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米国経済と双子の関係にあるカナダにおいて、債券市場で長短金利が逆転する「逆イールド」現象が起った。先週、米国で「逆イールド」が発生して、株式市場は緊張させられた。今週は、米国経済と密接な関係にあるカナダでも、同じ現象が起った以上、米国景気減速への警戒が必要になったと言える。

 

『ロイター』(3月29日付け)は、「カナダも逆イールド、米国より鮮明な景気後退シグナルか」と題する記事を掲載した。

 

米国債市場で長短金利が逆転して「逆イールド」化し、これがリセッション(景気後退)の前兆かどうか投資家は頭を悩ませている。そこで参考になるのが、中央銀行による国債買い入れによって市場が歪んでいない隣国カナダの債券市場だが、こちらも逆イールドとなっている。

 

(1)「米国債市場では先週、10年物利回りが3カ月物政府短期証券の利回りを下回り、10年強ぶりに逆イールドとなった。過去50年間の米国のリセッションでは、常にその前にカナダで逆イールドが出現していたが、今回は指標性が小さいと一部の市場参加者は主張している。米連邦準備理事会(FRB)による数兆ドル規模の国債買い入れより長期金利が低下し、市場が歪んでいるから、というのがその理由だ」

 

過去50年間、米国のリセッション入りの前に、カナダで「長短金利の逆イールド」が起っている。先週米国で起こり、今週カナダで起ったことは、50年間のパターン通りの現象と言えよう。襟を正して見ることは必要だ。

 



(2)「カナダ市場も先週、逆イールドとなった。経済規模は米国の10分の1程度だが、景気の先行きを予想する上で同国は代替的な指標となるかもしれない。カナダは州による債券発行が多く、長期国債の発行は米国に比べて少ない。国債市場は中央銀行による直接的な影響が小さい一方、経済は米国と密接に結びついており、米国がマイナス成長に陥っていないのにリセッション入りした前例はほとんどない。リフィニティブ・アイコンのデータによると、カナダと米国の債券市場は相関が強く、相関度は90%超に達する。米国債市場の歪みが大き過ぎて景気指標としての力を失っているのであれば、この相関は崩れるだろう」

 

カナダと米国の債券市場の関係はきわめて強い。その相関度は、何と90%超に達する点から判断すれば、事実上、米加の債券市場は「連結」しているようなものだ。これから言えば、米国の長短金利逆転は動かしがたい事実として受入れる必要があろう。

 

(3)「CIBCアセット・マネジメントのグローバル債券担当バイスプレジデント、パトリック・オトゥール氏は、『両方が逆イールド化したことは、債券市場が数四半期以内のリセッション入りを予想していることを示す真の警告だ』と指摘。『カナダが発する信号の方が米国より明確だ』と続けた。カナダは過去50年間で5回リセッションを経験しており、主要輸出品である原油の価格が急落した2015年を除き、常に米国のマイナス成長と歩調を合わせていた。また、15年のリセッション前には逆イールドが起こらなかったが、世界金融危機前には起こっていた」

 

米加両方が逆イールド化したことは、米国景気が数四半期以内にリセッション入りを予想していることになる。逆イールドは本来、短期金利よりも高くて当然の長期金利が、短期金利を下回ることだ。市場参加者が、設備投資の低迷で長期金利の下落予想を強めている結果である。中国の上海株式市場で、外国人投資家が一斉に大量の売り注文を出した背景には、米国が主導する世界経済の停滞予想に基づくものだろう。米国景気が低迷すれば、中国の輸出は大打撃を受ける。