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けさ発行しました。よろしくお願い申し上げます。

 

「一帯一路」事業規模を圧縮

世界の工場の座を失う羽目に

米の人口は中国の減少と逆へ

習氏「第二のゴルバチョフ」?

 

 

中国政府主催、第二回の「一帯一路」国際フォーラムが4月28日に終わりました。これまでの略奪的な融資姿勢を180度改めて、国際標準に従う旨を明らかにしました。開会に当たり、習国家主席は次のような挨拶をしました。

 

1)環境保護に裏打ちされたオープンかつグリーンでクリーンという概念を貫く

2)汚職と戦う

3)質が高く持続可能でリスク耐性があり、価格も妥当な開かれたインフラ投資

 

これら3項目は、通常の融資に当って実行するごく普通の前提でしょう。中国は、こういう常識論を改めて打ち出さざるを得ないところに追い込まれたのです。過去の「一帯一路」融資は約4400億ドルと初めて発表しました。閉会式では、今年の融資額を640億ドルの事業規模とします。

 

「一帯一路」事業規模を圧縮

この640億ドルは、従来の融資規模に比べてかなり圧縮されたものでしょう。ほぼ半額に圧縮されたとみられます。理由は2つ考えられます。

 

第1は、中国の経常収支が今年から赤字転落です。これまで世界一の貿易黒字を出してきましたが、貿易黒字の減少と所得収支とサービス収支の赤字が拡大している結果です。海外投融資の資金は経常黒字で賄われます。それが、赤字に転じればもはや投融資の余裕はありません。

 

第2は、日米豪の三カ国が、各国の政府系金融機関が連携し、エネルギーや通信、資源などの開発案件を協調融資や保証業務などで後押しをします。インド太平洋地域における日米豪の存在感を高める目的です。政府系金融機関が連携して融資するとなれば、中国の「暴利融資」が不可能になります。

 


アジア開発銀行(ADB)の試算では、アジアのインフラ需要は2016~30年に約26兆ドル(約2900兆円)にものぼると見られます。中国は、こうした資金需要に対して暴利を貪り、借金漬けにしてきました。それが、日米豪の政府金機関が中心になって、低利の安定融資に乗り出せば、中国は対抗できません。温和しく引き下がったのです。

 

私は、今回の「一帯一路」に関する融資姿勢の変化が、これから始まる中国衰退の重要な第一歩になると見ています。中国の経常赤字国への転落は、米国と意味が異なります。米国は世界一の経常赤字国ですが、世界の基軸通貨国です。米国は、世界一のGDPと世界一の軍事力に裏打ちされた通貨のドルによって、世界経済を束ねています。米ドルが、紙切れにならないという信認に基づいて通用しています。

 

中国の人民元には、米ドルのような信認はありません。国内市場は保護主義で外国企業と差別しています。政治体制は独裁主義で国民に選挙権も与えていません。人民元相場は、政府の管理による「管理変動相場制」で、先進国共通の「自由変動相場制」でありません。資本移動の規制をしています。こういう中国経済が、経常赤字国に転落した場合、どういう現象が起るかです。

 

人民元相場は、安値傾向に振れるでしょう。それが極端な形になれば、「人民元投機」に発展します。資金の海外流出が始り、外貨準備高3兆ドル強は一気に減少して、2兆5000億ドル見当になるでしょう。こういう最悪ケースがいよいよ想定される状況になったのです。いまでも「中国経済強し」と見ている向きがあるとすれば、10年は遅れているでしょう。

 

中国の不動産バブル崩壊について、詳細な言及を控えました。だが、GDPの約300%にも達する債務を抱えています。家計は住宅ローンの圧迫で貯蓄率が低下しています。銀行には預金不足のために「信用創造能力」低下で大きな痛手を受けています。銀行は、貸したくても貸出先の信用悪化と前記の預金不足で動きが取れません。中国経済は、かつての日本が平成バブルに直撃された以上の苦境に立っているのです。日本の辿った苦悩の道を思い出せば、中国経済に楽観論は成り立ちません。

 

世界の工場の座を失う羽目に

だが、今回の米中貿易戦争で中国が、技術窃取を認めざるを得ないという屈辱的な場面に追い込まれました。中国が、これを認めた裏にはいずれ米国経済を追い抜き自信があるからだという在日中国人エコにミストがいます。これは、多分に願望であり確たる証拠あっての話ではありません。(つづく)