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1月の「社会的融資総量」は、1年半ぶりの伸び率になった。2月の春節を控え、大量の資金引き出しに備えて万全の体制を取った結果である。万一、銀行で預金を下ろそうとしたが、現金がなかったという事態が起ると、一気に信用不安に陥る瀬戸際にあるからだ。

 

「社会的融資総量」とは、中国独特の概念で、次のような内容である。

    銀行融資

    オフバランス融資(信託融資、委託融資など)

    直接融資(社債発 行、株式発行、ノンバンク融資など)

特に銀行を介さないオフバランス融資、いわゆるシャドー バンキングを経由した資金供給を捉えている。シャドーバンキングの存在が大きい中国では、ここに関心が集まっている。

 

企業や個人の資金調達総額を示す「社会融資総量」残高は1月末で前年同月比10.%増えた。伸び率は昨年12月末より0.6ポイント拡大した。伸び率が拡大するのは17年7月以来のこと。このように増加に転じた裏には、中国人民銀行(中央銀行)の並々ならぬテコ入れがあった。

 

第一は、預金準備率の引き下げである。1月に2回に分けて計1%引下げ13.5%にした。これは2008年のリーマンショック時を下回る。この事実が物語るように、中国経済を取り巻く環境は、当時よりも悪化しているという当局の認識を表している。

 

第二は、銀行が不良債権を抱えて資本勘定の毀損が著しいことへの対策である。銀行は、永久債というもっとも条件の悪い債券発行に追い込まれているが、買手がいないので中国人民銀行が買い取るという事態になっている。

 

日本の平成バブル時に、体力の落ちた金融機関は「日銀特融」を受けた。中国人民銀行も同じ羽目に追い込まれている。不動産バブル崩壊の何よりの証拠だ。中国人民銀行の潘功勝副総裁は19日、国内銀行の永久債発行を一段と支援するとの考えを示した。それだけ、銀行の資本勘定が痛んでいるのだ。

 

第三は、背に腹は変えられず、一度は絞り込んだシャドーバンキングに再び資金を流していることである。高利資金が、民営企業やインフラ投資に回る事態は、従来とまったく変っていない。いくら緊急事態といえども、中国の信用機構に何らの改善も見られず、その日暮らしにあえいでいる様子が分る。

 

『ブルームバーグ』(2月21日付)は、「中国首相、銀行に長期融資の増加呼びかけ-過剰な流動性供給は否定」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国の李克強首相は短期貸し付けの急増に伴うリスクを警告し、銀行は実体経済への長期貸し付けを増やすべきだと主張した。李首相は20日、国務院の会合で発言。国務院がウェブサイトに掲載した発表文によると、首相は中国の慎重な金融政策に変更はなく、政府が経済を過剰な流動性で『あふれさせる』こともないと述べた」

 

李首相の発言は、次のように要約できる。

    短期貸し付けの急増に伴うリスクを警告

    銀行は実体経済への長期貸し付けを増やすべし

 

短期貸出は、在庫手当など運転資金を意味する。長期貸出は、設備投資資金である。だが、今年は、設備投資循環(10年)のボトム期に当っている。過去の過剰投資の調整期に当るので、新規設備投資は出るはずがない。中国最高指導部は、こういう景気循環の認識を持たなければダメだ。これが、計画経済に見られる最大の弱点である。再言すれば、今年の設備投資は沈滞したままである。詳細は、私の「メルマガ21号 中国、『9の付く年』必ず波乱、今年も何かが起る!」で説明した。

 

(2)「李首相は、『中国の最近の金融政策については、市場参加者を中心に外部から総じて肯定的な評価を得ているが、これは量的緩和なのかとの疑問も浮上している』と述べた上で、『慎重な金融政策を変えてはおらず、今後変えることもない。われわれは経済をあふれさせることには断固反対だ』と続けた。中国は人民銀行(中央銀行)が1月に、市中銀行の預金準備率を合計1ポイント引下げ、経済全体のファイナンス規模は同月に市場予想を上回る伸びとなっていた」

 

中国は、金融の量的緩和に入ることをはっきりと否定している。病人が、重湯を飲んでいる状況にある以上、「過食」が健康を害すると同様に、金融緩和が実物投資に回らず、不動産投機に回ることを警戒している。純然たる市場経済であれば、不動産投機の咎めは不動産価格の下落に現れる。中国は、それが怖くて下落を管理している。これは、不動産の過剰在庫整理を遅らせるだけである。中国経済の回復が、それだけ遅れるのだ。こういう認識がないから、価格下落に歯止めを掛けるという愚かなことをしている。膿をためて、切開手術を遅らせているに等しい間違いである。