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日韓関係の悪化が影響したのか、日本人の韓国旅行への魅力は28%と調査対象国20ヶ国の中で最低となった。この問題は、日韓の観光をめぐる評価とも関わって興味あるテーマである。

 

韓国観光公社が、観光目的地として韓国の競争力などを調査・分析した「2018韓国観光ブランド・マーケティング・コミュニケーション効果調査」の結果である。韓国では、これまで大量の中国人観光客が訪れていたが、例のTHAAD(超高高度ミサイル網)設置以来、すっかり冷え込んでいる。一方、韓国人の海外旅行熱は高まるばかり。なんとかしてバランスを取らなければ、と政府は必死である。


『中央日報』(4月12日付け)は、「韓国、観光地としてどうですか?「良い」インドネシア87% 日本は28%」と題する記事を掲載した。

 

今回の調査はニールセンコリアが世界の主要20カ国15~59歳男女1万2000人を対象に昨年12月21日から今年1月14日までオンラインのアンケート調査を通じて実施した。

 

(1)「アンケートに答えた20カ国の外国人59.5%が韓国観光を希望し、特にインドネシアの回答者10人中9人は韓国を魅力的な観光地だと考えて訪問を希望していることが明らかになった。特に韓国観光選好度ランキングでインドネシア・ベトナム・タイ・フィリピンなど主要東南アジア国家で高い肯定回答率が現れ、過度な中国市場依存度問題が次第に改善されていることが明らかになった」

観光目的地としての韓国に対する選好度

 

インドネシア  86.5%

ベトナム    84.4%

タイ      81.0%

フィリピン   74.2%

トルコ     71.5%

 

マレーシア   70.6%

シンガポール  66.2%

香港      64.7%

中国      64.5%

インド     64.0%

 

ロシア     61.0%

アラブ首長国連邦58.3%

米国      55.1%

台湾      53.8%

オーストラリア 44.2%

 

英国      43.1%

フランス    43.1%

カナダ     42.5%

ドイツ     30.8%

日本      28.3%     

 

上記20ヶ国を見ると、アジア各国が上位を占めている。先進国は米国を除けば50%以下という区分けができている。それにしても、日本は最下位の28.3%だ。これは、調査期間が、昨年12月21日から今年1月14日と関係がある。日韓で、海上自衛隊哨戒機をめぐる騒ぎが持ち上がり連日、テレビのワイドショーに取り上げられた時期である。日本人なら、韓国へいい感じを持たなかった事情を勘案しなければならない。

 


『レコードチャイナ』(3月17日付け)は、「明暗分かれた日韓の観光政策、違いはどこに? 韓国ネットからため息」と題する記事を掲載した。

 

韓国メディア『韓国経済』(3月15日付)で、「日本観光が成長し続ける一方で、韓国観光は停滞している」と伝えた。

 

(1)「毎年10回以上日本を訪れ、日本旅行記を寄稿している作家のイ・ソル氏は、日本観光の強みについて「コンテンツの差別化としっかり整備された観光インフラ」を挙げ、韓国観光について「外国人観光客が毎年500万人近く増加している日本と違い、韓国はオリジナルの観光資源を発掘できずに足踏み状態が続いている」と指摘した。2018年の訪韓日本人観光客が前年比28.1%増の292万人だったのに対し、訪日韓国人観光客は5.6%増の753万人で、観光客数の差は約25倍だった」

 

昨年、日韓の外国人観光客の差が、約2.5倍も広がった背景には歴史的な違いがある。江戸時代の日本は、各藩に分かれて行政が行なわれる封建時代を経験している。この間、各藩は財政的独立をめざして特産物の育成に努めた。これが、現在の日本では地域ごとの魅力ある観光スポットを生み出した。

 

韓国は、朝鮮李朝の専制国家であり、ソウルを中心軸にして発展した経緯がある。だから、地方は李朝の利益収奪の対象でしかなかった。ソウルの繁栄と地方の疲弊が、極端な形で併存した。両班(ヤンバン)は、地方で農民を食い物していたのだ。日本の武士は土地所有を認められなかったので、貧富の差は少なかった。

 

(2)「訪日外国人観光客が飛躍的に増えた理由として専門家らは、首相が代わっても観光政策の基調は変わらない『日本の一貫した観光政策』を挙げているという。また、日本はイントラバウンド(自国民の国内旅行)の基盤がしっかりしており、観光インフラが小都市まで体系的に整備されているため、どの地域に行っても特有の文化を体験できる点も強みだと評価している」

(3)「韓国の政策担当者は「韓国も地方観光活性化に向け地道に政策を実行してきたが不十分だ」と指摘しているという。昨年の訪韓外国人観光客1530万人のうち70%以上がソウルや釜山などの大都市を訪れた。ある外国人観光客は「地方にも魅力的な観光地が多数でき、コンテンツも発展した」と評価した上で、それでも「交通や宿泊施設の不便さから滞在型観光はできずにいる」と話したという」。


日本は、江戸時代以来の地方の独立性。韓国は、「金太郎アメ」で地方の特色が発揮されない。この二つの点で、日韓の観光資源の有無が説明可能であろう。