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サムスン電子の1~3月期に業績が発表になった。すでに本欄で急減速の報道を取り上げたが、実際に発表された業績は予想通りの不振ぶりであった。

 

営業利益は前四半期(10兆8000億ウォン)より42.6%減り、1年前(15兆6400億ウォン)よりは60.4%も急減した。歴代最高記録だった昨年第3四半期(17兆5700億ウォン)に比べると3分の1水準だ。

 

売上高に対する営業利益率は11.9%と前年同期(25.8%)の半分にも満たず、収益性も急激に悪化した。1~3月期の事業部門別の業績は追って発表されるが、半導体事業の営業利益は4兆ウォン前後にとどまったと予想されている。前期(7兆7700億ウォン)の半分程度に減ったことになる。

 

半導体市況の急落が、サムスンの利益を直撃した。2年前まで4ドルを超えていたDRAMの平均価格は最近1.7ドル台まで暴落した。ここまで市況が下げると、サムスンといえども屋台骨を支えきれなくなってきた。問題は、今後の半導体市況の回復であるが、世界経済の回復しだいである。

 


WTO(世界貿易機関)は4月2日公表した報告書で、世界のモノの貿易伸び率を今年2.6%と予想。昨年の3%から減速するとした。来年は3%と予測している。昨年9月時点の見通しは18年が3.9%、19年は3.7%だった。見通しの下方修正は2年連続である。このように世界経済全体の伸びが小幅に止まれば、半導体輸出もその影響を受けざるをえない。

 

半導体業界は、需要停滞は一時期と見ている。理由は、半導体業界が在庫調整に動き出していることを重視している。だが、需要動向が決定的な価格決定の要因になるので、WTOの需要予測を足がかりに慎重に見るほかない。年内の市況回復は難しいであろう。頼りのスマホも需要一巡である。買替え需要に依存する以上、世界経済の回復が半導体市況のカギを握るであろう。

 

ここで、サムスンの経営体質について検討を加えたい。

 

『日本経済新聞 電子版』(4月5日付け)は、「変調サムスンに潜む3つの影、日本企業化の危機」と題する記事を掲載した。

 
韓国サムスン電子の失速が鮮明だ。5日発表した2019年13月期の連結営業利益は前年同期比60%減少した。2四半期連続の大幅減益となった。もがく姿は「存在感を失ったかつての日本の電機メーカーに似てきた」との声もある。利益水準はなお高いものの、サムスン自身に潜む3つの影が、反転攻勢を阻む可能性がある。機能の偏重、コスト高、カリスマ不在――。好業績時には決して表に現れなかった、サムスンの内なる3つの影。現役の世界王者に暗雲が漂い始めている。

 

(1)「1980年代に世界を席巻した日本の電機大手が衰退したのは、機能や品質に溺れ、消費者のニーズを置き去りにしたことも一因とされる。実はサムスンにもそんな兆候が出ている。4月、有機ELを採用した画面を折り畳みできるスマホ『ギャラクシーフォールド』を発売するが、想定価格は20万円前後。一般の消費者には高根の花と思われるが、『機能と品質が良ければ支持される』との姿勢を貫く」

 

行き過ぎた機能重視は、「パラパゴス化」になるリスクを抱えている。アップルも、この限界に気付き、方向転換してサービス部門で稼ぐ体制へシフトする。

 

(2)「社内をじわりとむしばみ始めた高コスト体質も新たな課題に浮上している。高止まりする社員の平均年収がその典型だ。韓国経済の低迷で安定志向が広がり、10年に7.8年だったサムスンの平均勤続年数は18年に11.5年まで伸びた。結果、09年の平均年収は約670万円と日本の大手企業並みだったが、18年は1千万円超に上昇した。トヨタ自動車を上回る高給で知られる、韓国現代自動車に並ぶ水準だ。かつて低コストを武器に日本勢を追い落としたサムスンの様変わり。現地報道によると、中国・シャオミの平均年収は約500万円。好待遇は優秀な社員を採るための世界標準との見方もあるが、コスト競争力で優位に立てる時代は終わった」

 

製造業の高給化は、コスト増に直結する。サービス業との違いはここにある。サムスンもその危険ゾーンに入ってきた。

 


(3)「迅速な意思決定と大胆な設備投資――。サムスンの急成長は、強烈なリーダーシップでグループを引っ張った李健熙(イ・ゴンヒ)会長の存在なくして語れない。しかも、事実上、経営を引き継いだ長男の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は贈賄罪をめぐる公判を控える。172月に逮捕(現在は保釈)された際、サムスン幹部は「会長が築き上げた体制は強固だ。3年間は心配ない」と語ったが、変調は早くも訪れた。巨額の投資を今後、回収できるのか。カリスマ不在は中・長期的な戦略に、暗い影を落とすのは確実だ」

 

カリスマ不在。IT産業では、カリスマ不在がどれだけの企業を危機に追いやってきたか。ソニーもその例に漏れない。アップルは、業態転換の中で新たなカリスマを作ろうとしている。