a0001_001089_m
   

韓国の3月の就業者は、前年比25万人増である。表面的には順調だが、中身を見るとため息の出るほど深刻な事態だ。文政権による、最低賃金の大幅引上げが落とす影は、もはや修復不可能になっている。

 

具体的には、家計の担い手である30~40代の就業者が25万人も減っていることだ。その穴埋めが、次のような「臨時的」雇用でされている。すなわち、60歳以上が政府の短期雇用で同34万6000人も増えている。また、失業による帰農者が同7万9000人増えるなど、辻褄合わせがされている。帰農者は、一時避難で出身地に戻り家族の農業を手伝う「仮装失業者」に分類される人びとだ。

 


韓国統計庁が発表した「3月雇用動向」によると、先月の就業者数は2680万5000人で昨年同期比25万人増加した。年齢別の就業者数の前年比の増減数は次の通りである。

60歳以上で34万6000人増(政府の高齢者向け短期雇用)

50代で11万1000人増

20代で5万2000人増

40代で16万8000人減

30代で8万2000人減

 

働き盛りの30~40代が25万人も減少しているのは、家計破綻に直結する。60代の34.6万人増加は、短期雇用のバッファーにすぎない。ここへ、多額の財政資金が投入されている。最低賃金大幅引上げが生んだ混乱への「罪滅ぼし」にすぎない。


 

産業別の就業者動向(前年比)は、次の通りである。  なお、失業者は1年前より6万人減少した

 

保健業および社会福祉サービス業 17万2000人増

専門・科学および技術サービス業 8万3000人増

農林漁業 7万9000人増

 
製造業 10万8000人減

事業施設管理・事業支援および賃貸サービス業 4万2000人減

金融および保険業 3万7000人減

  
製造業の10.8万人の減少は痛手である。長期安定雇用先として期待のかかる業種であるからだ。それが、10万人単位での減少である。韓国経済は、製造業が屋台骨を支えてきた。その大黒柱は、やせ細っている。文在寅という経済音痴の大統領が出現したばかりに、この悲劇である。製造業の就業者減は、昨年4月から12カ月連続で続いている。

 

金融および保険業が、3.7万人も減っている。これは、製造業不振の影響が出ているのであろう。年功序列賃金体系においては30~40代の就業者減が、金融業務や保険業務に響かないはずがない。この年代層の就業者減は、解雇によるものであろう。

 

昨年の青年層(15~29歳)の体感失業率が過去最高の25.1%を記録した。体感失業率とは、公務員試験の準備中の人やアルバイトを転々とするパートタイム労働者などを含めた広義の失業率。今は若者の4人に1人が、職場を見つけられずにいることを意味している。こういう政治が、立派と言えるはずがなかろう。昭和初期(1920年代)の日本では、失業のために「大学は出たけれど」という歌が流行った。今の韓国は、その再現である。