a0960_008527_m
   

住宅部門が、長期にわたって経済のリーディング・インダストリーとは驚く。これまでの住宅事情がいかに劣悪であったかを証明する。ならば、持家政策よりも賃貸住宅を大量に建設すべきであるが、そういう政策は後回しにされてきた。あくまでも、持家政策中心でバブル状態に押上げ、GDP上昇に寄与させる資本主義経済顔負けの政策を行なってきた。

 

しかも、不動産税(固定資産税)は存在しない社会だ。当局は、今年の全人代でも「不動産税を検討中」と申し訳なさそうに言うだけ。いつ、実現するかにも言及しない無責任体制だ。持家政策を中心にするならば、固定資産税をしっかりと払わせるのが筋のはず。そういう「書生論」は通じない社会である。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月15日付け)は、「中国住宅市場に深まる亀裂」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国の過去2年の経済成長をけん引してきた長い住宅ブームにガタが来はじめている。それは、今年約10%上昇しているバブル状態の銅相場が短期的に経験するトラブルを意味するかもしれないし、年内の金融政策緩和につながる可能性もある。15日に発表される不動産指標では、住宅価格がなお上昇していることが確認されそうだ。だが、見通しは悪化しており、土地価格は既にかなり軟調だ。12月の住宅関連データはほぼ全ての項目がトラブルを示唆したが、不動産投資の伸びは加速した。ガラス、電力、非鉄金属、セメント生産量の伸びは急減速した。住宅や土地の売却は前年から減少。後者は34%減となった。

 

このパラグラフでは、住宅需要がすべて「実需」によって裏付けられているという前提である。現実は、「仮需」(投機の転売狙い)が全土に5000万戸はあると言われている。中国の個人資産の8割が不動産と言われる中で、仮需が相当の比率を占めているのは当然だ。この仮需のオーナーが共産党員と言われる。全人代の審議に付されるはずがない。共産党員が、自分の利殖手段の住宅に固定資産税を掛ける。そういう法案に賛成するとは思えないのだ。

 


住宅の仮需で利益を狙えるとしても、実需では高額の住宅ローンを組んでいるから返済が大変である。住宅がGDPを押し上げれば押し上げるほど住宅は高値となって、実需者の家計を圧迫する。それが、消費支出を圧迫する。トータルで見れば、中国の住宅依存は、中国経済をますます「袋小路」へ入り込ませる手引きになっている。この矛楯に、「仮需」の投機層は気付かずにいるのだろう。繰り返せば、住宅依存経済はタコが自分の足を食っている行為と同じである。

 

(2)「最も重要なのは、公式統計によれば住宅在庫が2年ぶりに増加していることだ。2016年以降の新規建設着工に大きく貢献してきた在庫減少が恐らく終わりにあることを示している。投資増加率(11.6%)と販売増加率(3.2%)の差は、1カ月を除いて2015年初期以降のどの月よりも大きかった。力強い投資と軟調な販売の組み合わせは在庫の再増加を示唆しており、持続不可能とみられる」

 

投資増加率(11.6%)と販売増加率(3.2%)の差は、在庫増である。中国経済は現在、在庫循環と設備投資循環の二つの循環が同時にボトム状態にある以上、住宅の在庫増は顕著なものになろう。

 


(3)「14年の大幅な過剰在庫は翌年の住宅市場低迷の前触れとなったが、現在の在庫水準は依然として当時より低い。これは、見込まれる低迷も比較的浅くなることを示している。ただしそれは、政策担当者が次の建築ラッシュを生む刺激策の水門を開き、痛みを先送りしようとしなければの話だ」

 

14年の住宅の大幅な過剰在庫は、在庫循環のボトムに起った現象である。この上に、今回は設備投資循環のボトムが加わる。住宅在庫増は予想外のスピードで増えるであろう。その時、気付いても「後の祭り」になる。

 

 メルマガ37号 「文在寅の大誤算、日本企業『資産差し押え』は韓国衰退の引き金」が、下記の『マネー・ボイス』で紹介されました。ご覧下さい。

https://www.mag2.com/p/money/652352