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ほとんどの欧米先進諸国では、臓器移植を待つ患者の待機期間は何カ月、時には何年にも及ぶ。ところが、極秘の調査で判明したことは、中国の臓器移植が待たされることなく、簡単に行なわれているという。それは、臓器入手が違法な手段で行なわれている証明である。健常者を殺害して臓器を摘出して売買する、血も凍る「悪徳ビジネス」が存在している結果だ。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月6日付)は、「悪夢、中国の臓器売買の実態」と題する寄稿を掲載した。

 

筆者のベネディクト・ロジャース氏は国際人権団体、「クリスチャン・ソリダリティ・ワールドワイド(CSW)」の東アジア・チームリーダーで、英保守党人権委員会の委員長代行や「中国での臓器移植濫用停止のための国際ネットワーク(ETAC)」のアドバイザーを務めている。

 

(1)「中国は、残虐な臓器取引で非難を浴びている。その行為の証明は難しい。なぜなら被害者の体は廃棄され、行為の目撃者は、医師、警察官、刑務官など関係者に限られるからだ。だがそうであっても、厳しい判断を裏付ける証拠はそろっている。容疑は、法輪功メンバー、イスラム教徒のウイグル族、チベットの仏教徒、「地下教会」のキリスト教徒など多くの「良心の囚人」に医学的検査を受けさせ、彼らから無理やり臓器を摘出しているというものだ。これらの臓器は、移植用に大量に売買されてきた」

 

中国では、死刑囚の臓器を売買して大儲けしている話は広く流布している。江沢民・元国家主席の長男は、二度臓器移植したと伝えられている。その臓器提供者は誰だったか。国内の大学生が突然、失踪してその犠牲になったのでないかとも報じられた。このように、身の毛もよだつ話が多いのだ。これも、中国の暗黒部分である。

 

死という形で臓器提供させられた犠牲者は、法輪功メンバー、イスラム教徒のウイグル族、チベットの仏教徒、「地下教会」のキリスト教徒などである。無宗教・無信仰の中国社会では、前記の「良心の囚人」とされる人々に対して、人間として持つべき一片の憐憫の情もない。中国の権力者には、前記の人々を殺害して当然という恐るべき「人格喪失者」が紛れ込んでいる。

 


「良心の囚人」とは、国際的民間人権擁護団体アムネスティ・ インターナショナルが提唱している概念である。非暴力であるが言論や思想、宗教、人種、性などを理由に不当に逮捕された人をいう。中国では、社会派弁護士と言われる人々も、権力側にとって「不都合な存在」という意味で逮捕され、先に3年余の禁固刑を科された。刑務所収監中に毒殺などの危険がきわめて高い。

 

(2)「中国で移植を待つ患者(外国人を含む)は、数日のうちに適合する臓器の提供を約束される。カナダで政治家、検察官の経歴を持つデービッド・キルガー氏、弁護士のデービッド・マタス氏、米ジャーナリストのイーサン・ガットマン氏らの調査チームは、中国各地の病院で患者を装うことで、こうした事実を確認した。中国衛生部(厚労省に相当)の元副部長で中国人体器官捐献与移植委員会委員長の黄潔夫氏は2005年、手術に備えて予備の肝臓を2つ用意させた。この肝臓は、翌朝に現場に届けられた」

 

中国衛生部(厚労省に相当)の元副部長は2005年、カナダ側の「囮手術予定者」に手術の予備用を含めて2つの肝臓を用意させたという。中国当局が、臓器売買に関わっている動かしがたい証拠となった。

 

(3)「キルガー、マタス、ガットマンの3人は、2006年までさかのぼる調査に基づく報告『血塗られた収穫・虐殺の最新報告=仮訳)』を2016年に出版した。彼らの推計によれば、中国の病院では年間6万〜10万件の臓器移植が行われているとみられる。これらの臓器はどこからやってくるのだろうか。中国は「アジア最大の自主的臓器提供システム」を有しており、囚人の臓器の利用は2015年にやめたと主張している。しかし中国には、自主的な臓器提供の伝統はない。中国の公式発表によれば、2010年の自主的臓器提供者数は34人だった。2018年時点でも、公式統計上の自主的臓器提供者は約6000人にすぎず、彼らが提供した臓器の数は1万8000強となっている」

 

中国に、自主的な臓器提供の伝統はない。これは、儒教で「身体髪膚(しんたいはっぷ)これを父母に受くあえて毀傷(きしょう)せざるは孝の始めなり」という考えが、中国に根付いていることだ。つまり、自らの身体は両親から授かったもので、これを傷つける行為は親不孝という教えである。

 

2018年時点で、自主的に提供した臓器の数は1万8000強である。中国の病院は、年間6万〜10万件の臓器移植が行われている。この差の臓器をどこから持ってきたのか。合理的な説明がつかないのだ。4万~10万は、善良な人々を殺害して取り出していることになる。