米国は、中国包囲網へ全力を挙げている。米議会は40年ぶりに中国危機委員会を設けて、中国に対して「敵性国家」扱いを始めた。旧ソ連への危機意識と全く同じである。考えて見れば、習近平氏の見栄による「世界覇権論」が、とうとうこういう事態まで発展してしまった。オバマ時代までの「温厚な米国」が本当の米国と思い込み、好き勝手な振る舞いを続けてきた。それが突然、米国が仁王立ちでストップをかけてきた。中国の計算違いが明白になっている。
この中国は目下、日本を抱き込む戦術を取り始めている。日中が共同して米国へ対抗しようという策だ。日本が、こんな子どもじみた案に乗るはずがない。尖閣諸島で見せた中国の牙は、日本を舐めた態度であり記憶から消せない衝撃であった。あれで、本質を見抜いた日本が、「ニーハオ」に騙されるはずがない。日本は、「ファイブ・アイズ」(米・英・豪・加・ニュージーランド)と提携して機密情報面で協力する体制である。中国とは敵対陣営である。この日本が、中国の甘言に乗るはずがない。中国の孤立は避けられない。
『日本経済新聞』(4月14日付け)は、「米半導体装置大手、中国企業との一部取引中止、米政府が警戒リスト
」と題する記事を掲載した。
(1)「半導体製造装置の世界最大手、米アプライドマテリアルズ(AMAT)が、発光ダイオード(LED)世界大手のアモイ三安光電など一部の中国企業や研究機関との取引を中止することが分かった。米国政府は安全保障などの懸念から取引に注意を要する中国企業のリストを発表しており、これに対応したとみられる。中国が進める産業高度化策に逆風になりそうだ」
「中国製造2025」の計画達成には痛手であろう。こういう事態は事前に分っていながら、なぜ米国を刺激するような「世界覇権論」を発表したのか。「謀は密なるを以て由とする」原則から言えば、完全に外れている。見栄か、習氏の泊を付けるだけだったのか。真相は不明である。
(2)「関係者によると、取引中止の対象はLED世界大手のアモイ三安光電や西安交通大学など、米のリストに挙がった少なくとも3つの中国企業や研究機関だ。13日までにAMATに関係する企業の従業員らに対し、LED製造装置など機器の納入や保守など全てのサービスを中止するよう指示があったという。米商務省は11日、中国の37の企業や研究機関を米国企業が取引で慎重に扱うべき『未確認』リストに登録したと発表した。ロイター通信によると同リストは安全保障や貿易の公正性確保などの観点から作成され、取引には米国政府の承認や報告が必要となる。禁輸措置ではないが、実質的に取引を規制する効果があるとの見方が出ていた。他の米企業にも中国企業との取引への慎重姿勢が広がる可能性がある」
ファーウェイ(華為技術)は、このリストに入っているだろうか。米国政府を訴えており、言いたい放題のコメントを出しているから、先ずリストアップされている可能性が強かろう。そうなると「5G」は、大きなダメージを受ける。
ファーウェイは、前記のように米国政府を訴えている。華為の敗訴はほぼ確実とされている。だが裁判に負ければ、米国の裁判所は政府の言いなりだと同社や中国政府は主張できる。そして華為は、第5世代(5G)移動通信インフラの構築で世界のリーダーとしての中国の立場を固める能力を持つ企業と、米国の国益は相いれないと論じることもできるだろう、という指摘がある。だが、米国政府は先手を打ってファーウェイを安保上で「危険企業」と指定すれば、ファーウェイの策略は空回りする。
(3)「AMATは半導体やパネルなどの製造装置の世界最大手で、同社の製造装置なしには高度な製品は作れないとされるほど業界への影響力が大きい。ハイテク産業の育成を急ぐ中国は、高度な技術を持つ海外企業の国内での事業展開を後押ししてきた。代表格とも言えるAMATが中国企業との取引を縮小するのは、産業政策に痛手となる。AMATにとって中国は売上高の2割超を占める最大市場だ。ゲイリー・ディッカーソン最高経営責任者(CEO)は3月、「米中関係の緊張は10年間続いた(世界の)経済成長を危険にさらす恐れがある」と指摘していた」
安全保障上の理由で、米企業が中国企業との取引禁止措置に出るのは致し方ないことだ。将来の禍根を考えると、今のうちに危険の芽を摘むことは相対的なコスト減になる。政府が別途, 米企業へ保証する必要があろう。
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