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文在寅政権の登場は、韓国の歴史でターニングポイントであったと記憶される事態が、またひとつ登場した。年金財政の破綻が、合計特殊出生率の急低下によって現実問題になる気配である。

 

文政権の登場は、経済的な不安の種をばらまいた。最低賃金の大幅引上げが、庶民の働き口を倒産させているからだ。自営業の倒産は昨年、100万件を超えた。国民生活の基盤を破壊している。進歩派という看板のいかがわしさが証明されている。

 

急激な出生率低下に直撃されるのが、年金財政の破綻だ。最近発表された将来人口特別推計によって、「このままでは社会保険料(国民年金・健康保険料)と税金が急上昇し、若者が韓国に背を向け脱出する」と指摘される事態を迎えている。

 


『朝鮮日報』(4月6日付け)は、「重い年金負担、韓国に背を向ける若者たち」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の洪準基(ホン・ジュンギ)社会政策部記者である。

 

(1)「韓国は、少数の高級人材が海外の企業や研究所に流れる『頭脳流出』のレベルにとどまらず、職場でごく普通の若者までもが大挙して海外に流出しかねないとの見方がでてきた。『若者の大脱出』に対する警告は、昨年8月の国民年金制度見直し案に対する公聴会でも聞かれた。国民年金基金が当初予測よりも3年早い2057年に枯渇し、国民年金保険料率が20~30%まで上昇するとの見通しが示されると、若者から不安、不満、懸念の声が相次いだ」

 

若者の不満の声は、次のようなものである。

「自分が老後に国民年金を受け取れるかどうかもはっきりしないのに、保険料を支払わなければならないのか」

「今使うカネもないのだから、国民年金を脱退させてほしい」

まだ少数意見ではあるが、現在の10~20代が40~50代になるころには、社会保険料、税金の重い負担のせいでそうした声が巨大なうねりとなるという暗い予測が出ている。

 

文政権の不手際は、あらゆる所に噴出している。政権の目的が、進歩派政権を継続させることにあるので、国民に負担になる不人気な政策をすべて先送りするという、異常な振る舞いを見せている。若者は、将来の年金が貰えない事態が予見されれば、「国を脱出」するほかないのだ。

 

(2)「韓国政府は昨年、年金支給は据え置き、保険料だけを引き上げる方策を国民年金制度見直し案から除外した。一部が不満を述べたことで、支持率低下を恐れたとみられる。民主平和党の千正培(チョン・ジョンベ)国会議員は今年1月、状況を見かねて、国民年金制度見直し案の作成時には財政安定化策を盛り込むことを義務付ける国民年金法改正案を発議した。年金改革を後回しにして、爆弾を次の世代に押し付ければ、将来の世代が持ちこたえられなくなり、国民年金に対する国民の不信がますます増幅しかねないからだ。今からでも政府は『子や孫の世代と最低限の苦痛分担をしよう』と国民を説得すべきだ」

 

年金制度改革では、支給額と保険料はワンセットである。文政権は、この原則を破っている。もはや人気取りが許されないほど、人口構造が急速な高齢化を迎える。

 

(3)「韓国は少子高齢化で2056年には人口の年齢中央値が60歳を超える。簡単に言えば、国民の半数が還暦以上という国になるのだ。また、2065年には生産年齢人口100人が子どもと高齢者の合計117.8人を扶養することになる。この数値が100人を超えるのはOECD(経済協力開発機構)加盟国では韓国が唯一だ。人間で言えば、体重よりも重い荷物を背負っていることになる」

 

日本が世界一の「超高齢者大国」とされるが、今世紀後半には韓国がそのトップにたつ。人口構造で、日本より約20年遅れてきた韓国が、文政権のデタラメな最低賃金の大幅引上げがきっかけで、日本以上の「超超高齢者大国」になる。この一点だけをとっても、文政権の罪は深いのだ。