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韓国経済に、異常事態が起っている。通貨危機でもないのに、ソウルの目抜き通りで「貸し店舗」や「売却店舗」が激増している。IMF(国際通貨基金)は、3月の時点で早くもGDPの0.5%超の財政支出拡大を勧告する始末だ。

 

IMFが、文政権の経済政策失敗を認めたも同然の話である。それでも、政府は動こうともしないのだ。最低賃金の大幅引上げが、「所得主導経済」なるオブラートに包まれて、さぞや「霊験あらたか」なものがあるように、国民に催眠術を掛けたつもりでいる。だが、自営業者など零細な業者を倒産に追い込んでおり、失業率は高まるばかりだ。この実態を、どのようにするつもりなのか。財政支出拡大策は、患部にこう薬を張るようなもの。最賃の大幅引上げを撤回するしかない。

 

『朝鮮日報』(3月25日付け)は、「シャッター商店街、空きオフィス、韓国経済が死んだ現場」と題する社説を掲載した。

 

(1)「零細事業者の廃業などでソウルではオフィスの空室率が昨年1012月期に11.4%にまで上昇した。2013年の6.4%に比べると、5年でほぼ2倍に上昇した格好だ。漢江の南北を問わず、空きオフィスが増え、空室率が20%前後に達している地域も少なくないという。店舗物件の空室率も2013年の5.5%から昨年1012月期には7%に上昇した。これまでの景気低迷局面でも灯りが消えることはなかったノンヒョン洞・清潭洞など江南商圏、梨泰院・新村・明洞などソウルを代表する商圏でも空室率が23倍に上昇し、20%に達するところも多い。ソウル都心の人気地区でこの有り様なのだから、ソウル郊外や地方ではもっとひどいだろう。それだけ現場の景気低迷が深刻であることを示している」

 

昨年7月時点でビルの空室率は、2009年の通貨危機当時よりも悪化していた。原因は、自営業者の廃業である。この流れは今一層、悪化している。不満があればすぐに騒ぎ立てる韓国人が、黙ってこの状態に耐えている理由は何か。朴槿惠・前政権を「ロウソク・デモ」で倒したことへの反省が、あえて沈黙を余儀なくさせているのだろうか。

 

朴政権にも確かに問題はあった。だが、文政権はそれに劣らず無能な政権であろう。国民を倒産に追い込む政治が、良いはずがない。この原因は、労組におもねた最低賃金の大幅引上げにあるものの、誰もこれを是正させる目立った大衆運動を始めないから不思議である。文政権の行なうことに、100%賛成の委任状でも出したような雰囲気である。

 

(2)「昨年廃業した自営業者は100万人規模に増えた。苦境に立った自営業者が借金に走った結果、卸小売業向けの融資は過去9年で最大の伸びとなる9.7%増だった。自営業の景気低迷は最近のことではないが、文在寅(ムン・ジェイン)政権の所得主導成長政策がさらに冷や水を浴びせた。最低賃金を急速に引き上げ、労働時間を無理に短縮した結果、庶民の働き口がなくなり、所得が減少した。宿泊・飲食・卸小売りなどの雇用が1年間で9万人分減り、所得下位20%の層の勤労所得が37%も減少した。空いたオフィスとシャッターを下ろした店舗は誤った政策実験による産物だ」

 

昨年廃業した自営業者は100万人規模に増えたという。単純に言えば、この数だけビルが空室になった計算になろう。昨年7月時点でソウルの一等地、江南駅一帯で「権利金2億~3億ウォン(2000万~3000万円)」だった店舗が、権利金なしで貸店舗に出たと伝えられた。当時よりも、環境はさらに悪化している。文政権は、こういう状態を把握しなかったのだろう。その代わり、南北交流事業にだけ関心が向かっていたとは、何とも、片手落ちな政権である。



(3)「最低賃金引き上げの速度調節と週52時間労働制の補完に向けて発足した経済社会労働委員会まで全国民主労働組合総連盟(民主労総)の暴走で動きが取れずにいる。最低賃金の決定時に「企業の支払い能力」を基準にし、引き上げペースを調節するという政策は、労働界の反対に直面し、見直し案から除外されてしまった。弾力労働制の拡大も民主労総が単位期間の拡大自体に反対しており、進展していない」

労働界は、労働条件の見直しに一切、応じないという。政府が、それを押し切れないのはどういうことなのか。労働界が、政治を牛耳っている感じである。大手の労働組合だけ栄えて、自営業者は倒産して路頭に迷う。不思議な構図である。

 

メルマガ37号 「文在寅の大誤算、日本企業『資産差し押え』は韓国衰退の引き金」が、下記の『マネー・ボイス』で紹介されました。ご覧下さい。

https://www.mag2.com/p/money/652352