a0960_006643_m
   


今回の米中貿易戦争では、中国の左派も右派も習近平国家主席に相当な不満を持っているという。側近の民族派に踊らされ、米国と無謀な貿易戦争を始めた責任を追及されているものだ。こうした空気を反映し、インターネット上に現れる「習批判」を厳しく取り締まっている。

 

江蘇省蘇州市ラジオ・テレビ総台(国営地方放送局)の制作部門の副責任者・朱誠卓氏が4日、ツイッターを閲覧したとして、同局から免職と降格処分を受けた。警察当局からも取り調べを受けた。処分の通達は、同氏がツイッターのアカウントを開設し、「長い間、海外違法ウェブサイトの有害情報を閲覧してきたため、政治規律と政治規範に大きく違反した」とした。同放送局は、朱氏に対して、免職・降任および減給の処分を行った。朱氏は、「総局全メディア編集センター番組副総監」を務める高級幹部である。以上は、『大紀元』(4月11日付け)が報じた。

 

中国当局は、メディア編集部門の高級幹部すらツイッターによって海外の「有害情報を閲覧していた」だけで処分されるほど、国内は重苦しい雰囲気に取り囲まれているという。

 

『大紀元』(4月15日付け)は、「米中通商交渉、最終ラウンド迎えるも中国当局の政治的危機増大」と題する記事を掲載した。

 

(1)「米『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)中国語電子版(11日)に掲載した記事で、米中通商協議は『中国共産党政権に脅威をもたらしている』と指摘した。記事は、貿易合意に至っても、『中国共産党指導部は、党内の幹部や地方の企業、国民に中国側が得たメリットを理解させることはとても難しいと気づくだろう』との見方を示した。『中国国内のメディアは9カ月以上続いた米中貿易戦について、米政府の圧力の下で中国当局が不公平な条約を強いられている、と世論を誘導する』。中国政府系メディアの宣伝で、中国国民の多くは米中貿易戦について、約100年以上前、清王朝が外国列強との間で結んだ不公平条約を連想した」

 

(2)「『VOA』によると、米バックネル大学の朱志群教授は、『中国当局が通商協議で、より強い対抗姿勢を示さなければ、政治的に危険な状況に陥るだろう』と述べた。また記事は、中国共産党内の幹部は、党トップである習近平・党中央委員会総書記が、政治的手腕と交渉能力において、トランプ米大統領と肩を並べることを望んでいると指摘した。『一部の人は、貿易戦自体が習総書記とトランプ大統領の力比べだと考えている』。

 

中国社会では、自由競争とか公平な競争という理念は理解できないだろうと指摘している。こういう一般大衆に対して、米中貿易戦争の本質を説いても無駄なのだ。ただ、トランプと習の力比べという認識に止まっている。それだけに、習氏にとっては米国との妥協が政治生命に結びつく危険性があるのだ。前記の中国メディアの高級幹部が処分された背景には、こういう無知蒙昧の徒へ情報を伝播させない予防線である。

 


(3)「『
VOA』は、中国当局が、国有企業への補助金撤廃や強制技術移転を含む米政府の要求を飲み込むと、中国の製造業と輸出業に打撃を与えるとの見方を示した。構造改革を通じて、製造業の生産コストや出荷価格が急上昇すれば、中国の輸出も影響を受けるという。また、構造改革によって、中国当局が全面的にバックアップする国有企業は、今までの優遇措置は受けられなくなり、経営難に陥る可能性が大きく、大規模な人員削減が予想される。失業人口の急増は、中国共産党政権にとって『政治的試練』になる。

 

下線部分は、国有企業が生産補助金を政府から支給されている事実を指している。米国は、補助金の撤廃を要求しているが、それを100%実施したら、製造コストが上がるという指摘である。中国で,サムスンがスマホのシェアを失った理由は、中国メーカーが補助金で生産費をカバーしていた結果だ。中国の「産業強国論」は補助金漬けによるインチキなものである。

 

(4)「中国金融市場の本質を暴く著書『赤い資本主義』を執筆したフレーザー・ハウイー氏はVOAに対して、『米中両国が通商協議で合意しても、中国国内の状況は変わることはない』と警告した。『中国当局は、うわべでは米国に譲歩姿勢をみせているが、依然として『中国製造2025』の成功を目指している。中国当局は可能な限り、外国企業の技術を盗み、外国企業を抑えつけていくだろう』。中国共産党政権にとっては、米中関係や西側の自由経済市場の理念よりも、『一党独裁体制がはるかに重要である』と」

 

中国の経済改革派は、市場経済の本質を理解しているが、民族派=左翼本流=毛沢東主義者は、「可能な限り外国企業の技術を盗み、外国企業を抑えつけていく」ことが、違法と思っていない連中である。習近平氏もこの一派である。経済改革派と習氏との間に溝があるのは当然である。