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習近平氏は、止まるところを知らない軍拡計画に酔っている。35年までに原子力空母を4隻建造するという派手な目標を打ち出した。典型的な「帝国主義的発想法」である。戦前の日本が、国力を忘れて軍拡にのめり込んだ事情とよく似ているだけに、中国国民へ限りない同情と憐憫の念を持たざるを得ない。

 

習氏には、子どもがオモチャを欲しがる心理と同じである。「より早く」、「より大きく」という拡大思想で軍備を揃えているが、何をするつもりなのか。中国のような広大で非効率な国土を狙う国は存在しない。そう言っては失礼だが、民度の高くない国民を支配管理するメリットはゼロ。逆に、膨大な管理コストがかかって自滅する。中国を侵略する国はない。

 

となると、習氏の狙う軍拡は他国領土の侵略である。領土=資源という20世紀までの方程式は、もはや遺物になっている。科学技術が、領土=資源に勝る最大の財産である。習氏は、第三次世界大戦でも始める積もりかも知れない。根底にあるのは、自分の名前が永遠に語り継がれ夢に憧れているのだろう。これが、専制独裁者に共通の夢である。余りにも幼い。

 

『レコードチャイナ』(2月24日付)は、「中国、2035年までに原子力空母4隻建造、それでも経験不足で戦闘力は米海軍に及ばないー香港紙」と題する記事を掲載した。

 

香港英字紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』(2月22日付)によると、中国海軍は2035年までに米海軍に追い付くことを目標に新たな原子力空母4隻を建造する計画、と報じた。中国海軍は現在2隻の空母を所有。最終的には空母6隻による戦闘態勢を整える構想だが、記事は『戦闘経験不足のために米海軍には戦闘力では及ばない』と分析している。


(1)「中国の習近平国家主席は2035年までに人民解放軍を近代化し、2050年までに世界トップクラスの軍事力となるよう指示。こうした近代化の中で、陸軍部隊を減らして空軍、海軍にもっと予算を割くように命じた。中国の原子力空母4隻は2035年までに海軍に配備される見通し。米空母などが使う蒸気式カタパルトよりも戦闘機の射出が容易な電磁式カタパルト(EMALS)が搭載される。軍事専門家は、『中国海軍の空母は6隻になるが、戦線に投入されるのは4隻だろう』とみている」。

肝心の中国の経済力が、この膨大な軍事費を賄えるだろうか。何も生産しない空母を4隻持って、何のメリットがあるのか。米中貿易戦争で、中国は無残な敗退が決定的になっているが、この貿易戦争を拡大させた責任者は習近平氏である。国内の反対派を抑えて、「受けて立つ」と豪語しこの敗北である。習氏には、大局観が欠けている。無謀なことにカネを使う非合理的な側面がありすぎる。

 

今後の中国経済は、不動産バブルの崩壊で急速な鈍化に向かう。日本の二の舞である。一方では、膨大な高齢者人口を抱えて、年金や社会保障費で国家財政は破綻寸前に追い込まれるのだ。土地売却益に頼る地方財政が、バブル崩壊で財源不足に直面するのは自明である。こうなると、高齢者の年金や社会保障費は、空母建艦に流用する積もりだ。第二の「清国崩壊」と同じ過程を歩むのだろう。

 

(2)「原子力空母4隻の配備が実現すれば、中国海軍の装備は米海軍に匹敵するが、『サウスチャイナ・モーニングポスト』は、『中国海軍には実際の戦闘経験が不足しているという問題がある』と指摘。同時に軍事専門家の『中国軍の総合的な軍事力は戦闘経験の不足によって限定されるものの、空母や艦載機の技術は米軍と匹敵するレベルになるだろう』『米軍と同レベルに達するまで中国は軍事力を増強しなければならない』との見方も紹介している」

(3)「空母増強の背景として、『サウスチャイナ・モーニングポスト』は『中国は海軍力の近代化を早急に進めることが貿易航路の安全確保や公海上の平和維持に必要だと主張してきた』と説明。一方で『日本や米国などの関係国は、こうした中国の主張には懐疑的で、中国が敵対的な姿勢に転換したとみている』と言及した」

無鉄砲な中国の軍拡を抑えるには、中国経済の発展を抑制するしかない。それが、中国国民の幸せにも通じる道である。TPP(環太平洋経済連携協定)に米国が復帰すれば、中国経済を排除できるので、軍拡の道を塞ぐことが可能になる。中国の経済発展を抑えることは、無慈悲に見えるがそうではない。世界の軍事的混乱を事前に抑止する意味で、きわめ利に適った戦略である。戦わずして勝つ。これが、「孫子の兵法」である。