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中国が、実質GDPで約2%ポイントのゲタを履かせている。その結果、現在のGDPは実際よりも12%も水ぶくれしている。この記事は、本欄でも取り上げて読者から注目していただいた。もう一度、掲載する。

 

「米ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所は7日、中国経済は公式統計を約12%下回り、近年は実質成長率が毎年約2ポイント水増しされてきたとする論文を発表した。中国の公式統計に対する根強い懐疑論を改めて裏付けた」。『フィナンシャル・タイムズ』(3月8日付け)

 

中国のGDP統計がウソであれば、どうやって真実の姿を捉えるのか。海外の専門家はいろいろと知恵を絞って対応している。それを取り上げた。

 



『ロイター』(3月12日付け)は、「衛星画像や旅行予約、中国統計の穴どう埋めるか」と題する記事を掲載した。

 

中国政府が発表する経済統計の正確性には長年にわたり疑念が持たれており、外国人投資家やアナリストは経済実態を把握するため、各々独自の方法を編み出している。利用するのは衛星画像から運輸データ、電力消費量、旅行予約サイトまで幅広い。「多くの人々は公式統計だけを見るのではなく、成長率を代替するデータを探そうとしている」と語る。

 

しかし、何とも厄介な話である。ウソ統計を発表するメリットは何かだ。実情を知られると都合の悪いことがあるのだろう。中国の弱点を握られることを恐れている。それは、外国に対してか、あるいは自国国民に向けて虚勢を張る必要があるからか。いずれにしても「面倒くさい国家」であることに変わりない。

 

(1)「公式統計によると、中国の2018年の国内総生産(GDP)成長率は6.6%で、同国では過去28年間で最低だ。米ジョーンズトレーディングの首席市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏は、『GDPには常に疑問がつきまとう』と指摘。『大半の米国人投資家はこの数字を少し割り引く。数字がXだとすると、本当の数字は“X引く何か”ではないかと考える。それに絶対値ではなく数字の基調を見極めようとする』と話した」

 

本当のGDPの数字は、「X引く何か」であることである。冒頭に取り上げた、米ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所は、その謎を解いてくれた。毎年、2%ポイントの上乗せをしているという。

 

(2)「UBSアセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ピーター・バイ氏は、データ数値にフィルターをかける必要性を強調する。バイ氏が消費者需要を見極めるために活用するのは、旅行予約サイトや、中国人観光客を相手にする化粧品・食品会社による状況説明だ」

 

ここでは、旅行予約サイトや、中国人観光客を相手にする化粧品・食品会社の売上を参考にするという。これは個人消費の動向把握である。

 

(3)「GAMインベストメント・マネジメント(チューリヒ)のポートフォリオマネジャー、ジャン・シー・コーテシ氏は、サンフランシスコのスペースノウ社が開発した中国衛星製造業指数SKI-CSMI-INDEXを注視している。この指数は衛星画像とアルゴリズムを駆使して中国の工業施設を分析し、製造業活動の活発度を測っている」

 

衛星画像で夜の明るさで生産活動を見るというもの。

 


(4)「欧州資産運用会社アムンディのシニアエコノミスト、クィンウェイ・ワン氏は、貨物・乗客輸送のデータと建設中の事務所スペース、電力消費量を組み合わせた社内モデルを利用している。しかし多くのアナリストにとって、現場を訪れるのに勝る分析手法はないようだ。4Dインフラストラクチャのグローバル・ポートフォリオ・マネジャー、サラ・ショー氏は、「北京をぶらつくとどこも満員で、レストランにも入れないし電車にも乗れない。経済状態がまだ割と大丈夫な証拠だろう」と語った」

 

貨物・乗客輸送のデータと建設中の事務所スペース、電力消費量を組み合わせた社内モデルをつくっている。これは、かつて李克強首相が、省長時代に編み出した「貨物輸送量・電力消費量・通貨発行高」に最も近いようだ。私の一押しは、マネーサプライ(M2)である。銀行の信用創造能力を見る上で最適。金融理論にマッチしている。

 

メルマガ34号 「文政権、労組と結託し南北統一準備、反日をテコに使う危険性」が、下記の『マネー・ボイス』で紹介されました。ご覧下さい。

https://www.mag2.com/p/money/646458