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1月の新規融資が増えて、2月の製造業景況感に変化があるかと注目されていた。中国国家統計局調査の製造業PMI(購買担当者景気指数)はさらに悪化した。1月の融資増は、滞貨金融の資金手当に使われたと見られる。

 

中国経済は、在庫調整と設備調整の二重調整過程にある。人間の病気に喩えれば、胃腸(在庫調整)と心臓(設備調整)が弱っている。そこへ、米中貿易戦争という荷物を背負わされた。こういう構図と見られる。

 

『ロイター』(2月28日付)は、「中国製造業PMI 2月は3カ月連続で50割れ 非製造業は50超維持」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国国家統計局が発表した2月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.2と前月の49.5から低下し、2016年2月以来3年ぶりの低水準となった。業況改善・悪化の分かれ目となる50を3カ月連続で下回った。国内外の需要低迷が引き続き経済に打撃を与えていることが示された。製造業PMIは市場予想(49.5)も下回った」

 

国家統計局調べの製造業PMIは、調査対象で大企業のウエイトが高い。その点で、後から発表される民間調査の製造業PMIよりもやや高い数値が出る。それでも49.2と悪化している。在庫調整の影響が多方面に及んでいる結果であろう。

 

(2)「中国の経済成長率は2018年に約30年ぶりの低水準に減速した。アナリストは、景気刺激策の効果が表れるまで、今後数カ月は景気が一段と減速するとみている。同時に発表された2月の非製造業PMIは54.3で、前月の54.7から低下したものの、節目の50を大きく上回る水準を維持した。非製造業PMIは前月まで2カ月連続で上昇していた。急速に成長する非製造業セクターは中国経済の半分以上を占め、製造業セクターの減速による影響軽減に寄与してきた。しかし、不動産市場の冷え込みや自動車、携帯電話といった製品への消費者需要の低下を背景に昨年終盤に同セクターは鈍化した。景気減速で消費者が支出に慎重になる中、アナリストは今年も鈍化が進むとみている」

 

景気刺激策と言っても、インフラ投資は地方政府の資金調達難で工事そのものが遅れている。所得税の減税効果は所得減の補填程度であろう。家電の補助金は、21年までの3年間もある。今、慌てて買う必要もないのだ。要するに、八方ふさがりである。冒頭で指摘したように、胃腸と心臓が同時に弱っている経済である以上、回復までの時間が「数ヶ月程度」で済むはずがないであろう。

 

中国では、景気循環という認識がゼロである。経済は、政府のコントロールでいかようにも動かせると思い込んできた。この思い上がりへの痛烈なしっぺ返しが、起っていると見るべきだろう。過去、政府が経済計画によって「健全」な景気循環を抑制した。強引な需要強化で表面化させなかったのである。それが、経済の自然な調整を妨害したので、膨大な債務を抱えて身動きできなくさせている。景気循環は、行き過ぎた景気の調節弁であり休息期でもある。自然の摂理を無視し抑圧した「お返し」が始ったと見るべきだろう。

 

『ロイター』(2月28日付)は、「USTR、中国製品の関税引き上げ延期へ『追って通知するまで』」と題する記事を掲載した。

 

中国経済は、完全に米国の掌にある。USTR(米通商代表部)から、関税延期は「追って通知するまで」と軽くあしらわれている。誇り高い中国が、この通知を有り難がる状況まで追い詰められたのだ。習近平氏の奢りと誤算が招いた無残な結果である。

 

(3)「米通商代表部(USTR)は27日、中国からの輸入品に対する関税引き上げを「追って通知するまで」正式に延期する方針を発表した。トランプ大統領は24日、米中通商協議が進展しているとして、3月1日に予定されていた中国製品に対する関税の引き上げを延期すると表明した。USTRは声明で「大統領の指示に沿い、USTRは予定されていた関税引き上げを追って通知するまで延期する方針を今週の連邦公報で発表する」とした」

 

徹底的に戦うと元気が良かった習近平氏は、自らの見通しが間違ったことを悔いているであろう。