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これまで、飛ぶ鳥を落とす勢いであったIT関連業界が失速している。大学卒業の若者は、競ってベンチャー企業を立ち上げると、必ずと言って良いほど支援者が現れたものだ。それが今やウソのように消えてしまった。

 

例えば、EV(電気自動車)の起業計画を出せば、複数の地方政府がさっと資金や土地の提供など、至れり尽くせりのバックアップ体制を組んで提携を申し込んできたものだ。今は、そういう夢のような話を聞くこともない。すべては、夢であったのだ。

 

理由は、バブル経済の崩壊である。従来の潤沢な資金環境が一変したこと。これが、個人消費を直撃しており、生活にとって必需品でない限り支出抑制が始ったのであろう。バブル現象は、社会的病理である。夢遊病者のごとく経済的に舞い上がる社会である。それは30年前、日本の平成バブルで経験済みだ。中国は現在、「歴史は繰り返す」という経済現象の真実を味わっているだろう。

 

『ロイター』(2月26日付け)は、「中国IT業界に採用氷河期、中間層の若者を直撃」と題する記事を掲載した。

 

(1)「かつて隆盛を誇ったテクノロジー業界で解雇が相次いで報じられるなど、中国では雇用が頭の痛い問題になりつつある。中国政府は、賃金の伸びや雇用創出が頭打ちとなっている国有大企業や伝統的な産業に代わる存在として、スタートアップ企業に期待を寄せてきた。だがもし800万人もの大卒生が、採用がストップしたイノベーション経済に放出されれば、政府としても対応を考えるべきだろう」

 


日本のバブル崩壊後、「就職氷河期」で苦しい思いをさせられた人達は多いはずだ。それが現在、中国で起っていると見れば間違いない。気の毒だが、バブル崩壊後に必ず襲う現象である。それ以前に現れた夢の反動である。

 

(2)「チャイナ・ベージュブック(CBB)インターナショナルの12月調査によると、四半期と通年ベースで、採用が全業種で減少。中でも急減したのが、サービス業と小売業だった。いわゆる『ニュー・エコノミー』を巡る、暗いニュースは、中国政府にとって特に大きな懸念材料だ。同国で拡大する中間所得者層の若年世代に対して偏った影響が出るためだ。例えば、一度は自転車シェアリングのトップに立った『共享単車(ofo)』は資金が枯渇しており、ロイターは12月、同社が破産申告を検討していると報じた。ここにきて、時価総額650億ドル(約7.1兆円)の配車サービス大手滴滴出行(DiDi)は、従業員の15%に上る2000人のリストラを発表。電子商取引大手、京東商城(JDドットコム)(JD.O)では、幹部の10人に1人を解雇したと地元メディアは報じている」 

 

中国のサービス業と小売業で採用難が顕著である。バブル崩壊後の第一波が襲っていると見られる。昨秋、高額商品の売れ行きが落ちたと報じられていたから、本格的な消費節減の動きが始ったのであろう。これは、バブルで高騰した住宅を買わされた庶民が、住宅ローンの支払いで生活が窮していることの反映である。

 

バブル経済とは、破裂してみればすべてが「元の木阿弥」である。虚しいことだが、習近平氏はそれに気付かず、一時的なGDP押し上げ効果に酔っていた。その挙げ句、「世界覇権を握る」とまで言い出した。二日酔いのなせる業だ。

 

(3)「規模の小さい企業は、より大きな打撃を受けている。求人サイトの智招聘に掲載されているインターネット関連の求人数は、昨年の第3・四半期に前年同期比51%も減った。また昨年末に向け、検索エンジン上で『解雇』関連の検索数が急増した、と調査会社ギャブカル・ドラゴノミクスのエルナン・クイ氏は指摘する。政府の呼びかけに応えて起業した多くの若者が、経済的窮地に追い込まれている。ベンチャーキャピタル業界の調査会社清科集団によると、1月のベンチャーキャピタルやプライベート・エクィティによる投資額は29億元(約479億円)と、前年同期比68%減となった」

 

求人サイトに掲載されたインターネット関連求人は、昨年7~9月が前年比で半減。凄い減り方である。文字通り「就職氷河期」だ。検索エンジンに「解雇」も検索数が増えている。1月のVC(ベンチャーキャピタル)投資額は、前年同期比68%減。もはや、言う言葉もないほどの惨状である。典型的なバブル崩壊現象である。