a0960_008531_m
   

中国人経済学者で、国際機関に勤めた経験者は、超強気の経済論を打ち上げるという習性があるようだ。

 

世界銀行チーフエコノミスト兼副総裁であった林毅夫北京大学教授は、2012年ころ、10%成長があと20年続くと発言。その後はトーンダウンして、8%成長が20年続くと臆面もなく発言した。この発言を聞いて、私は2010年5月から毎日書いているブログで痛烈に批判した。中国経済は不動産バブルに過ぎないと指摘したのだ。

 

今度は、IMF副専務理事を務めた経験を持つ精華大教授の朱民氏が、林毅夫氏に似たような楽観論を話している。

 

『日本経済新聞』(3月25日付け)は、「減速する中国経済の行方、米の追加関税上げが焦点」と題するインタビュー記事を掲載した。

 

(1)「中国は3040年にわたって高成長を続けてきた。それを長期にわたって維持するのは不可能だ。経済規模がこれだけ大きくなったのだから成長の速度が落ちるのは自然だ。日本や韓国も同じ経験をしてきた。この2年、中国政府が過剰な生産力や債務の削減を進めたことも景気減速の原因だ。特に鉄鋼やアルミ、ガラスといった分野で大きな成果が出た。その過程で経済に下押し圧力がかかるのは避けられない」

 

1978年改革開放後の40年間、平均成長率は9.5%を記録した。ただ、2009年以降は不動産バブルが支えてきた不健全な成長である。過剰債務=過剰生産=過剰輸出という形で世界経済を攪乱してきた。これからは、その総決算が求められる。米中貿易戦争は、その象徴的な姿だ。

 

(2)「中国政府は2019年のGDP成長率の目標を『6~6.%』に設定したが、私は6.3~6.%程度の成長は実現できるとみている。決して悪い数字ではない。これからの数年間も6.%前後で安定するだろう」

 

これから数年間、6.3%前後の成長率が続けられるというのは、完全な作為的な話と言わざるを得ない。現在、中国経済に起っている問題は、在庫循環と設備投資循環のボトムが重なり合っており、景気の調整はこれだけでも相当の圧力になっている。

 

また、習近平氏や人民銀行幹部が相次いで警戒している「信用収縮」問題が起っている。流動性のワナの問題が起るほど、信用創造能力は低下しているのだ。マネーサプライ(M2)が、名目GDP成長率を下回って8%増という異常事態だ。このような危機的な状況で、「これからの数年間も6.%前後で安定するだろう」という金融環境にはない。

 

不動産バブルは現在、中国政府の管理で無理矢理、下落を封じ込めているだけだ。世界的な不動産の下落が起れば、いくら海外情勢に鈍感な中国の投機家も危機感に煽られて、手持ち不動産の処分売りに出てくるであろう。そうなったら、中国経済はひとたまりもない。5000万戸と言われ投機用のマンションが、一斉に売られてきたら中国の信用機構は破綻するだろう。それほどまでに危険な橋を渡っているのだ。

 


(3)「いま貿易戦争の核心的な問題は、米国が2千億ドル相当の中国製品に課している10%の追加関税を25%に引き上げるかどうかだ。引き上げた場合、中国の輸出数量は大きく減るだろう。それだけではない。米国にも打撃となる。われわれの計算では2千億ドルのうち、50%以上は中国製品以外での代替ができない」

 

米中貿易戦争の本質は、貿易の不均衡という表面的な問題ではない。中国は、WTO(世界貿易機関)のルール無視による不公正貿易ルールの遵守を迫られている。これを、矮小化して捉えるべきでない。中国が、公正なルールに従った輸出や産業政策を求められたら、経済規模がどれだけ縮小させられるかという構造的な問題を抱えている。

 

50%以上は中国製品以外での代替ができない」と胸を張っているが、すでにサプライチェーンは脱中国の動きを見せている。余りにも従来の「世界の工場論」に囚われた議論をしていると、中国は世界から見捨てられる危機と隣り合わせだ。その現実を認識すべきだろう。朱氏が在籍したIMFは、伝統的に中国経済に甘い見通しを持っている。それを捨てる時期に来たのだ。

 

メルマガ37号 「文在寅の大誤算、日本企業『資産差し押え』は韓国衰退の引き金」が、下記の『マネー・ボイス』で紹介されました。ご覧下さい。

https://www.mag2.com/p/money/652352