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日本の旧国鉄は、累積債務37兆円、金利だけで年間1兆円という状況で解体、現在のJRへと分割された。中国の高速鉄道は、旧国鉄をはるかに上回る88兆円(昨年9月末)の債務総額である。しかも、景気刺激策としてなお建設投資が続けられている。向う見ずというか、お馬鹿さんというか常識外れの振る舞いだ。

 

『サーチナ』(4月30日付け)は、「莫大な債務を抱える中国高速鉄道は灰色のサイなのか」と題する記事を掲載した。

 

中国メディア『今日頭条』はこのほど、中国高速鉄道の債務総額は5兆2800億元(約87兆7400億円)に達したことを紹介し、積極的な投資がもたらした莫大な債務について、一部で「中国経済の発展における『灰色のサイ』だ」という指摘があると伝える記事を掲載した。「灰色のサイ(グレー・リノ)」とは、「発生確率が高く、なおかつ深刻な影響をもたらす可能性のある潜在リスク」を指す言葉だ。

 


(1)「記事は、中国の国営鉄道会社であり、高速鉄道の運営を行う中国鉄路総公司の財務報告を引用し、同社の2010年末における債務総額は1兆8900億元だったが、18年9月末には5兆2800億元まで急激に拡大していることを紹介。金利の支払いだけでも莫大であるため、債務負担があまりにも重すぎてリスクが大きすぎるという指摘があると紹介した」

 

日本的な経営感覚であれば、2010年末~18年9月末の約8年間で2.8倍も債務総額を増やすことに危機感を覚えないはずがない。これは、新線建設費の債務だけでなく、ランニングコストまで含んでいるに違いない。高速鉄道で黒字路線は北京―上海線だけと言われている。他は推して知るべしである。

 

(2)「中国が高速鉄道事業で抱える莫大な債務について、「灰色のサイ」であるとの指摘が聞かれるようになったと紹介する一方、鉄道業界の専門家からは「債務比率は特別高いわけではなく、合理的に制御できる範疇にある」といった反論が見られると紹介。特に近年は債務の増加ペースが鈍化していること、乗車券の値上げ余地は大きく、これから投資を回収することができることなどを要因として挙げ、中国高速鉄道が抱える債務が深刻な危機をもたらすことはないと主張した」

 

中国は、人口密度の低い国家である。日本の新幹線のように沿線の人口密度が高い国家とは、経営環境が異なる。しかも、今後の急速な人口高齢化を考えれば、乗客数は減って行く。経営危機が来ないという保証はゼロだ。ともかく、無鉄砲で無計画。先々、経営問題が起らないはずがない。

 

(3)「専門家からは別のリスクの存在が指摘されていると伝え、一つは地方政府の債務増加というリスクだと紹介。高速鉄道の建設には中央政府と地方政府、そして国有企業による資金が投下されており、中国では高速鉄道がもたらす経済利益を見込んで、積極的な投資を行う地方政府が見られると紹介。地方政府にとって高速鉄道の建設がもたらす金銭的負担は決して軽くないと強調した。また、中国の鉄道関連企業のなかには不動産業などリスクが高い業種に参入し、積極的に財テクを行っている企業もあると紹介し、こうした動きは中国の鉄道産業の活性化や競争力強化においてはマイナスであると伝えた」

 

高速鉄道の運営を行う中国鉄路総公司にだけ債務が集められているとは思えない。他の国有企業や中央政府・地方政府に債務が隠されている可能性が強い。となると、実際の債務総額がどれだけあるか見当もつかなくなる。まさに、国家破産になりかねない。これからの少子高齢化の進行を考えると、財政での穴埋めは容易でない。