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目を疑う記事が登場した。今後3年間、延べ1000万人の学生を農村へ派遣し、農作業を行なわせるという。農村の労働力不足(都市の就職難)を補い、農村の開発を担わせるというのだ。農村では、若者が少なくなった後を狙って暴力団が勢力を伸ばし始めている。中国得意の監視カメラでは、この暴力団をチェックできないようだ。

 

この若者1000万人の「下放」(この言葉は後で説明)は、中国が計画経済の歪みで大きなトラブルを抱えていることの証明である。習近平氏は、ことあるごとに「中国式社会主義」を喧伝している。その実態は、権力によって若者を移住させなければ動きが取れないことを証明した。政治制度としては失格である。

 

『大紀元』(4月16日付け)は、「上山下郷運動の再開か、 中国当局3年内に延べ1千万人若者を農村に」とだいする記事を掲載した。

 

最近では珍しい言葉の「上山下郷運動」(じょうさん・かきょう・うんどう)について説明したい。

 

これは、毛沢東の指導で文化大革命期(1966~1977年)に行なわれた運動である。農村で、青少年を強制的に労働(徴農=下放)させるもの。都市部の青年層が、地方の農村で肉体労働を通した思想改造によって、社会主義国家建設の意義を知る目的だ。習近平氏自身も、この下放生活を経験している。1969年から7年間、陝西省延安市で農作業をした。年配の日本人は、この下放という言葉をよく聞かされたものである。

 

習氏は、その苦しかった生活を現代の若者に経験させると言うのだ。共産党政治は、GDPで世界2位になったものの、未だに下放を実行せざるを得ない状況に追い込まれている。中国社会主義政策が、失敗している証明だ。下放は、基本的人権である職業選択の自由と、居住権選択の自由を侵害するもの。日本人は、中国に生まれなくて良かったことに、改めて感謝するほかない。

 

(1)「中国共産党傘下組織、共産主義青年団中央(以下、共青団中央)はこのほど、今後3年内、農村振興のため1000万人の学生を農村入りさせる計画を発表した。中国インターネット上では、文化大革命時の『上山下郷運動』が再開したと批判の声が高まった。中国メディア『農民網』(4月9日付)によると、共青団中央が3月22日公表した通達で、2022年までに短期大学や専門学校の学生、延べ1000万人が『志願で農村部に入る』とし、農村の活性化を図ると強調した」

 

形式的には志願で、延べ1000万人(3年間)のボランティア青年が、農村へ入って農作業をするという。これだけ、農村の労働力が減っていることの証明だ。一方では、都市で1000万人の雇用が失われている証拠だ。米中貿易戦争の影響もあろうが、中国経済の減速が背景にある。こうした人為的な労働力再配置でなく、市場機能という手段が生かせないのは、中国共産主義の失敗である。

 


(2)「李元華・元首都師範大学副教授は『大紀元』に対して、中国当局の新たな農村入り政策の狙いが2つあるとの認識を示した。『第一は、都市部の若者の就職難を解決するためだ。第二は、農村部の労働力不足を解決し、農業生産に必要な技術人材が補うためだ』」

 

本来ならば、都市の就職難と農村の労働力不足を同時に解決するのが労働市場の機能である。中国の労働市場は、都市部と農村部が質的に異なり、代替性が効かないという断絶性に襲われている。この点にこそ、中国経済の跛行的発展の問題が隠されている。

 

(3)「香港人ジャーナリストの蔡詠梅氏は、中国共産党が農村部に対する支配を強化する狙いもあると指摘した。『中国農村部の衰退につれ、エリートが都市部に流れ込んでいるため、現在農村部に残された人口のほとんどは年配者、幼い子どもと障害者だけだ。中国共産党は今、党支配の代わりに、暴力団が勢力を拡大しているという現状に警戒感を強めた』。昨年1月、中国共産党中央委員会と国務院は、今後3年間の『掃黒除悪特別闘争』という暴力団一掃運動を展開すると発表した」

 

始皇帝の時代から、中国には暴力団が跋扈して社会的騒乱をつくり出してきた。その暴力団が現在、地方に根を張り始めている。過去の例から言えば、安心できない動きであろう。こう見てくると、中国の経済も社会も、古色蒼然とした存在であることが分る。およそ、社会主義とは似つかわしくない、古代専制主義の様相を呈しているようだ。