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米国政府と議会は、これまで韓国政府との間に、対北朝鮮政策をめぐって大きな溝ができていた。韓国が、北朝鮮への融和姿勢を取り過ぎており、米国の対北朝鮮交渉に障害になっているという点の批判だ。韓国政府は、この警告を無視していると突然、重大な事態に陥る危険性が出てきた。

 

米議会上院のテッド・クルーズ議員(共和党)とメネンデス議員(民主党)が、今月11日(米国時間)「韓国政府が北朝鮮制裁の緩和に乗り出せば、韓国の銀行や企業が制裁対象になるかも知れない」とする警告の書簡をポンペオ国務長官に送っていたことが明らかになった。

 

この問題については、すでに伏線があった。米議会下院のナンシー・ペロシ議長(民主党)は12日(現地時間)、韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長や与野党代表団と面会した際、「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の本当の意図は非核化ではなく、韓国を武装解除することだ」と述べた点である。ペロシ議長は、「(北朝鮮の非核化は)言葉ではなく証拠が必要だ」とも指摘した。韓国政府は、証拠でなく言葉に酔っている感が強い。

 

『朝鮮日報』(2月16日付)は、「米議会から名指しで批判された文大統領・康外相、これ以上警告を聞き流すな」と題する社説を掲載した。

 

(1)「米ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、ジョシュ・ロギン氏が14日に同紙を通じ、米議会上院のテッド・クルーズ議員(共和党)とメネンデス議員(民主党)の書簡を公表した。両議員は書簡で「北朝鮮による核兵器開発と弾道ミサイル開発に対する制裁を実行するにあたり、韓米両国の協力の現状に深い懸念を表明する」「とりわけ南北間と米朝間の外交は互いに進展の度合いが異なっているため、韓国の銀行や企業が米国の制裁に直面する潜在的リスクにも懸念している」などと直接的に表現した」

 

米国政府は、トランプ大統領を初め韓国政府に不信感を持っている。余りにも北朝鮮へ前のめりの融和姿勢に出ているからだ。これに呼応する形で、米上下院の共和・民主両党議員が12日(現地時間)、「米韓同盟と日米同盟は重要であり、日米韓の三角協力も必須だ」という内容の超党派の決議案を発議していた。米上下院が、こうした内容の決議案を同時に発議するのは異例とされる。最近の日韓関係の悪化が、米国の対北朝鮮政策遂行において障害になっている点を示唆し、韓国に自省を求めたと見られる。今回、米議会が超党派で韓国政府を批判した書簡を国務長官に送った裏には、諸々の韓国政府批判が込められていると見るべきだ。

 

書簡で、「韓国の銀行や企業が、米国の制裁に直面する潜在的リスクにも懸念している」と警告したのは、韓国政府の進めている対北朝鮮政策が、米国の制裁にとって邪魔であると率直に指摘したものだ。韓国政府は、この警告を軽視していると大きなペナルティーを受けることになろう。


(2)「両議員が文在寅(ムン・ジェイン)大統領と康京和(カン・ギョンファ)外交部(省に相当)長官を名指しし、米国における制裁関連の法律に違反している可能性に言及したことは大きな問題だ。まず文大統領が昨年9月の南北首脳会談に韓国の大手企業トップを引き連れ、開城工業団地や金剛山観光の再開について話し合った事実、そして康長官が開城工団に現金ではなく現物を持ち込む方策について検討中と発言したことなどが問題視された。さらに韓国の複数の銀行が北朝鮮向け投資を行う部署を立ち上げた点にも言及した」

 

米議員は、具体的に韓国政府の問題点を指摘している。韓国政府は、言い逃れできなくなってきた。

 

(3)「米国務省のビーガン対北朝鮮政策特別代表はワシントンで韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長や与野党の代表団と面会した際「南北関係の発展は国際社会における対北朝鮮制裁の枠の中で行われねばならない」と発言したが、これも聞き流してはならない言葉だ。ビーガン代表は「両親が子供を叱る時に、母親と父親が違うことを言ってはならない」という例えを話したが、これも韓国と米国が異なった行動を取っていることへの不満を遠回しに伝えたものだ。それにも関わらず文議長は「訪問団は北朝鮮の非核化を疑う米国国内の雰囲気を希望的な方向に転換した」と自画自賛した。顔を合わせた相手とは無難なやり取りしかしない外交的な態度を相手の本心と勘違いしているのだ」

 

米国務省高官も、韓国国会の文喜相議長らと面会の際、韓国政府の突出した北朝鮮政策を間接的に批判していた。外交であるから婉曲的話法だが、これに気付かない韓国は、相当の鈍感体質というべきだ。