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文在寅大統領は、危機管理能力があるだろうかと疑問に思わせる発言が相次いでいる。その最たる例が経済動向である。国策研究機関の韓国開発研究院(KDI)が、「経済動向5月号」で景気は「不振」との判断を下した。だが、文大統領にはそういう深刻な事態に陥っているという認識がないどころか、景気は順調と「宣っている」のだ。

 

戦争に喩えれば、前線部隊から負け戦という連絡が入っても、総司令官が勝ち戦を宣言している構図である。戦時中の日本と同じだ。大本営は負け戦を国民には「勝ち戦」と報道して騙していた。韓国大統領は、これと同じ手を使っているのだ。

 

『聯合ニュース』(5月14日付け)は、「韓国経済、総体的に成功へ向かっている=文大統領」と題する記事を掲載した。

 

(1)「韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、ソウル市内で行われた『中小企業人大会』で演説し、『政府の経済政策の成果はすぐには体感できないかもしれない』と前置きしながらも、総体的に韓国経済は成功へ向かっているとの認識を示した。同大会は毎年開かれているが、文大統領が就任後、出席したのは初めて。中小企業の成長を後押しし、経済の活力につなげたい狙いがあるとみられる。

 

大統領就任後、2年経っても成果が実感できない。そのような経済政策はあるだろうか。経済政策は、発動してから実効が上がるまで時間がかかる。それは、「タイム・ラグ」と呼ばれている。だが、2年経っても効果が出ず、逆にこの1~3月期は前期比マイナス0.3%である。プラス効果でなくマイナス効果である。下線を引いた部分は、明らかに「口から出任せ」を言っているに過ぎない。こういう大統領を選んだ罰が、国民の頭上に降りかかっている形だ。「ロウソク・デモ」という情緒的な大統領弾劾運動が招いた結果である。

 

中小企業は、最低賃金の大幅引上げの被害を最も受けている。労働生産性が、最賃引き上幅ほど上昇するはずもないから、やむなく従業員を解雇せざるを得なくさせた。この苦しい状況で、文大統領の「能天気」発言を聞いて、やり場のない怒りを覚えたであろう。こうして、文政権支持率は下がっていくのだ。

 

(2)「文大統領は、『経済政策による根本的な変化が定着するまでには時間がかかる』として、『統計と現場の温度差があると思う』と述べた。昨年人口が5000万人以上で国民1人当たりの所得が3万ドル(約330万円)を達成した7番目の国になったことに触れ、『(政権発足から)3年目の今年は必ず現場で体感できる成果を出す』と強調した」

 

文氏は、「経済政策による根本的な変化が定着するまでには時間がかかる」と言っている。だが、最低賃金の大幅引上げは生産性上昇分を相当に上回っている以上、時間が経てば経つほど失業者が増えていく悪循環に陥るであろう。企業は、低収益で設備投資ができず、賃金コストの上昇が企業を倒産させる。この分りきった事情が、文氏には飲み込めないのだろう。

 

(3)「また、企業活動を積極的に支援するとして、『最低賃金(の引き上げ)やフレックスタイム制、週52時間勤務制など社会的なコンセンサスが必要な問題について企業人の声に耳を傾ける』と力説。『中小企業は韓国経済の腰であり、中小企業と大企業が共生する経済エコシステム(生態系)がつくられれば韓国経済の活力も高まる』として、『中小企業の成長は政府の変わらない目標』と述べた」

 

下線を引いた部分は、「社会的なコンセンサス形成」を意味するならば、少なくも最低賃金の大幅引上げを撤回することである。それが、社会的なコンセンサスを形成するという意味のはずだ。本当に、その決断ができるのか疑わしい。ただの言い逃れに過ぎない印象だ。

 

中小企業の足腰を強くするには、大企業の中小企業製品買い叩きを防ぎ、大企業の法外な賃上げを緩やかにすべく、労働市場の自由化を行なうことだ。年功序列と終身雇用が、労働市場を囲い込んで流動化を阻止している理由だ。

 

米国の労働市場流動化が、労働者の賃上げを実現させる背景である。転職を自由にさせるには、労働市場を流動化させることだ。こういう議論をすると必ず、労働者の使い捨てという議論になる。日本を見れば、今や転職が当たり前の時代である。給与もそれに合わせたカーブになる。昔のような45度線の賃金曲線はあり得ない。台形になっていくであろう。