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米中貿易協議において水面下で注目されているのは、中国ファーウェイ副会長孟氏の身柄問題である。米国トランプ大統領は、中国揺さぶりに使っているが万一、孟氏を釈放する事態となると、トランプ氏は一挙に政治的にも不利な立場に追い込まれる。通商問題と詐欺事件は別であるからだ。

 

『ロイター』(2月27日付)は、「米司法省、中国ファーウェイCFO起訴でHSBCの内部調査を活用」と題する記事を掲載した。

 

米国では、金融取引でウソの説明をすることが罰則の対象になっている。中国人の場合、「ウソが当たり前の世界」だから、ファーウェイ副会長がなぜ逮捕されたのか納得がいかぬはずである。商慣習の違いと言えばそれまでだが、中国にとっては米国ビジネスの厳しさが身にしみているであろう。

 

(1)「英金融大手HSBCホールディングが中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)がイランとの取引で使ったとされる関係会社スカイコムについて内部調査を行った結果、ファーウェイはスカイコム株を売却したと偽って報告してからも長年にわたり密接な関係を維持したことが判明した。ロイターが資料で確認した」

 

(2)「孟CFOは、HSBCなどの銀行に対し、イランで事業を行うためのダミー会社とされるスカイコムとの関係について事実を偽って伝えた疑いが持たれている。ファーウェイは、スカイコムがイランでのビジネスパートナーだと主張してきた。米政府はイランでの事業を隠すために使った非公式の子会社だと認定している。司法省はイラン制裁違反や銀行詐欺、通信詐欺で孟CFOとファーウェイ、スカイコムを起訴している」

 

ロイター通信記者が、資料を確認しており、ファーウェイ副会長がウソの説明をしたことが書き残されている以上、犯罪立証は困難でなさそうだ。有罪となれば、20年以上の禁固刑に処せられると言われている。米国の「ウソ」に対する厳しさが分る

 

(3)「米当局は、ファーウェイがスカイコムを使ってイランに米国製品や技術を違法に供給し、国際銀行システムを介してイランから代金を得たと主張している。HSBCなどの銀行はスカイコムに関する1億ドル以上の決済を米国内で行ったとされており、米制裁に違反した可能性がある」

 

 

資料によると、スカイコム株売却を報告してからかなり後も、ファーウェイがスカイコムとカニキュラ両社の経営権を握っていたと示唆するような関係性があったことが調査で明らかになっている。また、カニキュラによるスカイコム買収に対してファーウェイが資金を融通したことも発覚。

 

こういった関係があったにもかかわらず、孟CFOはHSBCの幹部に対するプレゼンテーションで、スカイコムはイランでの「ビジネスパートナー」だと説明。司法省起訴状では、このプレゼンテーションは「多くの事実を曲げて伝えていた」とされている。起訴状によると、HSBCは17年頃に、ファーウェイに取引関係を打ち切ると伝えている。HSBCが、捜査に全面協力していることが動かぬ証拠固めになっている。

 

米国務省のロバート・ストレイヤー次官補代理(サイバー・国際通信情報政策担当)は26日、ファーウェイが対イラン制裁違反や知的財産権窃取の疑いがあり、「同社がだましや詐欺を行ってきたことは周知の通りだ」とした。米国政府は、欧州企業が次世代通信網「5G」を導入しないよう、欧州各国を説得中である。こういう重要な時期に、仮にトランプ氏がファーウェイ副会長事件に介入するような事態が起ると、「5G」問題まで波及するという大問題になろう。