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中国経済最大のガンは、「流動性のワナ」にはまり込んだことである。流動性を増やして金利が下がっても設備投資に点火しないのだ。この1月、預金準備率を下げたが、その資金はどこへ流れたか。株式投機に回っただけで終わった。株式の信用取引ではろくな調査もされずに融資された。それが、上海や深圳の株式取引を活発化させたものの、外人投資家に巨額の利益を与えただけで終わりそうである。

 

中国政府は、難破船の船長よろしく見張っているが、ただ狼狽して歩き回っているだけだ。過剰債務問題をどうするかという展望もないままに、一日一日慌ただしく過ぎていくだけで、解決策はすべて見送りである。ただ、船が沈まないようにするのが精一杯。前進することなど頭の片隅にもない。これが、習近平政権の現実である。

 

『日本経済新聞』(3月29日付け)は、「中国4大銀、当局号令で融資拡大、将来のリスクに」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国の大手銀行が貸し出しを増やしている。中国工商銀行など4大国有銀の2018年末の貸出残高は525千億元(約860兆円)と17年末に比べ9%増えた。中国当局が中小企業への積極融資を促しているためだ。景気刺激を優先した貸し出しは将来的に不良債権を増やすリスクがある。4大銀の1812月期の純利益は前の期より45%増えた。貸出金増加に伴う金利や手数料の収入が拡大。18年末の不良債権比率は4行平均1.5%17年末比0.08ポイント改善した。不良債権の予備軍とされる関注(要注意)債権の比率も3%台から2.84%になった

 

 下線を引いた部分は、誰も信用していない数字である。つまり、「ウソ」であるからだ。「流動性のワナ」という最悪事態のなかで、不良債権比率は4行平均1.%などで済むはずがない。実態は、公表されている数倍はあるとみられている。

 

国有銀行は、不良債権で資本勘定が棄捐しているので新規融資を伸ばせられないという基本的な問題を抱えている。だから、昨年末で前年比9%の貸出増加が精一杯であろう。中国の名目経済成長率は10%以下である。新規融資の伸びが、9%増であるのは深刻な事態である。中国経済が、縮小化過程にあることを示すものだ。銀行の生命線である信用創造機能が、大きく傷つけられたことに外ならない。

 


こういう状態になった以上、不良債権処理を急がなければならないが、そうなると経済成長率が低下して社会問題に発展する。独裁政権の泣き所は、まさにここである。どっちつかずのまま、中国経済は衰退を余儀なくされるであろう。習氏は、一帯一路を振りかざして歩いているが、自分の身を滅ぼすことも弁えない浅慮に見える。自らの大言壮語が、自分の首を締めているに等しい。

 

マネーサプライ(M2)は、ほぼ8%台の伸びに止まっている。本来であれば、「M2+3~4%」の増加率が当然のラインである。この線に届かないのは「流動性にワナ」に落込んでいる証拠と言うべきであろう。昨年初めからこの事態に追い込まれている。習近平氏が、この事実に気付かないだけ。すでに、危機的事態に突入しているのだ。

 


中国政府は、昨年11月から民間企業の資金調達難解消へ異例の対策に乗り出している。監督当局トップが銀行に対し、民間向け貸し出しを3年以内に2倍超増やして新規融資全体の5割とするよう要請したのだ。この民営企業が不振状態にある。

 

習氏は、「紅二代」という革命戦争の功労者の二代目で、党幹部になれば、いろいろの便益を受けているはずだ。これを広く「紅二代」全体に与えるべく、国有企業優遇策へ戻してしまった。これが、中国経済の命取りになっている。民営企業を冷遇しているからだ。習氏は自分の立身出世だけを考え、中国経済全体の利益をないがしろにしたのである。

 

民営企業は、中国経済の核である。すなわち、「民営企業は税収の5割、GDP6割、都市雇用の8割」を占める幹である。この幹を細らせてしまった政策的な失敗は、取り返しができないほどのミスである。国有企業は、政府の命令で損得にかかわらず設備投資を始めるが、GDPの6割を占める民営企業の損得は自分の身に降りかかってくる。流動性のワナが起っているのは、民営企業がGDPの6割を占める不可避的な結果である。民営企業を粗略に扱った「報い」を受けているのだ。