テイカカズラ
   

中国は、世界一の自動車市場に成長した。ユーザーの環境意識と言えば、まだまだ世界一とは言いがたい。自動車は、富裕度を示すシンボルだ。中国政府は、電気自動車(EV)生産で世界一を目指すが、現実のギャップは余りにも大きく、EV普及を阻んでいる。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月17日付け)は、「中国EV生産義務づけ、メーカーは巨額損失も覚悟」と題する記事を掲載した。

 

中国政府から電気自動車(EV)生産を義務づけられている自動車メーカーは、政府が定めた目標を達成するかどうかにかかわらず、巨額の損失を被る可能性に直面している。16日開幕した上海国際自動車ショーでは、各社がEV生産義務づけへの対応を迫られている現状が浮き彫りとなった。舞台の主役を飾ったのは、ガソリン車ではなくEVだ。米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクス・ワーゲン(VW)などの海外メーカーは、新型EVの大量投入やEV開発への巨額投資を表明した。

 

(1)「政府の生産目標に従えば、メーカー各社は2019〜20年に中国での生産台数の約34%をEVに振り向ける必要がある。2021年以降はその比率が大幅に引き上げられる見通しだ。目標未達のメーカーには罰金が科される。だが、その代替の選択肢も同じように高くつくとアナリストは指摘するEV技術が成熟し、メーカーが規模を確立するまで、大衆市場向けのEV生産は今後数年にわたり、収益化が見込めない公算が大きいためだ

 

EV技術はまだ成熟していない。中国政府から,各社別のEV生産目標を課されている。詳細は、後掲の通りだ。今後数年は、EVで利益が出る見通しもなく、中国市場で悪戦苦闘が予想される。

 

(2)「自動車業界はすでに、販売急減やガソリン車の過剰生産能力に直面しており、EV生産義務づけはさらなる重石となる。中国の自動車販売は過去9カ月にわたりマイナスが続いており、1~3月期(第1四半期)は前年同期比11.3%減少した。米フォード・モーターは昨年、中国事業が15億ドル(約1700億円)の赤字となるなど、一部のメーカーはすでに損失が生じている」

 

中国の自動車市場全体の販売台数が、前年同月比でマイナス状態である。ここへ,EVの販売目標を提示されて各社とも四苦八苦している。

 

(3)「サンフォード・C・バーンスタインのシニアアナリスト、ロビン・ズー氏は、政策主導のEV促進は、向こう数年の業界の収益性に関する大きな懸念材料だと指摘する。EV技術はまだ、大衆車並みに価格を引き下げられるほど安くない。コンサルティング大手マッキンゼーによると、1台当たりのEV生産コストは通常、ガソリン車を約1万2000ドル上回っている。EVの生産コストがガソリン車並みの水準まで下がるには、あと約5年はかかるという

 

1台当たりのEV生産コストは、ガソリン車を1万2000ドルも上回っているという。この割高生産コスト分の解消には約5年かかるという。この間が、EV赤字の累積となる。

 


(4)「中国では政府による寛大な補助金がメーカーの生産コストを押し下げてきたため、中国勢は海外メーカーに先行してEVを投入することができた。だが政府は今年、補助金を75%削減。来年には完全に廃止する。EVは、2019~20年に各社別に次の生産台数を生産義務づけられている。

 

GM   26万7000台

日産   11万5000台

トヨタ  10万8000台

ホンダ  10万5000台

現代自  10万台

フォード  5万5000台」 

 

これだけのEVを販売できるか。未達の場合はペナルティーがつく。

 

(5)「中国の自動車メーカーは、異なる悩みを抱えている。エントリーレベルのEVを過剰に生産しており、政府の補助金が廃止された後に採算を確保する方策を見いださなければならない。補助金を加味しても、EVの実需はなお低迷している。豪マッコーリー・グループのアジア自動車分析部門トップ、ジャネット・ルイス氏は、自動車メーカーは、売れ残りを活用するため、自ら設立したライドシェア会社にEVの多くを販売していると指摘。中国のEV生産は主に政治的なものであって、商業的なものではないという

 

中国のEVは政治的な意味を持っている。「世界一のEV」という実績が欲しいことと、「中国製造2025」でEVは、重要産業として掲げられている。担当部局は、メンツがかかっているに違いない。生産目標台数未達の場合、目標達成企業からクレジットを買わざるを得ない羽目になる。なかなか厳しい販売戦略が求められているのだ。EV販売が軌道に乗るまで、数年かかるとみられている理由はここにある。