a0005_000022_m
   

北朝鮮の核放棄問題は一歩進んだが、米国は「まだまだ隠し施設がある」と主張して、物別れに終わった。ここで、米朝両国の動きがどうであったかを見ておきたい。米国は、すべての核関連情報の提示を求めている。北朝鮮は、まだ十分に米朝間の信頼関係が醸成されていないから情報を出せないという前置きをした。ところが、北の経済制裁解除は大幅であり、米国は話が違うと言って席を立った、という経緯である。

 

北朝鮮側の説明は、深夜(2月28日)行なわれた。この情報は、韓国紙『ハンギョレ新聞 

電子版』(3月4日)に掲載されたので、これに基づき交渉場面を説明したい。

 

北朝鮮の言い分では、従来と異なり思い切った提案をした。その提案とは、寧辺(ヨンビョン)の核団地全体、その中にあるすべてのプルトニウム施設やすべてのウラン施設を含むすべての核施設を、丸ごと米国専門家の立ち会いのもと、永久かつ不可逆的に廃棄することに対する(提案)ものだ。また、今回の会談で、米国の懸念を減らすため、核実験と長距離ロケット発射を永久に中止するという確約も文書の形で提供する意向も明らかにした。

 

北朝鮮は、信頼構築の段階を経れば、今後、非核化過程はさらに早く前進できるだろうと説明した。しかし、会談途中で米国側は寧辺の核施設の廃棄措置のほかにもう一つを追加すべきだと主張した。米国が北朝鮮の提案を受け入れる準備ができていないことが明白になったと主張した。

 

ここでは、米朝が「隠れ施設」の存在をめぐって論争した形跡が見られる。率直に言えば、北朝鮮は米国が「隠れ施設」の存在を知っていたことに驚いたのが真相だろう。それにも関わらず、大幅は制裁解除要求を出してしまった。これは、北朝鮮の勇み足であろう。ここで制裁解除問題を出さず、「隠れ施設」について、次回の協議で議論したい、程度に止めておけば、「決裂」でなく「継続」になったと見られる。正恩氏が、ショックで体調を崩したと報じられたのには理由がある。

 

米国側にも疑問がある。その「隠れ施設」について、事前に米朝間の実務レベル協議で話題にならなかったのか。北朝鮮は、実務レベルでも情報を提供しなかったというので、米国もあえて出さなかったのだろう。正恩氏は、何もかも「トップ会談」に持ち込んで、トランプ氏と勝負しようとしたのだろう。若武者が、敵方総大将に一騎打ちを願い出た構図だ。

 

米朝首脳会談は、若武者が老練な総大将にいなされた恰好である。正恩氏が、再会談を申入れれば、話が継続する雰囲気である。互いに非難し合っているわけでない。文字通り、「建設的な話し合い」であったからだ。


ここで、問題の「隠れ施設」とはなにかが気になる。

 

『ロイター』(3月5日付け)は、「北朝鮮寧辺の原子炉、昨年12月から停止か」と題する記事を掲載した。

 

国際原子力機関(IAEA)は4日、北朝鮮の寧辺の核施設にある原子炉が過去3カ月間、停止しているもようだと指摘した。理由は示していない。

 

(1)「寧辺にある5メガワットの原子炉は、核兵器用のプルトニウムの大半を供給しているとみられる。寧辺の核施設は、前週の米朝首脳会談でも非核化問題で焦点となっていた。北朝鮮は2009年にIAEA査察団を国外退去させた。以来、IAEAは主に衛星画像を使って北朝鮮の核活動を監視している」

 

(2)「衛星画像を分析している一部民間アナリストは、老朽化している原子炉に技術的な問題が起こっていると指摘している。IAEAの天野之弥事務局長は理事会で、『5メガワットの原子炉について、2018年12月初旬以降、稼動している兆候がみられない』と述べ、使用済み核燃料からプルトニウムを抽出する施設では再処理作業が行われている兆候がないと付け加えた。ただ、ウラン濃縮施設は稼動しているもようで、実験用軽水炉の建設作業も続いていると指摘。報告を受けている、ウラン濃縮施設の遠心分離機の稼動の兆候についても監視を続けるとした」

 

5メガワットの原子炉は、2018年12月初旬以降、稼動している兆候がみられない。ただ、ウラン濃縮施設は稼動しているもようで、実験用軽水炉の建設作業も続いていると指摘している。「隠れ施設」とは、このウラン濃縮施設を指しているようだ。北朝鮮が、本当に核放棄の意思があれば、この施設の稼働を取り止めるはず。北朝鮮は、そこまで決断できなかったことが、「信頼構築」不十分という意味かも知れない。ウラン濃縮施設が稼働しているとなれば、この扱いが次の焦点になる。