOのルールに反する以上、中国も再考すべきと指摘している。これまでの中国政府の公式見解とは、全く異なる。中国経済を国際ルール=市場機構の中で見直すという見解の表明で新鮮に映る。

 

(3)「米中で協議を行う際、中国は対外経済貿易戦略と産業発展戦略を『絶対譲れない核心的利益』としてはならない。発展戦略の目標は国家の核心的利益だが、発展戦略の具体的な手段と方法はそれに当たらない。確かに中国がすでに公表している『中国製造2025』のような国家戦略を止めることはできないが、調整は不可能ではない。国際ルールに合わない部分や、ほかの国へのインパクトが大きすぎた部分などを修正することはできる。戦略的産業の発展を促すための手法を、特定産業への補助金の交付からすべての企業を対象とする減税や、産業の基礎研究への支援に切り替えるべきである」

 

「中国製造2025」についても柔軟である。特定産業への補助金交付を止めて、すべての企業を対象とする減税や産業の基礎研究への支援に切り替えるべきだとしている。これだけ柔軟な見解は初めて聞くものだ。今後の米中交渉では、ぜひ中国側の妥協的な姿勢を見せて貰いたいもの。中国のハト派=市場派は、西側の見解とほぼ同じ線であることを「発見」した。