a0960_005446_m
   

英経済紙『フィナンシャル・タイムズ(FT)』(3月26日付け)は、来年からアジアの時代が来ると報道した。これまで、頻繁に「アジアの時代」という言葉が飛び交ってきたが、突然、「来年から」と時間を切られると驚かざるを得ない。この尺度には、購買力平価説(PPP)に基づくGDP換算が使われている。

 

日本は、1970年代当初からの「円高」に揉まれてきた。円高による輸出困難を回避すべく、着々とアジアへ生産拠点を移してきた。それが、国内の産業空洞化をもたらし、失業が深刻な問題になってきた。振り返って見れば、市場原理に基づく生産拠点の海外移転は、ベストの選択であったことが分る。FTが、「来年からアジアの時代」と報じる中で、日本はその発展するアジア経済の果実を、現地で享受できる立場に居合わせたのである。経済原則を受入れ、生産拠点を移したことに「感謝」すべきであろう。

 


前記のFTは、「『アジアの時代』が来年到来、世界は原点回帰へ」と題する記事を掲載した。

 

(1)「アジアには既に世界人口の半分以上が集中している。国連のデータによると、世界の人口上位30都市のうち21都市はアジアにある。また、アジアには2020年までに世界の中産階級層(05年現在の購買力平価=PPP=で、1人当たり日収10~100ドルの世帯)の約半数が集まる。英調査会社LMCオートモーティブによると、アジアでは07年以来、自動車とトラックをどの地域よりも多く購入しており、30年ごろまでにはアジア以外全域の合計と同じ購入規模になると予測されている」

 

アジアが2020年に、世界の中心になるという。経済的には事実であろう。日本は、アジアの一員としてODA(政府開発援助)によりインフラ投資などで支援を続けてきた。それが、中国を筆頭にアジアの経済発展に大きく寄与してきた。アジアの世論調査で、日本が最も高い評価を受けている背景がこれだ。

 

日本は、中国のように地政学的な覇権を求める動きをしなかったことが、「安心して交流できる」関係を築き、日本企業の進出が歓迎された理由である。積極的に技術を供与してきたのだ。中国の『人民網』が、次のように日本を評価している。

 

「2018年の日本のGDPは緩やかな成長にとどまったが、日本企業の海外子会社からの配当など直接投資による所得収支黒字が前年比13%増と大幅に増加し、その所得収支黒字が初めて10兆円を突破し、過去最高を更新した。この数字は日本の同年の貿易黒字の8.4倍にあたる」(『人民網』3月22日)

 

日本は、貿易黒字よりも所得黒字の方が上回っている国である。2017年では、貿易収支黒字は262億ドルに対して所得収支黒字は1769億ドルである。所得黒字は貿易黒字の6.8倍になる。一方の中国は、2017年の貿易黒字は4195億ドル、所得赤字が344億ドルである。日中の差はこれほど大きいのだ。日本を羨ましく思うのは自然であろう。日本は「先憂後楽」。中国は「先楽後憂」であって、アジアの経済成長の果実は輸出で得ているが、ストックではマイナスである。

 

(2)「アジアの時代はいつ始まるのだろうか。英『フィナンシャル・タイムズ(FT)』紙がデータを分析したところ、国連貿易開発会議(UNCTAD)の定義に基づく『アジア』の経済は20年、世界の他全域の経済の合計を上回る。これは19世紀以降では、初めてのことだ。数字が示すところでは、アジアの世紀は20年から始まる。大局的な視点から見ると、アジアは00年、世界生産高の約3分の1をわずかに超える程度だった。FTは算定にあたり、物価格差調整後の国内総生産(GDP)に基づく国際通貨基金(IMF)のデータを分析した。PPPで各国の経済を評価するこの手法は、物価が低いことが多い発展途上国の人々が実際何を購入できるかを考慮に入れるため、最も妥当な手法であると一般に考えられている」

 

ここでは、購買力平価説(PPP)でGDPを換算し直している。この購買力平価説は古くから使われている概念だが、未来にこれを引き伸ばした議論は要注意である。韓国は、1人当たりの購買力平価の国民所得を計算し、2026年に日本を抜くと自慢しているがナンセンスである。こういう「誤用」に注意すべきである。

 

(3)「戦後日本の経済成長に始まったアジアの近年の台頭は、歴史的水準への回帰を示す。アジアは19世紀に至るまで、人類史の大部分で世界経済を牛耳っていた。イタリアのボッコーニ大学で経済史を教えるアンドレア・コッリ教授は『欧州は17世紀末ごろ、世界のGDPの3分の2以上と世界人口の4分の3が集中する地域(アジア)に称賛と羨望のまなざしを送っていた』と説明する。

 

経済の軸がアジアに向かっていることは事実である。ただ、中国という「無法国家」が相当のウエイトを占めている。これが、世界攪乱の種になる危険性を秘めている点に手放しの楽観はできない。

   

メルマガ37号 「文在寅の大誤算、日本企業『資産差し押え』は韓国衰退の引き金」が、下記の『マネー・ボイス』で紹介されました。ご覧下さい。

https://www.mag2.com/p/money/652352