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TPP11(米国を除く環太平洋経済連携協定)は、昨年12月30日に発効した。新たな参加希望国を募っていく段階である。韓国は、TPP11ヶ国のうち、FTA(自由貿易協定)を結んでいないのは日本とメキシコだけだ。日本とFTAを結ばなかったのは、関税を引下げれば、日本の工業製品に負けるという危惧にあった。

 

すでにTPPが発効している以上、韓国の加盟が遅れればそれだけ不利になるという計算も働いている。ただ、韓国政府部内でも意見集約が終わっていないのが実情だ。産業通商資源部は、慎重な姿勢である。関税が引下げられる影響を最も強く受ける産業を所管に持っているからだ。一方、外交部や企画財政部は積極的と伝えられている。その理由は、後で取り上げたい。

 

『中央日報』(2月15日付)は、「事実上の韓日FTA加速か、CPTPP加盟国と協議へ」と題する記事を掲載した。

 

(1)「韓国政府が事実上の「韓日自由貿易協定(FTA)」と評価される包括的および先進的な環太平洋経済連携協定(CPTPP)の主要加盟国と非公式協議に入ることにした。CPTPP加盟に一歩近づいたという分析が出ている。洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官は14日、「不確かな通商環境に積極的に対応するためCPTPP主要加盟国と非公式予備協議を進めることにした」と明らかにした。この日、政府ソウル庁舎で開かれた対外経済長官会議である。ただ、洪副首相は「参加を前提にしているわけではない」と述べた」

 

韓国は、最初のTPP加盟国として米国から強い呼びかけを受けたが、朴槿惠政権時に中国への遠慮で参加を見送った。原加盟国であれば、韓国の希望を入れられたが遅れて参加するから、すべて「受け身」になる。情勢が読めなかった結果だ。文政権が、日韓問題で「暴走」しているのと似たような「外交音痴」ぶりを見せていた。

 

(2)「CPTPPはアジア太平洋地域を中心にした「メガFTA」である。韓国はCPTPP加盟国のうち、日本とメキシコを除いた国とすでにFTAを締結している。従来の11カ国以外の国がCPTPPに加盟するには、CPTPPに基づく市場開放はもちろん、11カ国の要求事項を受け入れなければいけない。企画財政部の関係者は「加盟手続き前の段階として加盟国と接触し、もし加盟するならどんな条件で参加できるかを検討する段階」とし「後に総合的に検討して最終的に加わるかどうかを決めることになる」と伝えた。加盟時期については「決まっていないが、年内に検討を終えるだろう」と話した」

 

韓国は、加盟各国との下交渉を行い、各国の感触を確かめて年内の検討を終えたいという。参加するとなれば、来年以降の話となる。

 

(3)「CPTPP加盟をめぐる政府内の意見は分かれる。企画財政部の関係者は「我々もいつかは(加盟)しなければいけない」とし「早期に加わるのがよいという意見、加盟してもプラスはないという意見があり、総合的な検討に時間が必要」と述べた。企画財政部と韓日関係改善カードが必要な外交部は加盟に比較的積極的だという。産業通商資源部は慎重論に近い。参加すれば事実上、日本とFTAを締結する効果があり、対日貿易赤字がさらに増える可能性がある」

 

外交部と企画財政部はTPP参加に積極的と言われている。理由は、日韓の関係改善を狙っていることだ。特に、企画財政部は日韓通貨協定の復活を実現できれば、通貨危機が起ったさい、日本に支援を求めやすいという「虫の良いこと」が念頭にある。最近の日韓関係の悪化から見れば、日本はTPPと通貨協定復活を切り離して扱うべきだろう。

 

産業通商資源部は、TPP参加に慎重論という。韓国の対日貿易赤字は、次のような経緯を辿って、増えているからだ。

2015年 203億ドルの赤字

  16年 231億ドルの赤字

  17年 283億ドルの赤字

日本から半導体製造用装備など輸入が急増した結果である。TPPへ加盟すれば、日本車の輸入関税(8%)が消え、自動車産業への打撃も予想される。


(4)「農水産当局は、CPTPPに加盟すれば、韓国の農水産物市場を追加で開放しなければいけないという負担がある。キム・サンボン漢城大経済学科教授は「市場開放度が非常に高まるため国内への影響を分析して慎重に決める必要がある」と述べた」

韓国も農産物の関税引下げは難物である。農家の反対闘争は、きわめて過激である。一騒動起るのは十分に想像できる。日本の農家もTPPでは反対運動を展開した。だが、農家の高齢化で、日本農業を守れないという認識が強まり「条件闘争」になった。韓国もそういう合理的な判断ができるかどうか。それは、未知数である。