ムシトリナデシコ
   


現在、開催中の全人代における中国当局の発言に、市場は最大の関心を寄せている。李首相は金融緩和しないと発言しているが、1月の貸付け増加ぶりから見て、信用できないと警戒している。

 

そういう疑問の根拠は次の発言にもある。

 

中国の李克強首相が5日開幕の全国人民代表大会(全人代)で行った政府活動報告で、住宅は投機対象ではないと呼び掛けていた習近平国家主席の発言が盛り込まれなかった。中国が住宅市場規制の緩和にオープンな姿勢に転じた可能性を示唆した。習氏は2017年の演説で「住宅は住むもので投機の対象ではない」との考えを示した後、この方針が定着していた。その文言が削除されたことで中国政府が景気減速への対応に乗り出す中、不動産規制の緩和を容認するとの観測が今後広がりそうだ。以上は、『ブルームバーグ』(3月5日付け)が報じた。

 

不動産バブルに火をつけるには、金融緩和が必要である。そこで、中国政府は苦し紛れに「禁断の手」を使うのでないかと警戒されている。

 

『ブルームバーグ』(3月6日付け)は、「19年は再レバレッジの年に UBS 景気対策で中国の債務増予想」と題する記事を掲載した。

 

スイスのUBSグループが2019年の中国経済は再び債務増に見舞われそうだと指摘した。景気減速への対応が影響する。

 

(1)「UBSの中国経済調査責任者、汪涛氏(香港在勤)はこのほどまとめたリポートで、中国の債務総額の対国内総生産(GDP)比が今年、再び上昇するとの見通しを示した。17年は横ばい、18年は低下していた。1月の新規融資は市場予想を上回り、例年に比べて伸びが大きくなった。公式統計で最も幅広い与信動向を示す中国経済のファイナンス規模の伸びは19年に12%前後と、昨年の9.8%から持ち直すと汪氏が分析。一方、インフレ率は鈍化するとみられ、今年の名目GDP成長率は約8%と9.7%から減速する見通しだという。この結果、債務の対GDP比は上昇することになる」

 

金融市場が、金融緩和を歓迎せず警戒するとは、中国経済が異常事態に突入している証拠である。糖尿病患者に甘い物を食べさせると危険である、という理屈である。1月の新規融資は市場予想を上回り、例年に比べて伸びが大きくなったことが理由である。これについては、2月の春節を控えて潤沢な資金供給をしただけ、という当局の説明もある。実際には、2~3月の金融統計を見なければならないが、市場から警戒の声が出ていることに注目すべきだろう。

 


(2)「汪氏は、「再レバレッジは短期的な成長率と株式市場にはプラスに働きそうだが、レバレッジと金融セクターをめぐるリスク抑制という中国の中期目標に関する投資家の懸念は高まる恐れがある」と指摘した」

 

再レバレッジ(負債依存)は、目先は資産価格(株価や不動産)を押上げるが自殺行為である。金融緩和しても、実物投資である設備投資に資金が回る可能性はゼロに近い。予想収益率が下がっている以上、設備投資に踏み切る見込みはないのだ。となれば、余った資金はどこへ流れるのか。株式や住宅の投機資金に化けるだけである。

 

『ロイター』(3月6日付)は、「出現するか中国の 「灰色のサイ」 試される緩和強化の効果」と題する記事を掲載した。

 

(3)「2019年の中国の金融政策方針では、18年の「穏健中立」から「中立」が削除され、「合理的で潤沢な流動性供給」が追加された。全人代初日の5日の演説で李首相は、金融政策について「引き締め過ぎず、緩め過ぎないように維持する」と表明した。だが、最近の金融データは、金融緩和が「穏健」を逸脱し、大胆な緩和に転じたことを示唆する。金融システムから経済に供給されたネット資金量を示す「社会融資総量」は、今年1月に4兆6353億人民元と前年比51%の増加となった。同総量の内数の「新規人民元建て融資」とともに過去最高を記録した。融資の内訳では、企業向け貸出比率が1月に前年比43.3%と大幅に拡大した」

 

 世界の金融メディアが、揃ってここまで警戒し始めている以上、中国政府は不用意に金融緩和に踏み切ると、一斉に「株式は売り時期」と書かれることは避けられなくなった。中国政府にとっては想像もしていなかった「お目付役」が登場したことになる。中国経済への警戒論がこれほど高まると、習近平氏と言えでも手出しができなくなった。