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けさ、発行(有料)しました。よろしくお願い申し上げます。

 

零落する地方産業の実態

文政権の政策が最低最悪

帰農者急増は不況の前兆

 

韓国経済の底流では、地殻変動が起り始めています。韓国政府は、原因が大幅な最低賃金の引上げにあることを知っているはずです。その大幅最低賃金の引上げ幅は、2年間(2018~19年)で約30%になります。その引上げ幅を修正すれば、問題は解決するのです。しかし、文政権の支持基盤は労組です。労組との関係悪化を回避する目的で、南北交流事業を突破口に景気回復への道を探ったのです。その「離れ業」は、米朝首脳会談の失敗で水泡に帰しました。ここに、韓国経済は回復への切り札を失なったのです。

 

タイトルの「失業者の帰農が暗示、韓国経済崩壊へカウント・ダウン」は、読者の興味をかき立てる「営業用」ではありません。昨年から、農業就業者が増えたことは、都市部で失業してやむなく出身地へ帰らざるを得なくなった証明です。経済用語では、こういう状態を「偽装失業」「不完全就業」と呼びます。日本では、1960年代からの高度経済成長期に「死語」となりました。約60年前のことです。

 



韓国では「帰農者」の増加が、就業率を高めるという皮肉な結果を招いています。正確には、「不完全就業者」の増加と呼ぶべきです。韓国統計庁は、就業者が増加したと発表しています。実態は逆であり、雇用状態が悪化していると判断すべきなのです。

 

先進国では、自営農の急増する現象を景気低迷の前兆と解釈しています。2008年の金融危機で、スペインとギリシャの経済が急激に悪化しました。その際も、帰農=自営農が増えたのです。日本でも「昭和恐慌」(1927~31年)の際、都会で失業した多くの人たちが、田舎の親元へ帰って農業に従事した歴史があります。私は、今回の韓国における帰農者急増を、直感的に「不況シグナル」と捉えました。

 

文政権が、米朝首脳会談で北朝鮮寄りの姿勢を明らかにし、交流事業にこだわった理由は、景気回復のテコに利用する計画だったのです。現に、韓国大統領府の文正仁(ムン・ジョンイン)統一・外交・安保特別補佐官は、米国の外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』への寄稿(3月15日発行)で次のように指摘しました。

 

.文在寅(ムン・ジェイン)大統領は韓国で経済政策が行き詰まった時に、自らに政治的な利益をもたらす南北交流事業に賭けた。

.文大統領が外交政策でも突破口を見いだすことができなければ、2020年4月の総選挙を前に苦しい立場で不確実な未来を迎えるかもしれない。

 

上記のような2点に基づき、文氏が南北交流に賭けていた以上、これが失敗に陥った影響は深刻です。経済の悪化は必至であり、文大統領の政治的な立場が不利になることは否めません。

 

零落する地方産業の実態

以上の概略説明を足がかりに、やや詳しく韓国経済の実態を見て行きましょう。『韓国経済新聞』(3月15日付け)に、次のような記事がありました。

 

「先月1週間、京畿道平沢(ピョンテク)から全羅南道霊光(ヨングァン)、釜山(プサン)、慶尚北道浦項(ポハン)、江原道高城(コソン)まで海岸線に沿って2400キロを回ったある教授の言葉が脳裏から離れない。『話にならない。停止した工場、つぶれた飲食店、船が2隻だけの釜山(プサン)新港…憂鬱になるしかない』」というものです。

ここには、1965~90年までの25年間、「漢江の奇跡」と言われた高度経済成長の輝かしい跡は見られません。「停止した工場、つぶれた飲食店、船が2隻だけの釜山新港」と暗い話が充満しています。日本の技術と資本が、「漢江の奇跡」を支援したあと、韓国に新しい産業が興らないのです。

 

2002年に大統領に就任した盧武鉉氏以降、日韓関係が悪化して、日韓企業の関係は希薄化しました。これによって、韓国企業へ世界の技術情報が伝わらなくなった面があるのです。現在では、普通になった「第4次産業革命」という言葉すら、韓国メディアは2015年時点で知らなかったほどです。技術情報ギャップが、イノベーション立ち後れ要因と解釈すれば、興味深いデータがあります。
(つづく)