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中国政府は3月22日、5月1日の労働節(メーデー)から4日間を連休にすると発表した。消費の喚起をめざすのが目的という。

 

国務院の発表によると、今年は例年祝日となる労働節だけでなく、2、3両日も休みにする。その代わり、連休前後の日曜日は通常の勤務日とするため、実質的に新たな休日は生まれないが、5月4日は土曜日のため、多くの人にとっては4連休ができることになる。連休とすることで旅行需要が膨らみ、外食や航空券購入、宿泊をする消費者が増える可能性があると関連業界は歓迎している。

 

だが、この5月初めの連休には政治的な狙いがあるという指摘が出てきた。

 

『フィナンシャル・タイムズ』(4月23日付け)は、「中国、5月初旬を連休に、政治的思惑で」と題する記事を掲載した。

 

国民の休日を定める場合、通常は混乱を避けるために十分に余裕をもって発表するものだ。そのため中国政府が先日、突然、51日の労働節(メーデー)を含めて4日間を連休にすると発表すると、学校や企業は対応に慌てふためいた。

 

(1)「54日は中国の政治・社会の近代化を一気に推し進めた反帝国主義、反日運動『五・四運動』からちょうど100年にあたる。唐突な休日の変更は、この機に乗じて厄介な集会などが行われないように政府が先手を打ったものだ。しかもその1カ月先の64日には、政府がもっと神経質になっている天安門事件から30年を迎える。学生や大衆の抗議活動を武力で弾圧し、多くの死傷者が出た日だ」

 

5月4日は、反帝国主義、反日運動『五・四運動』からちょうど100年にあたる。

6月4日は、天安門事件から満30年を迎える。

 

前記の2つの記念日は、中国共産党にとって「政治的に敏感な日」になった。5月4日は、男女同権や芸術家の自由な表現、民主化を訴えたが、現在の中国ではこれを弾圧している。だからこの日を忘れて欲しいのが本音という。6月4日は3000人以上の学生や若者が犠牲になった。政府にとって、ぶり返されて騒動になったら抗弁のしようがない。だから、今年の5~6月は厳戒体制を敷いている。

 


(2)「2つの節目の日を前に、音楽配信サイトからは歌詞のある曲が消え、学者に対する締め付けが厳しくなった。メーデーから休みを3日間延ばして土曜日までにすれば、多くの市民が北京郊外で休みを過ごすだろうから、不穏な動きを抑えられるのではないかと期待しているのだ。香港のベテラン記者で編集者の廖建明氏は、『この2つの日は今日でも重要な意味を持っている』と言う。『中国人は大きなイベントの発生日を大切にするし、特に五・四運動の100年の節目は大事な日だ』と指摘する」

 

下線を引いたところがミソである。国民に休日を与え遊ばせておけば、デモ行進をしないだろうと策を練ったもの。だが、中国人はこういう記念日を忘れない特性がある。何かしでかすかも知れない。

 

(3)「五・四運動は1919年、国際舞台で列強とわたり合える強い中国を求めて学生がデモ行進したことをきっかけに、全国に広がった。中国共産党は自身を五・四運動の正当な継承者とみなしている。習近平国家主席は4月19日、五・四運動のレガシーを自分の重要な政治スローガンに結びつけようとした。党幹部に五・四運動について研究し「若者に対し、国の活性化に絶えず貢献する意欲を持たせるよう」指示した。だが、党が実際に危惧しているのは、五・四運動で同様に掲げられた男女同権や芸術家の自由な表現、民主化の方だ

 

中国共産党は、民衆の正統な怒りの前に手を出せないはずだ。専制政治の弱点はここにある。中国の経済力が落ちてきたとき、中国共産党は民衆の怒りに対して、きわめて脆弱な立場に立たされる。現状ですら、これほど恐れているのだ。

 

(4)「天安門広場の抗議デモについては、党は事件を思い出させるようないかなる行動や議論も禁じている。『当局が注意する出来事の発生日が重要なのは、集会などで過去に関する議論に、現状への批判が織り込まれやすいからだ」と米カリフォルニア大学アーバイン校の中国史の専門家ジェフリー・ワッサーストローム教授は話す。『今日の中国が抱える大きな問題は、当局の統制がすべて十分に利いているようにみえるのに、当局が相変わらず(いかなる不満の芽も潰そうと)神経をとがらせていることだ』と指摘する』

 

専制政治は強いようでも、崩れる時はあっけないものだ。旧ソ連崩壊がそれを証明した。この5月の連休に見せる中国共産党の怯えは、自らが正統な政権でなく、武力で奪取した政権の弱味を知っているからだ。