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中国が、国内強硬派の顔を立てて6月1日から関税を引き上げる。600億ドル分で最大25%だ。片や米国は、2000億ドル25%である。600億ドルvs2000億ドルである。勝敗は初めから分ったようなものだ。

 

『ロイター』(5月14日付け)は、「中国が対米報復関税、600億ドル分に最大25% 61日から」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国財政省によると、米国から輸入する5140品目を対象とし、6月1日から適用する。中国は昨年9月、米国が発動した追加関税への報復措置として、600億ドル分の米国製品に対し5%および10%の関税を上乗せ。今回はこの税率を525%とする。液化天然ガスや大豆、落花生油、石油化学製品、冷凍野菜、化粧品など2493品目に対する追加関税は25%に、その他の1078品目は20%とする。ただ、原油や大型航空機などは、今回の追加関税の対象には含まれていない」

 

今回の600億ドルの関税引上目的は、国内強硬派への「挨拶」程度の意味しかない。米国が2000億ドル25%関税をかけてきたので、「メンツ」であろう。これで、米中は対等な立場という「屁理屈」を付けて、交渉を継続する。「原油や大型航空機などは、今回の追加関税の対象には含まれていない」。中国にとって、政治的にも代替先がないからだ。

 

(2)「中国の発表に先立ち、トランプ米大統領はこの日、貿易戦争を激化させないよう中国をけん制。ツイッターへの投稿で『中国は報復すべきでない。さもなくば、状況は悪化するだけだ!』と述べた。さらに、習近平・中国国家主席らに、通商協議で合意しなければ『中国に悪影響が及ぶ』ことを明確に伝えたとし、『素晴らしい合意に近付いていたにもかかわらず、中国は考えを翻した!』と批判した。米政府は前週、中国からの2000億ドル相当の輸入品に対する関税を10%から25%に引き上げ。5700品目以上が対象となった。トランプ大統領は新たに3250億ドル相当の中国製品に追加関税を発動する手続きを始めたことも明らかにしている」

 

米中貿易戦争は、最終局面に向かっている。米国が新たに、3250億ドル相当の中国製品に追加関税を打ち出すことだ。これまでの例では、米国の関税引上分の7割は、中国企業の負担になっている。中国は、関税分を7割値引きしていることだ。さらに、これまで年間1650億ドルは、中国からの輸出でなく他国へ振り替えられている。

 

中国が、メンツとか国権に関わるとか理屈を並べ、協議を延ばしている間に、サプライチェーンは中国を離れている。この重要な点を見落としていると、中国は決定的な敗者になろう。ビジネスで考えれば分ることだが、最上の得意先とトラブルになれば、得意先が主導権をもつもの。米中に喩えれば、米国が圧倒的に有利な立場だ。それを忘れて、「対等」とか「メンツ」とか騒ぎ立てる方が負けなのだ。

 

仮に中国が、高度の技術を持っているとすれば、売り方の中国の立場は強くなる。中国で製造するものは、ほとんど「汎用品」である。簡単に仕入れ先を変えられるものばかりだ。こういう弱点を抱えていることに気付き、謙虚に振る舞うべきである。

 


『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月11日付け)は、「米中交渉物別れ、トランプ氏『協議は継続へ』」と題する記事を掲載した。

 

(3)「トランプ氏は10日、一連のツイートで「関税はわが国を弱くするのではなく、より強くする。見ていてくれ!」とし、関税は米経済にとって良いことだと主張。米国は交渉を続けるが、「急ぐ必要は全くない」と述べた。トランプ氏はさらに、農家に対する一段の支援策についても言及。関税引き上げによって得た収入で国内農家から農産物を買い取り、人道支援の形で海外に送る可能性を示唆した」

 

トランプ氏は、関税を手段にして相手国の不公正取引を是正させる方策を編みだした。これは現在、相手国を動かすテコになることが認知されるようになった。中国が不公正貿易のガンであるだけに、EUでも黙認している。中国へ同情する国は、世界に一つもないことを知るべきだ。

 

(4)「トランプ氏の戦略は、中国が交渉で約束したことを反故にしたことへの米国側の不満を反映している。またトランプ氏が、貿易相手国および米議会の両方に対して、関税が有効な手段だと考えていることも明確に示している。民主党のチャック・シューマー上院院内総務(ニューヨーク州)は、トランプ氏の対中強硬姿勢を支持する立場を示しているが、世界の貿易をゆがめるとみる中国の経済政策を根本的に変えるような合意に達しなければ、即座に支持を撤回する可能性があると述べている」

 

米国の民主党議員も、トランプ氏の対中強硬姿勢を支持している。下線を引いた部分は、トランプ氏を支持する理由だ。