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けさ、下記の目次で発行(有料)しました。よろしくお願い申し上げます。

 

一人っ子政策が危機の原因

10年遅れ日本の後を追う

人口減が海外戦略を狂わす

出生率低下による3大問題

 

 

現在の中国は、建国以来の潜在的な危機を抱えています。出生率の急低下という問題です。過剰人口に悩まされた中国は、1979年~2015年までの36年間、「一人っ子」政策を実施して人口増加にブレーキをかけました。それが、結果として行き過ぎてしまい出生率の急低下を招いています。

 

人口問題は、一般にはなかなか理解されがたいものです。日本もその轍を踏んでおり、出生率の引上げに躍起となっています。幼児教育から高校・大学の授業料無料化まで、膨大な財政負担によって、日本の発展を支えようという大構想です。

 

中国の場合、日本よりもはるかにその対策が遅れています。聞き慣れた言葉になりましたが、合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子どもの数)は、日本が1.4人台です。中国は2015年に1.05人という数字が算出できる関連データを発表以来、その発表を中止しました。それは、合計特殊出生率が1人を割る事態になって、あえて中国の「弱点」を公表するまでもない、という懸念によるものと見られます。

 

人口は、安定的な社会保障や年金制度の維持という観点から、横ばい維持が理想です。それには2.08人という合計特殊出生率が必要です。日本では、2025年までに1.8人の目標を立て、人口1億人維持を目指しています。中国は現在、合計特殊出生率が1人を割っていると見られます。これは、中国の将来に最大の潜在的な危険要因を抱えたと言えます。

 

合計特殊出生率は、一国経済の潜在成長率に大きな影響を与えます。人間は、生産の主体であり、消費の主体です。労働力不足はロボットなどが代替できます。ロボットは、消費をしませんので、経済の均衡ある成長に寄与しないのです。経済発展と社会保障充実には、人口の安定的な増加率が欠かせない理由です。

 

一人っ子政策が危機の原因

人口が純減状態になれば、年金制度が維持できません。中国のように社会主義を標榜している国家では、年金によって老後生活を保障せざるを得ません。中国は折りに触れ、社会主義の体制的優位性を強調してきた手前、これを裏切ることは共産党の権威を自ら貶める結果となります。その公約は、人口高齢化で働き手が減れば維持できないのです。「一人っ子」政策が、皮肉にも中国共産党の将来を揺さぶる要因になってきました。

 

中国は、2050年頃を目途にして米国の覇権に挑戦すると宣言しました。米中貿易戦争の裏には、この覇権をめぐる米国の拒否姿勢が色濃く投影されています。中国が、その2050頃に人口動態面で、どのような落込みになっているか。それが、カギを握るでしょう。この問題は後で取り上げますが、現在の国民の平均年齢は、米中ともに37.4歳です。合計特殊出生率は、米国が1.82人(2016年)。中国も公式では1.62人(2016年)としていますが、信憑性に乏しく信頼できません。現実は、1人を割っていると推測されているのです。

 

米中の平均年齢が現在、同一レベルにあります。かつ、中国の合計特殊出生率が、米国を下回っている点を勘案すると、次のことが予測できます。

 

1.   中国は、米国よりも早く人口高齢化を迎える

2.   中国の潜在的成長率は、米国を下回る事態を迎える

3.   米国は移民社会であるので、移民を受けいれて出生率を引上げる余地がある

 

このように中国は、米国と比較して不利な状態に置かれています。米国の覇権を狙える人口基盤が存在しないことになるのです。この点は、きわめて重要ですので記憶に止めていただきたいと思います。

 

中国の普通出生率は2018年、1000人あたり11人を下回りました。1949年の中華人民共和国建国以来、最低の水準となって衝撃を与えました。2018年の出生数は17年比200万人少ない1523万人でした。2年連続の減少で1980年以降では最も少ない出生数になりました。

 

中国政府系シンクタンクの中国社会科学院は、中国の人口は2029年に14億4000万人でピークに達し、50年までに13億6000万人に減るとの予測を発表しました。これは、生産年齢人口が2億人程度減少する可能性を意味しているのです。中国政府は、2050年頃に米国覇権へ挑戦するという国家目標を打ち挙げました。その時点で、生産年齢人口が2億人も減っており、中国の経済成長率が急減速しているはずです。(つづく)