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中国は、米中貿易戦争でこれまでの政策運営方針が、いかに時代遅れであったかを認識したのだろうか。恒例の地方政府ごとのGDPランキングの発表を取り止めると人民日報が発表した。これまでも、地方官僚の業績判断基準はGDP成長率でないと言っている一方で、地方のGDPランキングを発表するというチグハグなことをやってきた。

 

これは、「GDPこそわが命」という最高指導部の暗黙の評価基準が生きていた結果であろう。ところが、米中貿易戦争で米国から「どつき回され」、ようやくグローバル・スタンダードを知ったのだろうか。

 

GDPランキン発表を止めることは、無理な成長率の嵩上げをする必要がないということでもあろう。本当に、「量」(GDP)から「質」(環境保全)へと政策の目的が変ったのだろうか。即断はできない。苦し紛れに、またGDP競争に戻らないとも言い切れないところが中国の変幻自在のところだ。

 

『人民網』(3月13日付)は、「地方のGDP規模・成長率のランキング中止へ」と題する記事を掲載した。

 

(1)「全国人民代表大会(全人代)財政経済委員会の尹中卿副主任はこのほど全国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)の記者会見で、『今年から国家統計局は各省・自治区・直轄市の域内生産額(GDP)について統一の計算方法を採用し、各地方のGDPの規模や成長率のランキングを中止する』と述べた」

 

ここには、驚くべき記述がある。「今年から国家統計局は各省・自治区・直轄市の域内生産額(GDP)について統一の計算方法を採用する」というのだ。となると、今までは、地方政府が勝手な基準でGDP統計をつくっていたことになる。これほどインチキな話はない。これまでのGDP統計は、各地方政府が勝手につくった数値をどのようにして補正したのか。統計の専門家が聞いたら卒倒しそうな原始的な方法による「腰だめ計算」であったに違いない。そんな信憑性のないGDP統計で「世界2位」などと言えるはずがない。笑い話で、世界のGDP2位は依然として日本であるという。こちらに、信憑性があるような感じもするほど、中国統計は信頼性に欠けるのだ。

 

(2)「尹副主任は、『国家統計局は全国のバランスシート、全国と各省区市の自然資産のバランスシートを編成することを検討し、審査・評価メカニズムを改善し、正しい業績観の確立を推進する』と強調した。また末端レベル、企業、個人や家庭の負担を軽減し、国家、機関、地方の統計調査項目を整理し、統計報告が多い上に混乱しているという問題を解決するために、関係機関はインターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの方法の利用を検討し、データの提供と利用を規範化し、データバンクの構築を共同で行い、統計データの共有制度を改善するとしている」

 

中国は、経済関係のバランスシートと自然資産バランスシートをつくる案を検討したいという。これは、胡錦濤時代に地方官僚の業績評価基準をGDPから環境保全に移すと発言したことを10年近く経った現在、検討し始めるということだ。これが事実とすれば、米中貿易戦争でUSTR(米通商代表部)から徹底的に説教された結果であろう。中国の発想法いかに遅れていたか、痛切に知ったのだろうか。

 

データの共同利用を行なうデータバンクの構築を行なうという。地方政府も巻き込めば「ウソGDP統計」を防ぐ方法が確立されるはずだ。なぜ、今まで着手しなかったのか。解せない話でもある。USTRからの要求であろうか。

 


(3)「現在、『統計法』の改正が第13期全国人民代表大会常務委員会の立法プランに組み込まれ、関連の作業が着実に進められている。昨年6月には、同常務委が『統計法』の法執行に関わる検査報告を聴取・審議した。国務院とその関連機関は全人代財経委の法執行検査で発見された問題について、是正と改革を真剣に検討していた」。

 

統計法という実務面の手続きが全人代のテーマになっている。ここが不思議である。利権を隠すという特別の意味が絡むにちがいない。とすれば、すべての情報がウソ偽りなく集計されるとは限らないのだ。やっぱり、利権に絡む微妙な所はスルーするのだろう。

 

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