a0960_006640_m
   

米国は、これまで中国による人民元相場の操作に強い警戒観を持ってきた。過去、常習犯であったからだ。対韓国の自由貿易協定改定の際、「為替条項」を強引に入れさせた。日本に対しても時々、「円相場は安すぎる」と批判を漏らす。日本では、マクロ経済政策による為替相場への影響ゆえに、為替操作でないと説明し納得させている。米国の指す「為替操作」とは直接、為替相場を安くするために市場介入することである。

 

『ロイター』(3月4日付け)は、「米中協議、人民元巡る条項なしなら『画竜点睛を欠く』」と題するコラムを掲載した。

 

(1)「そろそろ人民元に関する取り決めを導入すべきときだ。米国は、中国政府による過去の為替操作で損害を被っており、今後結ぶ通商合意に通貨政策を盛り込むことは名案だろう。世界第2位の中国経済は、押し下げられた人民元相場から受ける恩恵が以前より減ったとはいえ、再び元安誘導に乗り出す可能性も考えられなくはない」

 

中国の為替政策は、一貫して「発展途上国スタイル」である。資本規制は行なう。為替相場も自由変動相場制でなく、管理型変動相場制である。これは、明らかに当局の管理意識を表明したものだ。考えてみれば、GDP世界2位の大国が、為替相場すら市場メカニズムに任せられない。こういう「臆病国家」なのだ。それが、「世界覇権を狙う」などと季節外れの発言をするから、米国を怒らせるのであろう。大言壮語が身に付いてしまっているのだ。

 

(2)「ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、米交渉団は、中国による通貨切り下げを防止しようと取り組んでいると述べた。中国人民銀行(中央銀行)は最近では、本格的な元安誘導は行っていない。米連邦準備理事会による利上げを受けて資本が国外に流出しないよう、時には元高誘導を行ったほどだ。しかし2014年ごろまでは、中国政府は人民元相場を押し下げる操作を大規模に行っていた。相場を低く抑えて輸出を促進するため、営業日ごとに10~20億ドル分もの外貨を買い入れていた」

 

中国には、輸出が苦しくなると人民元相場を操作する「悪い癖」がある。イカサマをやるのだ。こういう操作を禁じるには、現在の管理型変動相場制でなく、他国並みの自由変動相場制に移行させるべきである。IMFのSDRに昇格する際、自由変動相場制に移行することを約束していた経緯がある。米国の腕力で、自由変動相場制へ強引に持ち込めば、人民元相場操作の機会は減るに違いない。これは、私の年来の主張でもある。

 

(3)「これにより、2008年の経常黒字は国内総生産(GDP)の9%という驚くべき数字に達し、2014年の外貨準備高も4兆ドル(約448兆円)に接近した。中国がけん引した世界規模の為替操作により、2008年に金融危機が起きて以降、100万を超える雇用が米国でわれたと、ピーターソン国際経済研究所のフレッド・バーグステン氏とジョセフ・ガニオン氏は推計している」

 

このパラグラフの経常黒字と外貨準備高のデーターが不確かであったので、私が訂正しておいた。原文と数字が異なるのはそのためだ。筆者が思い違いしている。ただ、内容自体に間違いない。中国が、大規模な為替介入して外貨準備高を増やした理由は、「見栄」にあったと思われる。これを武器に、中国の経済外交を行って発展途上国を引き込む道具に使った。これが、「一帯一路」計画の舞台装置の役割を果たした。だが、こうした化粧した外貨準備高は、現在3兆ドル強にまで減っている。今年は、経常赤字に転落必至の状況で、国際競争力は著しく低下している。

 

今回、米国による中国経済の構造改革要求は、長い目で見れば中国の利益になるし、世界経済の順当な発展に寄与するところ大である。日本もそうだったが、中国も米国のテコがなければ構造改革ができないのは残念である。米国は、世界最大の市場であり、他国の輸出市場として開放している。米国の言い分は、自国市場へアクセスする以上、WTOルールを厳守せよと要求しているものだ。これは、米国の主張が正しい。中国のように「汚い手」を使った輸出はお断り。これが、米国の本音である。誰もこの点で、米国は横暴と非難できないであろう。