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年初来、急騰を演じた上海株式市場は8日、136.56ポイント、4.4%の急落になった。3000を割って2969.86で取引を終えた。不景気で株価が上がるのか、外資の思惑買いがリードし、これに中国の大衆が提灯付けの買いを入れた結果だ。最初に火を付けた、外資は売り抜けて無傷だろうが、地元の大衆が「負けくじ」を引かされた。

 

『大紀元』(3月4日付け)は、「中国株急上昇、官製強気相場に大株主らが相次いで売却」と題する記事を掲載した。

 

(1)「経済の失速が一段と鮮明になっているなか、中国の株式市場は2月に入って以来、主要株価指数である上海総合と深圳が急上昇し、強気相場に入った。個人投資家が株価のさらなる上昇を見込んで相次いで買い注文を出す一方で、上場企業の大株主などは強気相場を利用して保有株式を売却している。2月単月で、中国の上海総合指数が約14%、深圳は約20.75%上昇した。上海総合は3月4日、昨年6月以降、約8カ月ぶりに3000台を回復した」

 

上海総合は3月4日に8ヶ月ぶりに3000を突破し、8日に3000割れで「3日天下」に終わった。GDPを12%も水増ししている国の株価が、ましてや不況期に上がる理由がない。ただ、後のパラグラフで取り上げているように、政府が誘導している。5日は全人代の開会式。「祝儀相場」の積もりだろうが、とんでもない。気息奄々の中国経済を祝賀する理由がないのだ。

 

(2)「株価の急騰は2015年の株価の暴落以降、初めてのことだ。最大の原因は、中国当局による官製相場にある。中国国内の金融アナリスト任中道氏は、中国株の急上昇について分析した。任氏によると、中国人民銀行(中央銀行)は1月に、市中銀行の預金準備率を1%引き下げたうえ、今後の金融政策について緩和的姿勢を示した。「中国当局が、信用拡大および金融緩和の方針を示すたびに、中国の不動産市場と株式市場はそれに反応して、強気相場になる」。中国当局は1月末から、株式市場について好材料となる政策方針に言及し、株価相場の上昇を誘導した」

 

預金準備率1%引下げによる金融緩和分は、実物投資に向かわず株式市場へ流されている。株式の信用取引ではルーズな貸付が行なわれているのだ。これで株価を押上げ、その機会を利用して大株主に株式を売却させた。大株主救済の金融緩和であった。共産党政権の許しがたい行為である。中国人評論家は、「国策相場に売りなし」と言っているが、大衆投資家が上手く利用され、大株主の持ち株を高値で肩代わりした形だ。

 

(3)「中国メディア『新京報』(1月28日付)によると、中国の銀行業と保険業の監督当局、銀行保険監督管理委員会(銀保監会)の肖遠企・報道官は、英紙『フィナンシャル・タイムズ』の取材に対して、当局は保険企業などの機関投資家による上場企業株式の保有増加を支持すると発言した。当局は年金投資を臭わせ、個人投資家が株価のさらなる上昇を見込んで買い注文を出す環境を整えた。一方で、上場企業の大株主などは、強気相場を利用して保有株式を売却している」

 

2015年当時、『人民日報』まで動員して、株価はまだ上がるという記事を掲載して、後に大問題となった。今回は、その轍を踏まぬようにさらりと一般投資家の買い意欲を誘い出すような戦術である。この発言であれば、単なる方針説明であり、受け取った側に責任があるように仕組まれている。巧妙な株価操作である。上場企業の大株主などは、強気相場を利用して保有株式を売却している。上場企業の大株主であれば、企業の実情は分りきっている。PER(株価収益率)が飛び抜けて跳ね上がっていたのだろう。

 

(4)「現在、場外配資(外部信用取引)という信用取引の拡大が、株価急上昇の一因であると指摘されている。一部の個人投資家は、融資会社から資金を借り、高いレバレッジをかけて買い注文を増やしている。香港紙『経済日報』2月末によると、場外配資を提供する融資会社の審査条件は緩い。同紙の記者の調査では、同サービスを利用する場合、実名を名乗ることもなく、自らの電話番号だけを告げれば、レバレッジ10倍の資金を借りられるという」

 

中国株が暴落した2015年の前年、場外配資による信用取引も急増していた。今年も2014年と同様にレバレッジ取引が急拡大すれば、2015年のような暴落が生じる可能性が高い。中国株には寄りつかぬことが賢明だ。