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今回の「福島水産物」をめぐるWTOの二審判断は、日本として受け入れがたい結果である。放射能無害を認めながら、韓国の輸入規制の継続を許した裏に、WTOは韓国人の思い込みの激しさを恐れたのでないか。

 

韓国社会では、科学的事実よりも思い込みが優先している。特に、市民団体にその傾向が強い。米国での狂牛病が発生し解決した後も、「脳にぽつぽつ穴が開く」といった「恐怖」の噓宣伝によって米国産牛肉輸入反対を続けた。このように大衆を反対運動に巻き込む手法では、常軌を逸した行動を取る。「福島水産物」の輸入反対では、「300年間は食ってはいけない」と言ったデマが流されたであろう。というのも、「北太平洋産のスケトウダラ、サバ、タラを今後300年は食べてはならない」といったとんでもない話を広めて、扇動を続けた団体がいたというのだ。

 


『朝鮮日報』(4月13日付け)は、「水産物禁輸、一審覆したWTO判決に韓国専門家も驚き意外だ」と題する記事を掲載した。

 

(1)「西江大学のホ・ユン教授は、『日本政府は科学的に水産物の安全性を十分に立証していたので、今回の判定は意外だ』と言いながらも、『主権国家の食品衛生に対する裁量権を幅広く認めたものとだと見られる』と分析した。ただし、『今回の判定で日本産水産物の輸入が引き続き禁止されることで、韓日関係の行き詰まりが長引く恐れがある』との見方を示した」

 

このパラグラフが、今回の「福島産水産物」の一件に関して、きわめて示唆的な内容である。つまり、日本政府は科学的に安全であることを十分に証明した。WTOもそれを認めている。しかし、輸入禁止は継続OKとして韓国へ旗を揚げる決定である。この決定の裏には、韓国で国を挙げての大反対論が出ることを恐れ、韓国の肩を持たざるを得なかったのでないか。米国産牛肉輸入でも前歴がある国である。

 

韓国は、科学的事実を冷静に受け入れない国だ。先入観で阻止する点で、感情過多症である。日韓併合時代についても同じである。日本の手によって、朝鮮が近代化に向けた政策で、教育・司法・経済・インフラが充実し発展を遂げた。だが、その事実を絶対に受け入れない点と、今回の問題は瓜二つである。日本は、こういう韓国と正常な外交ができるだろうか、政府自身が国民を説得することを放棄して逃げ回っているからだ。

 

韓国国内では、4大河川の堰撤去問題で揉めている。この騒ぎと「福島水産物」輸入禁止はよく似ているから取り上げた。

 

『朝鮮日報』(4月13日付け)は、「科学ではなく信念・理念優先が招いた韓国4大河川せき撤去」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の朴恩鎬(パク・ウンホ)論説委員である。

 

(2)「行き過ぎた信念は時に理性から遠ざかる。事実の歪曲や誇張で、大衆に恐怖を与えることに優れているのは、韓国の左翼的な一部環境市民団体、あるいは政治家も同じだ。事実よりもイデオロギー、科学よりも信念が優先されるケースは4大河川のせき撤去決定も例外ではなかった。3月26日に開催された公州せき近くの住民討論会では、『必要ならせきの水門を開いたり閉じたりすればよいだけの話だ。なぜせきそのものを撤去するのか』といった質問が相次いだという。洪水が発生したときに水門を開け、干ばつのときは水をためて農業用水として使用するのがせき本来の機能である」

 

4大河川とは、錦江(クムガン)・栄山江(ヨンサンガン)などを指す。李明博政権時代から「堰」をめぐって紛糾してきた。環境団体は堰により水の流れが阻止されるので撤去を主張している。しかし専門家の意見は違うのだ。1年にもならない短いモニタリング期間であるうえ、水質と生態が改善するという確実な証拠も確保していない状態で堰を解体することに賛成できないということだ。さらに、干ばつや洪水が頻発するなど、今後の気候変動まで考慮すると、慎重に接近する必要があると指摘しているという。

 

ところが、文大統領や環境運動家は、専門家の意見を聞かずに撤去を主張して譲らない。今後の異常気象を考えれば干ばつは最も恐ろしいことである。北朝鮮では、恒常的に干ばつに襲われている。同じ朝鮮半島のこと。韓国がいつそういう状況に直面するか分らないのだ。

 

(3) 「このため多くの専門家は直ちに堰を解体するよりも、水門を弾力的に運営しながら水質・生態・流量などに関連するデータを収集し、その後に決定をしても遅くはないと提言している。川と堰の周辺の重要なところにさまざまな測定センサーを設置し、10年間ほど堰の運用のビッグデータを集めれば、意思決定に大きく役立つということだ」

 

このパラグラフの指摘はすべて正しい。いつ起るか分らない天災の脅威も考えず、大統領たる者が何を言っているのか。文氏は本当に視野の狭い困った大統領である。