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中国でインフラ投資の資金調達難が起こっている。債券の売れ行きが悪い結果だ。投資家が、債券の安全性に疑念を持ち始めたもの。地方政府の発行する債券が、デフォルト懸念を持たれるという異常な事態に落込んでいる。

 

習近平国家主席が、先の党幹部勉強会で指摘した「システミック・リスク」(金融機関の連鎖倒産)発生への危機感は、すでにインフラ投資の資金調達難に表れている。予断を許さない状況になってきた。

 

『ロイター』(2月26日付)は、「中国、投資家の信頼感低下がインフラ投資を圧迫―発改委」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国の国家発展改革委員会(発改委)は26日、投資家の信頼感低下がインフラ投資計画を圧迫しているとの認識を示した。一部の省は計画されたプロジェクトで急速な落ち込みがみられるという。中国では、インフラプロジェクトは通常、地方機関やその他国家系機関が実行する」

 

中国政府は、投資家の信頼感低下がインフラ投資計画を圧迫していると指摘している。資金調達が困難になっていることを表明したもの。インフラ投資が、財政資金支出でないことに注目すべきだ。債務でインフラ投資をするところに、過剰債務の一端が現れている。一部の省(地方政府)では、景気下支え役のインフラ投資が急速に落込んでいる、と率直に指摘している。

 

(2)「発改委は報告書の中で、製造業界の投資も今年上半期に一定の下押し圧力にさらされる可能性があると指摘。昨年終盤以降、さえない需要や価格低迷を受けて企業利益が圧迫されていることが背景だ。不動産投資については、一部のプロジェクトが2018年以来建設中のため、第1・四半期は比較的急速な伸びを維持するとしつつ、新規着工は減少する可能性があるとした」

 

現在の企業設備投資低下は、10年周期で発生する設備投資循環による落込みである。景気循環論で指摘する「中期循環」の発生が起ったものだ。上半期という短期に終息する性格でない。この点の認識が、中国政府には欠けている。

 

不動産投資は昨年の今頃、大規模な着工をしていた。私は当時、その危険性を指摘しておいた。いよいよ、そのリスクがこれから発生する。不動産開発企業は、資金調達のために住宅在庫を投げ売りせざるを得なくなろう。「住宅暴落」に陥れば、住宅ローン返済困難の続出で信用機構は大きく傷つき、「システミック・リスク」が現実化する恐れが強まる。

 

日銀の黒田総裁が、国会で中国経済について「急減速論」に触れている。

 

『ロイター』(2月26日付)は、「中国経済は『かなり減速』、年後半に持ち直しへ=黒田日銀総裁」と題する記事を掲載した。

 

(3)「日銀の黒田東彦総裁は26日午前の衆院財務金融委員会で、中国経済について昨年後半以降、『かなり減速している』との認識を示した。もっとも、中国当局の政策対応によって年後半には持ち直すとの見通しを語った。今井雅人委員(立憲)への答弁。総裁は、中国経済が減速している背景について、政府による過剰債務の圧縮と米中貿易摩擦が中国企業に影響を与えているとの見方を示した。もっとも、『中国当局はすでに財政政策、金融政策において拡大策、刺激策をとっている』と述べ、年後半には景気は持ち直し政府が示している6%前半の成長率になるのではないかと語った」

 

日銀総裁が、中国経済について発言するのは珍しい。「かなり減速している」と認めている。年後半に持ち直すとの見通しを語っているが、「外交辞令」と読むべきだろう。率直な見方を発言したならば、外交摩擦に発展する。現在の中国経済は、設備投資循環と在庫循環が重なっている。「短期回復」はあり得ない。