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ファーウェイ(華為技術)の孟副会長は昨年12月1日、カナダで逮捕(現在、保釈中)されている。カナダ司法省は3月1日、米国引き渡しの審理開始を決定した。米国側の提出した証拠などを基に引き渡しの是非を判断する方針だ。孟氏は3月6日に出廷する。審理の長期化が予想されている。

 

カナダ司法省は、1日発表した声明文の冒頭で「カナダは法の支配の国だ」と述べ、政治的な意図がないことを強調した。カナダと米国が結んだ犯罪人引き渡し条約に基づいて検討した結果、「手続きを進めるための要件は満たされており、十分な証拠があると確信した」としている。一方、中国外務省の陸慷報道局長は2日、「中国国民の合法的な権利に対する深刻な侵犯であり、深刻な政治的事件だ」とカナダ政府を非難する声明を発表した。

 

この事件は、すでに『ロイター』(2月26日付け)が、「米司法省、中国ファーウェイCFO起訴でHSBCの内部調査を活用」と題する記事で詳細な証拠を掲載していろ。本欄でも取り上げた。証拠が完全に揃っている点で、ファーウェイはきわめて不利である。

 

被疑者の孟晩舟氏は、米国の捜査を察知して2017年以降、二人の子どもの留学する米国への入国を回避してきた。このことに、孟氏の行動に関わる「犯罪性」を示唆している。母親が、子どもの留学する国へ入国しないこと自体、きわめて不自然である。本人が犯罪意識を持っていたことを証明するもの。この一事で「クロ」という印象が強まるだろう。

 

『ロイター』(3月1日付け)は、「カナダ、ファーウェイ幹部引き渡し巡る審理承認へ、専門家が見解」と題する記事を掲載した。

 

この記事は、カナダ司法省が審理を正式決定する前に、専門家の意見を紹介しているものだ。審理にあたって法的に何らの「瑕疵」もないという結論である。

 

(1)「カナダ当局は3月1日、中国の通信機器大手であるファーウェイの孟晩舟最高財務責任者(CFO)を巡り、身柄引き渡しに関する審理を開くことができると表明するとみられている。複数の法律専門家がこうした見解を明らかにした」

 

(2)「カナダと中国の関係が一段と悪化しそうだ。警察当局は昨年12月、米国の要請によりバンクーバーで孟CFOの身柄を拘束。1月遅くに米司法省は米国の対イラン制裁違反で共謀したとの罪でファーウェイと同CFOを訴追した。カナダ当局は1日真夜中(2日0500GMT=日本時間同日午後2時)までに、審理を開く権限を付与するかどうかを公表することになっている」

 

(3)「付与されればブリティッシュコロンビア州の裁判所は引き渡しに関する正式な審理を開始できる。アルバータ大学のジョアンナ・ハリントン教授(国際人権法)は電話で、当局がゴーサインを出す可能性が最も高いと指摘。『ゴーサインを出さない理由が見当たらない。米国とカナダは身柄引き渡しを巡る関係が長年続いている』と語った

 

中国は、2人のカナダ人を不法拘留して孟被疑者の釈放へ向け圧力を掛けている。中国のように司法が、政治の支配下にある国と異なり、カナダは司法の完全な独立を保障されている国だ。こういう先進国のルールを理解できず、中国流のやり方をカナダに当てはめようとすれば、世界の笑いものになる。中国は、自らの前近代性を世界にさらけ出して恥をかくだけであろう。

 

中国外務省の陸慷報道局長は2日、「中国国民の合法的な権利に対する深刻な侵犯であり、深刻な政治的事件だ」とカナダ政府を非難する声明を発表している。こういう声明を出す前に米国司法省が公表している証拠について精査すべきである。それもしないで、抗議声明を出しても何らの説得力を持たないであろう。法治国のカナダと人縁国である中国との間に横たわる、法に対する認識の違いを浮き彫りにするだけだ。恥ずかしいことは、しないことが賢明である。